だいだらぼっちが冬休みに入ると、冬の山賊キャンプが始まりました。
私も本部スタッフとして、キャンプに参加しました。
冬のキャンプは夏のキャンプと比べ、比較的のんびりとした時間が多くあります。そのため、それぞれのやりたいことに向かう時間が中心となっていました。登山やものづくり、お菓子作りやピザ作り、冬ならではの餅つきや雪合戦など、バリエーションも豊かです。
時間に余裕があると、ものづくりもただ作るだけでなく、とことんこだわって、何度も試行錯誤する場面に多く出会いました。ストーブの前でコツコツとスプーンをほったり、弓矢の矢を何度も作り直してよく飛ぶ方法を見つけ出したり。目の前の材に夢中で、自分のものづくりの世界に入り込んでいる、そんないい緊張感が漂ったりもしました。
そんな中、自分の作りたいものは作りきって何をしようかと悩んでいるこどもがいました。一緒に木工をしていた私は、竹を持っていたその子を見て、正月も近かったからか、「門松作ってみたらどうかな」と口に出していました。
「やってみようかな」と、とりあえず斜めに切った竹を3つ並べてみると、思ったよりも門松。想像していた形に近づいた竹を見て、2人して満足気になっていました。

しかし、タコ糸で3本の竹をまとめようとすると、一気に材木感が出てしまいました。本物の門松も、その写真もないので、何が違っているのか分かりません。それでも頭をひねりながら物足りない理由を考えました。
考えられた原因は2つ。
竹をまとめたタコ糸が細くて白一色だからではないかということ、
お正月飾りがなくシンプルだからということ。
そこで早速、タコ糸を一本赤く塗って、二色おりまぜた紐を作りました。すると一気に色が映えてそれっぽい雰囲気になりました。

そしてお正月飾りといえばしめ縄です。今まで、だいだらぼっちのこどもたちに教わりながら、何度かわら細工を練習してきたので、自分の手と頭で学んできたことを活かして一緒にしめ縄を作ることにしました。わらを出して広げていると、それを見ていた他のこどもたちや相談員さんたちも集まってきて、突然のしめ縄教室が始まりました。今まで学ぶ立場だった自分が教えるということに少し不安はありましたが、何メートルも縄をなって練習してきたことで、手を動かす難しさやコツ、そのおもしろさがスルッと言葉に出てきたように思えました。
また、村の方と出会ったときに、泰阜村のお正月の話を聞いたり、お正月飾りについて教えてもらったりしたことがありました。泰阜村では年越しではなく年取りということ、年末におせちを食べること、「おやす」という新米を入れるわら細工のお正月飾りがあること。
そんな話もしながら、ただしめ縄を作るだけでなく、使っているわらが今年のだいだらぼっちで収穫したものだということも含め、裏側を知るからこそのものづくりの奥深さも伝えられたのではないかと感じます。

しめ縄が完成し、だんだんと門松に近づいていく竹を見て、一緒に作っていた子も、こだわり抜く楽しさにのめり込んでいるのを感じました。
すると、「謹賀新年」の文字を書きたいと言い始めたので、半紙と習字セットを持ち出してみました。書いてみるもなにかしっくり来ない。ここまで手で作りあげてきたからこそ、文字を書く板も自分で作りたいとのことでした。
そこから、「謹賀新年」の文字がにじまない材探しが始まりました。桜の木や栗の木、ヒノキなど、色んな板を切り出しては書くの繰り返しでした。そしてようやく見つけたのが、門松で使った竹。なんと竹は文字が少しも滲まない最適な材でした。「灯台もと暗しだった〜」と笑いながら嬉しそうに文字を書いていきます。

さらに3本の竹がぐらつくのも気になり、長老のもーりぃにアドバイスを貰って、わらをまきつけ、習得したわらの縄を使って縛りました。出来上がった門松に見惚れていた自分でしたが、その隣でその子はまだ満足していない顔で、なぜ竹なのに「門松」と松が入っているのだろうと質問してきました。確かに自分も気にかけたことがなく、調べてみると門松には松が飾られているとのことでした。
それを伝えると、やっぱりキラキラした目で「松を探しに行こう!」と言い出しました。しかし、だいだらぼっちの敷地内には一緒に何周回っても松が生えておらず、葉っぱも一つも落ちていません。諦めるかと悩んでいると、尖った葉を見つけて、それを代わりに飾りはじめました。一緒にこだわっていた私を通り越して、その子はどんどんと前に突き進んでいたようでした。

完成した門松がいつも彼の隣にあるのを見て、私はとても嬉しくなりました。話し合い中も最後の振り返りの時も、大事そうに置いてあります。初めはとりあえず作り始めた門松が、2日間もかけて何度も試行錯誤し、悩んで、こだわり抜いてきたからこそ、その大変さが宝物に変わったんだろうと感じます。

今までだいだらぼっちのこどもたちと一緒に、ものづくりや村のこと、暮らし方など、細かなことから広い範囲まで学んできました。ただ自分が楽しそうで飛びついてきたもの、はまって聞いて回ったこと、自分の手を使って何度もこだわり抜いた経験が、次の人へバトンタッチできると教えられた出来事だったと感じます。自分の学びの枠にはまらず、体験や経験を活かして一緒にできる可能性を広げていく、学びの追体験のでような時間でした。
門松づくりを通して、自分の「できること」の幅が広がったことで、その場の「できること」も大きく広がることを実感しました。手で作るという技術的な面においても、村のこと・暮らしのことなどの知識的な面においても、それを一緒に探求する場作りという面においても、自分が今まで積み上げてきた「できたこと」を丁寧に深めていきたいと感じました。

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2024年度一年間長期インターン生。長崎県育ち長野県出身。信州大学4年生(休学中)。教育学部でよりよい学び場を模索する中、暮らしや手間の中にある「考える」おもしろさと地域を根っこにした教育に関心を持ち、グリーンウッドのインターン生として参加。