だいだらぼっちの卒業生にインタビュー (2001-2002年度参加) あられ

子育ても畑作業もお料理もそうなんだけど、全部木を彫るのと一緒でね、自分が相手をどうしたいか、ではなくて、「そのもの」がどうしたいのか、どうなりたいのか、なんだよね。

だいだらぼっちの卒業生にインタビューするこの企画、今回はだいだらぼっち16期生のあられです。

あられはだいだらぼっち十六年目から十七年目(2001~2002年度)に、中学2・3年生の二年間をだいだらぼっちで過ごしました。今でこそご飯を作ったり、おみそを作ったりと暮らしの仕事を厭わずやるあられですが、当時はご飯づくりも風呂焚きもほとんどしなかったという記憶と、「みのる」という名のカメをかわいがっていたこと、だいちとのりちゃんの次男健志君をめっちゃかわいがっていたことが頭に浮かびます。泰阜に移住してもう10年以上経ったあられ。改めてのインタビューということで、みけもちょっとドキドキです。それではインタビュースタート!


  
ー改めてインタビューということで、ちょっと変な感じですけど、あられちゃん、今日はよろしくお願いします。
早速ですが自己紹介をお願いします!

 

2001・2002年に中学2・3年の二年間を過ごしたあられです。大学卒業後、2013・2014年にも大人として育プロみたいな感じでだいだらぼっちにいました。今はその時に新卒でグリーンウッドに入ってきたバズと恋に落ち、結婚して家庭を持ち、7歳(長女)5歳(長男)3歳(次女)1歳(次男)の四人のこどもたちと毎日楽しく暮らしています!

 

ーまさしく縁は異なもの味なもの。まさかあられがバズくんと結婚するとは(笑)。こどもたちもみんな元気で楽しそうですね。もうちょっとあられが日々どんな風に過ごしているのか、どんなことを想っているのか、家族の事や趣味のことなど、色々含めて教えてください。

 

家が風呂もストーブも薪なんで、薪を用意したり(薪割りもするよ)、畑で野菜も育ててるし、ヤギとニワトリを飼っているのでその世話をしたり、家の片付けをしたりしつつ、木を彫ってこどもたちのおもちゃを作ったり、毛糸を紡いでニットを編んだり、服を作ったり家具を作ったり…。イノシシやシカをもらうこともあって、もらったら捌(さば)いたり、調理したり燻製にしたり、保存したり油をとったり…。日々の暮らしの仕事は大変さもあるけど、それも含めて面白いことがたくさんあるから本当に毎日楽しんでるよ!

 

ー毎日楽しく暮らしているなんて、何よりです!あられが今の生活に落ち着くまでにどんなことをしてきたのか、お仕事なども含めてあられが体験してきたことなど、きっといろいろあると思うので教えてください。

 

だいだらぼっちを出て高校へ行って(この時は優等生!)、成績は良かったんだけど大学は落ちて。浪人しているときに波照間島に家出して…

 

ー家出!? さらっと言いましたね(笑)。なんでまた家出?そしてなんでまた波照間!?

 

その当時はあんまり家族と仲が良くなかったから(笑)、いつか家出しようと思ってた。アメ横でバイトしてお金貯めて、波照間に行った。なんで波照間だったかって言うと、あたしは〝はしっこ“が好きだから、行くなら一番北か一番南か。で、その時は寒い時期だったから南に行ったの。波照間では住み込みで民宿のバイトしてたよ。二か月くらいで波照間から戻ってきて、またアメ横でバイトしてたんだけど、いろいろしているうちに、自分の才能を活かして生きて行けたらラクなのでは!?って思って、昔から得意な美術の道へ進もうと芸大(東京芸術大学)を受けた。芸大での四年間は楽しかったよ。
あ、住み込みのバイトはお勧めだよ。行きたいところに行けて、ご飯も食べられるし、宿代かからないからね。大学生の時の休みは、夏は小笠原か沖縄で民宿のバイト、2・3月は外国(東南アジア:インドとか)に行ってた。寒いの苦手だからね、あったかいとこに行ってたの。

 

ーなのに(冬寒い)泰阜にお嫁に来たんですね(笑)。
大学で美術を学んで、卒業後にどうしてまただいだらぼっちに来ようと思ったのですか?

 

彫刻科だったので、とにかく木を彫っていたのだけど、彫るのは楽しいし好きだけど、実体のない美術が嫌だったというか。大学では彫るための木を買うんだけど、ただ彫るだけって言うか、例えば今目の前にある材が何の木なのか、わかってはいるのだけど、じゃあ実際に生えている樹を見て何の木かわかるのかと言ったら、わからないっていう人もたくさんいて…。

 

ーちょうどマグロのお刺身のサクを見たらマグロってわかるけど、泳いでいるマグロを見てもそれがマグロかどうかわからないっていう感じと似てるのかな。

 

どうかな、誰が育てたのか、どこでどんな風に育ってきたか、今自分の目の前にある木のことが何にもわからないのが嫌だったんだよね。だから、木がそこにあって、暮らしと共ににある所で創作したいと思って、大学を卒業してからもう一度だいだらぼっちに来たんだ。お金をうんと稼ぎたいとか、有名になりたいとかいうのは全然無くて、むしろ田舎の方がお金をかけずに(木をHANDSとかで買うのではなく)対話できるところに生えている木を分けてもらえて、分けてくれた人を介してその木がどんな風に育ってきたのかもわかるから、ちゃんと木のことがわかって創作できるっていいなって。

 

ーなるほど。あられの言っている「実体がない」っていうのがどういうことなのか、なんとなくだけど、わかってきた気がします。
そんなあられが今までしてきたことの中で、大変だったことや困ったことはありますか?また、それらをどう乗り越えてきましたか?

 

ん~…(しばらく考えて)、思い浮かばないな~。それなりに大変なこともあったと思うけど、浮かんでこないし、ガッツはあるので乗り越えられる(キッパリ!)。
今住んでるところは、水道が無いから、冬になると渇水・凍結で水が使えない時があるのは物理的には大変。シビアな意味でお金で買えない暮らしをしている(薪・水)、という面では大変だけどね。渇水の時にはだいだらぼっちまで洗濯物を持ってきて、洗濯させてもらったりとかね。でもそれはバズがやってくれてるんだけど(笑)。

 

ー確かにシビアだよね。それでもこどもたちも含めてみんな楽しそうだよね。当然大変な事は山ほどあると思うんだけど、それらも含めて楽しめている感じがする。大変で楽しい生活も含めて、これまでの経験の中で、よかったと思うことや、一番の思い出などあれば教えてください。

 

あたしの人生の一番の幸運はバズがあたしを好きになって結婚してくれたこと!!パッと見似てない二人だけど、だからこそ視野が広がって、お互い自分だけでは見られないものが見られる。でも似てるところもあって、導き出す答えはお互いシンプル。あたしは一生の運を使い果たしたと思ってるよ。こどもたちと出会えたのも、今の暮らしを楽しんで過ごしているのも、バズと出会えたから。バズもそう思ってたらいいな。

 

ーこれはこれは、本当にごちそうさま♡ そんな風に思える人と出会えて、あられは幸せですね!バズくんもきっと同じように思っていますよ!
結婚して家族を持ち、お子さんも4人いるあられですが、自分がこどものころには気づかなかったことやあらためて感じたことなど何かありますか?

 

あんまり考えてないからね~…。考えるときは考えてるけどね。予想外のことが起きているというよりは、思っていた通りなんだよね。思っていた通りこどもはかわいいし、暮らしも楽しい。だから気づかなかったこと、改めて感じたことっていう感じではないかな… うん、思っていた通りだね。

 

ーなんか面白いですね。あられっぽいって言うか…。確かに小さい子は好きでめっちゃ可愛がってたし…。でもご飯作ったりとかお風呂焚いたりとか全然しなかったと記憶していますが…。よく今の暮らししてるなぁって思うことありますよ(笑)。
あられがいたころ、あ、こどものときのことですけど、その頃のだいだらぼっちはどんな感じでしたか?

 

古い母屋の最後の方だったから、窓ガラスが割れてるとこもいっぱいあって、窓がビニールかあるいは無いか!?みたいな感じだった。
でもカッコ良かったんだよね、人の手のあとが見える作品っていうのかな。「こどもだから」というところに逃げずに、本気でつくったあの母屋がカッコ良かった!

 

ー当時の出来事で一番印象に残っていることは何ですか?また、面白エピソードがあったら教えてください。

 

お勝手のストーブ周りにコロ(以前だいだらぼっちで飼っていた犬)がいて、足でモフモフしたり、犬の散歩で村内のあちこち歩いたことをよく覚えてる。大峰山もよく登ったよ。ギター持って登ったこともある!日々の暮らしの中の薪ストーブのにおいや廊下の板の間を歩く音、登り窯の時の見上げた時の空の煙の向こうに見える星とか、日々の音や匂いをとにかくよく覚えてる。
そういえば5の間でゆりとなっちゃんと一緒の部屋だった時、「あられちゃん、起きてるんでしょ!」ってあたしの顔の真ん前のこ~んな近くの距離で言ってたことがあった。あんまりにも近すぎてびっくりした。目を開けたらあまりの至近距離になっちゃんの顔が…!(笑)

 

ーその3人で同じ部屋だったことあったんですね。絶妙なバランスの部屋…ですね(笑)。
そんなだいだらぼっちでの暮らしは今のあられにとってどんな風につながっていますか?或いはどんなふうに位置づいていますか?

だいだらぼっちに来たからどう、ということはあまりないけど、もともとものづくりは好きだったし、だいだらぼっちに来てなくてもものづくりには携わっていたと思う。ただ、人生の中にいつもだいだらっ子がいるなって思う。小笠原の父島でシナモン(OG)一家に会ったり、西日暮里でイケ(OB)に会ったりしたこともそうなんだけど、大学の四年間はずっとなっちゃん(OG)と一緒だったし(二人は同じ芸大の彫刻科!)、アメ横のバイトではどら(OG)もひろみ(OG)もしょっちゅう来てたし、らっきー(OG)なんか今はアメ横に居ついてるし(笑)。芸大の受験の日には上下ジャージ姿のなっちゃんに会って、(多摩美でもむさ美でも会ってたんだよ!)芸大の発表の日には合格を喜んでいたら隣になっちゃんのお父さんがいて…。大学を出てからもう一度だいだらぼっちに行って、そのころいたこどもたちと出会って…と、いつもだいだらっ子があたしのそばにいるなぁ…って。

ーほんとだね、あられがだいだらぼっちに来て以来、ずっと誰かしらがそばにいたんだね。改めて思うとやっぱりご縁なんだね。そんなあられが今夢中になっていることはありますか?あれば教えてください。その魅力も!

 

子育ても畑作業もお料理もそうなんだけど、全部木を彫るのと一緒でね、自分が相手をどうしたいか、ではなくて、「そのもの」がどうしたいのか、どうなりたいのか、なんだよね。だからそのために必要なサポートをしているだけって言うか。彫刻とかデッサンであたしの中に染みついてるんだと思うんだけど、自分とも向き合うし、苦しいこともあるんだけど、それが全てに活きてるんだよね。そんな日々に、毎日に夢中です!

 

ーなるほど、自分がどうしたいかではなくて相手がどうしたいのか、どうなりたいのか、ですね。あ!だからあられがものづくり教室でなにか作り始めると、はじめに作ろうとしていたはずのものではないものができあがってたんですね!いつだったか器を作っていたはずなのに、出来上がったらにわとりのあたまになっていたことがあって、すごく驚いたことを思い出しました!そういうことだったんですね。さっき話していた「実体のない美術」っていうのもここにつながっている気がしました。面白いけどなんか素敵なことでもあるね。相手に心を傾ける感じ、みけも大事にしたいと思っています。
では、あられの夢を教えてください。

 

それがさ、今までの話はちっとも具体的じゃなかったんだけど、(そんなこともないけどね)これはすごく具体的で現実的なんだけど、ルーブル美術館と大英博物館に行きたい!!っていうのが夢です。他にもいきたいところはいっぱいあるけど、これはもう絶対外せない!本当にただ行きたい!って感じだけどね。

 

ールーブル、いいですよね。美術のことはからきし弱いみけですら、くぎ付けになりましたから。ぜひいつか行ってくださいね!
最後に今のだいだらぼっちのこどもたちにメッセージをお願いします。

 

ん~っと、「世界一のバカになれ!」かな。

 

ー??「世界一のバカ」って、どういうこと?

 

大人になって2回目にだいだらぼっちに来た時、はちゃめちゃな元気なこどもたちがたくさんいたけど、数年経ってから会ったらみんな大人になってって言うか、ちゃんとしてて、「あ、こどもでいられる時間って短いんだな」って思ったんだよね。自分がこどもと一緒にいる時間を悶々とせずに楽しめているのは、こどもでいられる時間が短いことを知っているからだと思う。みんなにもこどもでいられる時間を思いっきり楽しんでほしいから。

 

ーなるほど、納得です。あられらしい素敵な言葉をありがとう!こどもたちが思いっきりこども時代を謳歌できるように、みけたちも心掛けていきたいです。今日はありがとうございました。

冒頭にも書きましたが、こどものころにいたときには本当にごはんづくりも風呂焚きもほとんどやっていなかったあられ。でも大人になってやってきたときには、ご飯づくりも風呂焚きも率先してやっていました。こどもたちと一緒にあちこち探検にも行ってくれました。その当時のこどもたちはあられがいたことで本当に様々な経験ができたと思います。みけも一緒によく村内のあちこちを歩き回りました。おかげでみけも、面白いことをたくさんさせてもらいました!あられの中に「芯」としてある、「自分がどうしたいか、ではなく自分が手をかけているその相手がどうしたいのか、どうなりたいのかが大事」という確固たるものを今回のインタビューで改めて感じました。近くにいるけど深く話す機会もそうそうないので、今回のインタビューはみけにとっても大きな収穫でした。まだまだ手のかかる4人のこどもたちとバズと一緒に繰り広げていくあられちゃん一家の未来がとっても楽しみです。近くにいるので一緒にその成長を感じられることが本当にうれしいです。あられちゃん、これからもどうぞよろしくね