「ピザ、やりたい!」
その一言から、9月中旬の1日預かり企画が始まりました。
きっかけは、6月のまるキャンプ。
だいだらっこがピザを焼いている姿を見ていた、いってきましたのこどもたちから出た言葉でした。
※「まるキャンプ」の詳細はこちら
「そういえば、2学期に1日預かりがあるから、他のスタッフにも提案してみない?」そう聞くと
「やる!」と元気な返事。
1日預かりでこどもたちが企画をつくるのは、今回が初めてでした。
「やってみよう!」とは言ったものの、私自身も、何から始めたらいいのかよく分かっていませんでした。
まずは、ピザの具材を考えるところから。
「何をのせたい?」
「チーズは絶対!」
「肉も欲しいよね」
食べることが大好きなこどもたち。
「いろいろなものを食べたい!」という気持ちがたくさん詰まっていました。
そして、自分たちでチラシも作りました。
ピザをイメージしたキャラクターを描いたり、いつやるのか、何をするのかが伝わるように考えたり。
「1学期中に完成させないと、学校に配るのに間に合わない!」
そんなことをこどもたちと言いながら、準備を進めていました。

このときは、9月の本番に向かって、このままどんどん進んでいくのだと思っていました。
ところが、長い夏休みを終えて2学期になると少し様子が変わりました。
企画メンバーの熱量が少し落ち着いたのです。
「やりたい!」と言ったことなのだから、できるだけこどもたち自身に進めてほしい。
でも、待っているだけでは準備は進まない。
では、どこまでおとなが声をかけていいのだろう。
おとなが動かしすぎたら「こどもたちの企画」ではなくなってしまう。
でも、何もせずに任せていたら、本番に間に合わないかもしれない。
そんなことを考えながら、少しずつこちらから声をかけ、物品をそろえたり、当日の流れを考えたりしていきました。
そんな中で、私はピザ窯の使い方をだいだらっこに聞いてくることを企画メンバーに頼まれました。
何年も自分たちでピザを焼いている中学生たちに教えてもらう。
正直、少し不安でした。
「面倒くさがられるんじゃないかな。」
「忙しいからって断られるんじゃないかな」
そんなふうに思っていました。
ところが、実際に聞いてみると、全然違いました。
分からないことを質問すると、一つひとつ丁寧に教えてくれる。
「こうするんだよ」だけではなく、「こうすると危ないから」と、理由まで教えてくれる。
さらには、「ピザ窯を見ないと分からないと思うから、来て」
と、実際のピザ窯のところまで連れて行ってくれました。
そこで「ここは触らない」「こうするとやけどする」と実物を見ながら教えてくれました。
私は、その姿を見て少し驚きました。
私が勝手に「面倒くさがるかもしれない」と決めつけていたからです。
でも、彼らにとっては、長年やっていたピザづくりの知識は、自分たちの中に当たり前にあるもの。
そして、それを必要としている人がいれば、ちゃんと渡していく。
その姿が、とても印象に残りました。
本番が近づくにつれて、準備も具体的になっていきました。
前々日には、来ているこどもたちと食材や火おこしセットなどの物品を準備。
前日には担当の人たちと、ピーマンや玉ねぎを切ったり、生地を作ったりしました。

ところが、生地づくりではさっそくハプニング。
本来はぬるま湯でドライイーストを発酵させるはずが、時間が経ちすぎて冷水に……。
「大丈夫かな……」
ボウルをみんなで温め直しながら、
「ちゃんと発酵しますように」
と願いました。
しかも、作るのは40人分。
粉の状態から生地がまとまっていくまでが、とにかく大変です。
みんなで交代しながら、ひたすらこねました。
さらに問題にあがったのは、一度にピザを作れる人数には限りがあることです。
全員で一気にトッピングをして、同じタイミングで焼き始めるというのは現実的ではありません。
すると、相談員のふーみんから「整理券作ってみたら?」という提案が!
それを聞いて、みんなで楽しく箱や整理券を作り始めました。
「ピザを焼く」だけなのに、そのためには、食材、道具、火、時間、人の動き…..
いろいろなものを準備しておく必要があります。
こどもたちの「やりたい」を実際の活動にするためには、見えないところでたくさんの準備が必要なのだと、改めて感じました。

そして、迎えた当日。
この日は低学年は朝からお休み、高学年は午前中のみ授業で午後からお休み、という日です。
企画メンバーは全員高学年だったため、最初の火おこしは私が担当しました。
朝から集まった低学年のこどもたちには、今日何をするのか、そして火やピザ窯の周りで何が危ないのかを伝えました。

私にとっては初めてのピザ窯。
「ちゃんと時間までに温まるかな」
「企画メンバーに託されたけど、ちゃんとできるかな」
そんなドキドキがありました。
少し熾火を作りすぎてしまいましたが、なんとか良い状態に。
すると低学年のこどもたちが、自分でトッピングしたピザを次々に持ってきました。
ピザ窯の中も、その周りも、とにかく熱い。
入れたピザは、あっという間においしそうに焼きあがっていきます。
「こんなに早く焼けるんだ!」
その速さに、こどもたちと一緒にびっくりしました。
お昼前になると、企画メンバーも学校から帰ってきました。
自分たちのピザを作るだけではなく、ピザ窯で焼く手伝いもしてくれます。
何度もいってきましたでピザづくりを経験しているこどもたちは、私とは全然違いました。
ピザを鉄板に移すときも、焼きあがったピザをお皿に移すときも、慎重に、手際よく作業していきます。
「なるほど。こうやってやるのか」
私は、こどもたちの姿を見ながら、今度は自分が教えてもらっていました。

その後、だいだらっこの中学生たちも学校から帰ってきて、手伝ってくれました。
「このピザの形、移すの難しいんだよなー」
と文句を言いながらも
「でも、俺ならできるからね」
と、みんなの前で張り切る中学生。
その手つきは、やっぱり慣れていました。
こどもたちは、中学生たちの手さばきに釘付け。
焼きあがったピザを受け取ると、「ありがとう!」と嬉しそうに持っていきます。

今回の企画を通して、私が学んだのは、
こどもに任せることと、ただ見守ることは違う、ということでした。
私はこれまで、こどもたちの「やりたい」を大切にするためには、できるだけ口を出さずに見守ることが大切なのだと思っていました。
でも、今回、企画がなかなか進まない時期を経験して、ただ待っているだけでは、こどもたちの「やりたい」が形にならないこともあるのだと気づきました。
必要なときには一緒に考えたり、準備を手伝ったり、動き出すきっかけをつくったりすることも必要なのだと思います。
そして、今回、もう一つ心に残ったことがあります。
それは、こどもたちが自分の経験を誰かに伝えていく姿です。
ピザ窯の使い方を丁寧に教えてくれただいだらっこの中学生たち。
慣れた手つきでピザを焼き、年下のこどもたちを助けてくれる姿を見て、こどもたちは教えてもらうだけの存在ではないのだと改めて感じました。
自分が知っていることや、これまで経験してきたことを、今度は誰かに渡していくことができるのです。
こどもたちの「やりたい」を支えることは、おとなが全部を準備して、できるようにしてあげることではありません。
必要なところで手を添えながら、こどもたち自身が持っている力を発揮できるようにすること。
そして、こども同士が教え合い、それぞれの経験をつないでいけるような関係をつくっていくことなのだと思います。
「ピザ、やりたい!」という一言から始まった今回の企画。
その思いを形にするまでには、たくさんの人の力が必要でした。
そして、誰かに支えてもらいながら実現した経験は、いつか自分が誰かを支える力にもなっていくのかもしれません。
こどもたちの「やりたい」を信じること。
必要なときには手を添えること。
そして、こどもたち同士が持っている力をつないでいくこと。
これからも、そんな関わりを大切にしながら、こどもたちと一緒にいろいろなことに挑戦していきたいと思います。
