つながりを結びなおす|35周年オンライン祝賀会

1986年にはじまった「だいだらぼっち」が35周年を迎えました。元々だいだらぼっちは山村留学では珍しく、保護者の来訪制限もなく、OBOGもことあるごとに帰ってきます。

山に囲まれた海なし県だからと海の幸を来訪のたびに持ってきてくださったり、結婚するよと相手を連れてきたり、家族が増えたと会いに来たり、時には疲れた心と体を休めるために帰ってきたり。毎年のように帰ってくるわけではないけれど、心のどこかはいつも繋がっているのがだいだらぼっちでした。

コロナ前は土日となれば来訪がありましたが、ここ2年は来訪も制限をせざるを得ず、交流も途絶えてしまいました。

OBOGの特に学校へ通っている青年たちからは、大学も通えない、留学が中止になった、このまま学校に通う意味があるのかと、苦しい様子が聞こえてきます。何か私たちでできないかという想いと、35周年のせっかくの機会を活かしたい。なによりオンライン全盛の今の時代であれば、全国、いや海外にもちらばったOBOGたちとも時間も空間も飛び越えて出会う機会が作れるではないか!と考え企画したのが、「だいだらぼっち35周年オンライン祝賀会」でした。

その祝賀会の様子をお伝えします。

寄り合い~はじめの会

オンラインでもだいだらぼっちに帰ってきた気持ちになってもらおうと、オープニングムービーは田本駅からだいだらぼっちまでの道のりを音楽と早送り映像にして映し出しました。誰もがだいだらぼっちに来るたびに歩いてきたあの山道の映像にグッときた方も多くいた様子。

もともと泰阜村に光回線がやってくる!と聞いていたこともあって企画を進めていましたが、なんと光回線が通じているのは県道まで!だいだらぼっちにはやってきませんでした。思ったようなキレイな映像にはなりませんでしたが、祝賀会への気持ちがグッと高まったと思います。

年度ごとの同窓会!

必ずやろうと思っていたのは年度ごとの同窓会です。前回の30周年はたくさんの人に集まっていただいたのですが、諸事情によりゆっくり話す時間がほとんどなかった!もっと当時の仲間と話せる時間を作りたいと、3年ごとの同窓会を行いました。しかし35年分なので、3年ごとにしても12回。1週間で終えるために1日に2つのグループを平行開催です。

過去の出来事に盛り上がったり、あまりに姿が変わったり、あるいは変わらない姿に毎晩盛り上がっていました。途中で「あいつに声を掛けてみよう」と急遽連絡をとって参加するOBOGもいて、2時間の同窓会も延長されることもしばしば。

毎晩行われる同窓会に、「これが1週間続くのはかなりしんどいのでは?」と気づき始めた運営チーム。しかし、楽しそうな声が聞こえてくると「やってよかった」と実感します。また後半に行くにつれ、自分たちが知っているメンバーの同窓会も開催され、疲れを忘れさせてくれます。

 

目玉企画!母屋建設物語

だいだらぼっちは36年前に「自分たちの住む家を自分たちで作ろう」という声からスタートしています。しかし今ではその母屋も建て替わり、当時の様子を知る機会もありません。そこで創設メンバーのカニ、ギックと当時のこどもとして参加してたクリ、ゴイチに登壇してもらい、「母屋建設物語」をフリートークで話してもらう機会を作りました。クリはなんとドイツからの参加です。

「学校から帰ってきたら毎日木の皮むき」「7月には借りている村営住宅を出なければいけないから、必死で作った」「できた小屋は当初壁がなかったけど、キャンプを考えたらそんなものかな」と、想像以上に濃密な日々に圧倒されました。最後に現役のこどもに向けて一言という問いかけにクリは「昔は昔。今は今のメンバーで良いと思うことを考えてやるのがだいだらぼっち」という言葉に改めて自分たちが作る意味が問われたように感じました。

本番を盛り上げるために、事前の打ち合わせでは「そこそこ」の話で終わらせました。しかしその分、どんな話が出てくるかわからない2時間一本勝負のぶっつけ本番。なかなかの緊張感でした。それでも質問をすればするほど、驚くようなエピソードにチャット欄も大盛り上がり。最後は視聴していたクリとゴイチのお母さまにも一言いただき、発見と感動の時間となりました。

 

持ち寄りの心で作る。「持ち込み企画」「だいだラジオ」「スライドショー」!

次にだいだらぼっちらしさをどうやってオンラインで表現できるかを考えました。だいだらぼっちは「この指とまれ」の場所です。楽しいことを提供される場所ではありません。こどもも大人も一緒に「創る」ことを大事にしてきました。そこで「持ち込み企画」の実施と、参加者からの投稿を元に番組を作るラジオ、それぞれが持っている写真を集めて作る35年分のスライドショーの作成を行います。

だいだラジオは生放送。どれだけ聞いてくれるのかと不安でしたが、たくさんの方が聞いてくれた様子でした。終わってみると、たくさんの方から「定期的に放送してほしい!」という要望までいただき、うれしい限りです。いい気になってまたやってしまうかもしれません。

参加者66名!大人交流会!!

そして一番やりたかったのは、「大人交流会」!だいだらぼっちのイベントでは必ず実施するいわゆる飲み会ですが、年代や立場も超えて、みんなが等しく語り合える場として、オンラインでも実施したいと考えました。
とはいえオンラインでの飲み会では満足できない!とそれほど集まらないと思っていたのが、なんと66名!年代もバラバラな人たちが画面狭しとひしめいています。中には今年成人のOBOGも。ブレイクアウトルームで小部屋をいくつも作っての交流でしたが、オンラインであることを忘れるくらいの盛り上がりに、本当に久しぶりにみんなで飲んだ感覚を味わえました。

 

祝賀会の申込み数は結果150件。プログラムの延べ参加者は747名でした。1画面で家族みんなで参加されている方もたくさんいたので、実数はもっと多いと思われます。

多くの感想の中に、「オンラインはどうかと否定的だったけれど、こんなにだいだらぼっちの空気を感じられたことに感謝」という言葉が。
それは私たちの演出というよりも、それぞれの責任で関わって創り上げるという「だいだらぼっちの精神」がこの空気を生み出したのだと思います。私自身も大人交流会では、あんじゃね(いつも交流していた施設の名前)にいるかのような錯覚が起こすほど。それだけムリなく関われたことに驚いています。

30周年祝賀会の際は、となりの飯田市で式場を借り、300名以上が集まる大イベントを行いました。その準備に時間も労力も相当かかり、「5年ごとに祝賀会をやっていては身体がもたない!」という気持ちもあって、正直言えば35周年を行うつもりはありませんでした。しかし終わってから届いたのは、この機会への感謝の言葉。この状況だからこそ選んだ手段であり、出会えた人たち、そして実施できた数々のプログラムに、タイミングが生んだ妙を感じます。

最後はやっぱりリアルで会いたいね。という言葉は出てきますが、一方でオンラインだから参加できた方も多数いました。物理的に遠い人、忙しい人、人前に出るのがちょっと、という人も。オンラインというツールは決して万能ではありません。でもこれまで乗り越えられなかったハードルをいとも簡単に乗り越えさせてくれるものでもあります。要は使い方次第です。今回はその使い方が存分に発揮され、多くの人とまたつながりができたことにホッとしています。