信州こども山賊キャンプ、終了!! ~本質的な教育改革は信州の山奥から始まる~

「信州こども山賊キャンプ」が終わった。
7月21日から、全国から約1000人の子どもたちと300人の青年ボランティアが参加した。

人気の秘密は至ってシンプルで、キャンプのプログラムを「自分で決めることができる」からだ。
しかし、初めて参加した子どもは、まず「自分で決める」ことに戸惑う。
おそらく、ルールや決まりごとを子ども自身で決めた経験が少ないのだろう。
彼らにとって、きっとルールは大人が決めるもので、すでに存在しているものなのだ。

プログラムが進み、自分で決めることに戸惑いがなくなった子どもは、今度は「変える」ことに戸惑う。
一度決めたルールは、妙な責任感や正義感が生ずるのかテコでも変えない。
そのルールが全く実態にあわなくなっているのに、と苦笑するばかりだ。
まるで、法律が時代遅れになっているにもかかわらず改正されない国会のようだ。
これもおそらくルールをこども自身で変えた経験が少ないのだろう。
これらは青年ボランティアにもそのままあてはまることだ。

自分で決めること・変えることの欠如、それは民主主義の崩壊を招く。
それは論理の飛躍ではないように思う。
「決める」という自分の責任に向き合えない人が、相手の責任に丁寧に向き合えるわけもない。
そしてその丁寧さを省くあまりに、合意形成の際にはたやすく多数決を用いることになる。

しかし、民主主義=多数決ではない。
本来多数決とは、少数意見を多数意見に反映するための決め事ではなかったか。
少数意見に耳を傾け、尊重し、多数意見を調整して結論を出す。
時間はかかり、ときには少数意見に結論がひっくりかえるときもある。
こうした自分と自分の意見が大切にされている経験を重ねること、そして相手と相手の意見を大事にするという経験を、丁寧に積み重ねることが、今の子どもにとって大事なのだ。

「一人一人(の意見)を大事にすること」が、教育現場でも家庭でも地域でも蔑(ないがし)ろにされてはいないか。
それを最も痛感するのが、最近の政治家や官僚の言葉や立ち居振る舞いであることが、残念でならない。

それでも教育者のはしくれとして私は言わなければならない。
それぞれの意見を大事にしつつルールや結論を決める、という民主主義の土台を教えていくのが教育の役割だ、と。
政治家・官僚の劣化や民主主義の崩壊などと、あきらめている場合ではない。

信州山賊キャンプでは「一人一人を大事にする」教育の質を深めたい。
「自分たちのことは自分で決める(自己決定権)」を取り戻す教育を行いたい。
本質的な教育改革は、信州の山奥から始まる。

代表 辻だいち