だいだらぼっちでは、毎日、ご飯をつくる人やお風呂を炊く人を前日に話し合って決めています。その中でも大変さを感じるのは朝ご飯隊です。眠気と戦い、重い体を起こすのは一苦労。5時半に起床し、すぐに20人分の朝食作りが始まるのです。一学期は新鮮な気持ちだったり、好きなご飯が作れることもあって、5時半よりも早くに起きてくるこどもたちもいましたが、数ヶ月も経つと慣れが生じて人気がなくなる時期がありました。
そんな中、私から思いつきで「お子様ランチ作ってみたい!」と言ったことがありました。
なにか特別な料理を作ってみたいという思いと、どうせなら楽しんでやりたいという気持ちと、決まらない朝ご飯の段取りに話題を出してみようという思いもありました。半分冗談のつもりではあったのですが、朝ご飯隊の3人がワクワクした表情になり、次々とおかずのアイデアを出したり、冷蔵庫を確認しながらメニューが決めたりする姿に驚きました。
次の日の朝、3人で起こし合ってなんと5時半前に集まり、お子様ランチづくりが始まりました。ケチャップライスに、サラダ、ナポリタン、ちくわの磯辺揚げ、コンソメスープ。初めて挑戦するおかずもあり、味見をしながらこうじゃないああじゃないと言い合い、使うコンロを譲り合いながら協力したり、盛付けを話し合いながら作りました。かなり手間もかかるので、いつもより時間がかかり、皿洗いの量も倍になります。まるでお勝手が厨房のように忙しくなりましたが、それでも最後には、ご飯をお椀でしっかりと山形に盛り、旗も作ってこだわりのワンプレートが出来上がりました。

6時半になって起床してきた他のこども達からは、「美味しそう~豪華だね」「すごいじゃん!かわいい~」と、歓声と驚きの声が上がりました。朝ごはん隊は得意げな顔をしながら、おかずの説明を一つ一つしてくれます。まさか、私の小さな遊び心がこんなにも楽しい朝につながるとは思ってもおらず、いつもは淡々と過ぎていく朝の時間がなにか特別な日のように感じられました。

それから、宿直に入る日には必ずほぼ同じメンバーが朝ご飯隊に入り、お子様ランチが定番になりました。最初に提案したのは私でしたが、今では「お子様ランチの段取り取るよ」と、作る気満々な様子で誘ってきます。自分自身がごはん作りを楽しむことで、こどもたちにもその楽しさやおもしろさが伝染していくのを感じました。他のこどもたちも、起床と同時に完成したお子様ランチを興味津々な様子で覗いてくるので、その顔を見るのも楽しみの一つになりました。

翌日が休日になると、時間に少し余裕があるためお子様ランチもいつもより豪華になりました。まずは、段取りから。今回はホワイトボードを使って配色や、バランスもこだわりました。豪華といえど、「あるもので作る」のが基本であり、プライドです。毎日の食事で使われる食材から、どんなアレンジができるのか頭を悩ませました。

今回挑戦したのは「ハダカデバネズミ」ランチです。
メンバーの一人が大好きなハダカデバネズミを再現したいということで、いつものピラフにかわいい顔がつきました。さらに卵を薄焼きにして星型にしたり、色合いを見ておかずを追加したりと、できることの幅が回数を重ねるごとに広がっているのを実感します。


しかし、最近では気温が下がって朝の母屋が氷点下になることも多くなってきました。踏ん張って体を起こしても、凍える寒さに布団に逆戻りする人もめずらしくありません。なかなか真っ暗な冬の朝は耐えられず、遅れて起きてきて謝りながら片付けを手伝っていることもあります。
そんな寒さに打ち勝てるのも、お子様ランチの力でした。
今回はいつもお子様ランチを目にしてきた別のこどもたちが挑戦したいということで、新メンバーでのごはん作りとなりました。数日前に実は同じメンバーで朝ご飯隊に入り、起きてこれなかった3人でしたが、「明日必ず起きるから!」と言い残して就寝しました。朝は寒さにめげながらでしたが、しっかりと起きてきて「宇宙」をテーマに描いたイメージ図を見ながら全員でおかずを作りました。
完成したのはロケット型のパンケーキと野菜たっぷりスープ!
作るメンバーによってもアイデアが異なり、段取り中も調理中もワクワクしっぱなしだったように思えます。やはり、お子様ランチは協力しないと時間内には終えることはできないので、「私やっとく!」「任せた!」なんて声が飛び交うこの時間が、信頼を感じる瞬間で温かい気持ちになりました。


時には、他のこどもたちから「またお子様ランチ??」と苦笑されることもありますが、朝ご飯隊も私も全く気にしません。次々とバリエーションが増えること、色んなアレンジができるようになってきたことが楽しくてしょうがないんです!一つ一つ手作りするのは大変だけれど、なんでも楽しければ乗り越えられるという安直な性格の私は、誰かが「やってみたい!」と思うことは、なんでもやってみたくなります。けれども、すぐ乗り気になってしまって、時間に間に合わず、慌ててみんなに助けてもらうなんてこともありました。それでも挑戦したい気持ちは諦めきれなくて、どうにかできないかと朝ご飯隊と頭をひねらせながらお子様ランチづくりの計画を練っています。
ワクワクすれば、早起きが辛いことも、ご飯作りがめんどくさいことも、意外と簡単に思えるし、やってのけてしまう。楽しいからこそ、「やらなきゃいけないごはん作り」が「やりたいごはん作り」に変わっていくんだと改めて実感しました。
また、一人で作る朝ご飯にはわざわざこんなに手の込んだご飯は作りません。一緒に知恵を絞って作る仲間と、楽しみに食べてくれる仲間がいるからこそ、やりがいがあるものだと感じました。ワクワクを口にして、一緒になってとりあえずやってみる。一人がワクワクしていると、次々とアイデアが浮かぶこの感覚を大切に、さらにお子様ランチをパワーアップさせていきたいです。
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2024年度一年間長期インターン生。長崎県育ち長野県出身。信州大学4年生(休学中)。教育学部でよりよい学び場を模索する中、暮らしや手間の中にある「考える」おもしろさと地域を根っこにした教育に関心を持ち、グリーンウッドのインターン生として参加。