だいだらぼっちの卒業生にインタビュー てっぺい(1989年度参加)

とりあえず、いろいろやってみて。やってみないと分からないことって多いから、とりあえずって大事かも。そして楽しいと思ったことはとことんやってみて。

だいだらぼっちの卒業生・保護者にインタビューするこの企画、今回はだいだらぼっち4期生のOBてっぺいです。てっぺいは、だいだらぼっち4年目(1989年度)に、中学2年生の一年間をだいだらぼっちで過ごしました。それではインタビュースタート!

ー早速ですが、簡単に自己紹介をお願いします。

こんにちは、てっちゃん(てっぺい)です。だいだらぼっちが始まって四年目に、中学2年生の一年間をだいだらぼっちで暮らしました。今は竹細工(竹籠を作って売る)を仕事にしています。
宮崎県の一番北の山の中にある日之影町(ひのかげちょう)に、家族5人(連れ合いと男の子3人)と住んでいます。あと、「移住定住支援コーディネーター」と、「地域学校協働活動推進員」もしています。この二つは自治体がらみの仕事です。

ー今のお仕事に就こうと思った理由を教えてください。

いろんな手仕事を見てまわっている中で、この地方独特の背負いかご「かるい」を見て、地元のおばちゃんたちが使っているのも見て、「竹細工、やってみたいな…」と思った。
木を植えたりする仕事もやりたいと思ったけど、そっちはうまく話が進まなかったんだ。

ーてっちゃん木工よくやってたしね。
お仕事で大変だったことや困ったことはありますか?また、それらをどう乗り越えてきましたか?

技術を取得するまでの数年は全くお金にならなかった。作った竹籠を、どういう形で売っていくのか、今の〝注文してもらって作る“というスタイルに落ち着くまでに時間がかかったのが大変だった。
値段を決めるのは今でも大変!

ーそうだよね、受注生産するには受注できる確信がないとできないもんね。おまけに手仕事の値段って人によって価値基準が違うからつけるの難しそう。

とにかくどうにか続けていたら、やっていけるようになった。10年位経って「これでやっていけるかな。」って思えるようになった。「こういうモノを作っていきたい」という最初に考えていたことを基本的に変えなかったのが結果的に良かった気がする。

ーてっちゃんの思う「こういうモノ」ってどういうモノ?

そうだなぁ~、昔っからある技術を基本変えずに、モノづくりに対する想いとかも変えずにね、昔からあるものだけじゃなくて、今の暮らしの中で使えるものを作っていく、っていう感じかな。

ーすごく納得。てっちゃんらしい!昔からの技術とモノづくりの姿勢は変えず、新しい今の暮らしに合うものを生み出していくんだね。なんだか面白そう。
お仕事をしていてよかったと思うことや、一番の思い出などあれば教えてください。

昔からある竹籠作りをしている職人さんたちや、同じような仕事をしている同年代の仲間、これから竹細工を仕事にしたいと思っている人たちとつながりができたこと。これは財産だと思ってる。
一番の思い出は、日之影の職人、廣島一夫さん(当時97歳)の作品展を仲間たちと企画して、滋賀県で開催したことかな。

ー廣島さんの名前と滋賀っていれて検索したらその作品展の事だけじゃなくて、日之影町のHPのてっちゃんが載ってるページも出てきたよ。(みなさんもぜひご覧ください。てっちゃんのインタビューもYoutubeで閲覧できます!https://hinokage-kanko.jp/takezaiku/takekougeihozonkai/)日之影町とてっちゃんの出会いとか、てっちゃんが日之影の竹細工の特徴を話しているものとか、このインタビューと重ねて見たらより一層てっちゃんの想いがわかる感じだったよ。さっきのてっちゃんの思う「こういうモノ」につながることとかたくさん話してるから。
その日之影町との出会いも含まれると思うけど、今のお仕事に就くまでに、てっちゃんが体験したことなどきっとたくさんあると思うので教えてください。

フリーターをしていて、全国ブラブラしたこと。ヒッチハイクもしたよ。日本海でロシアのタンカーが沈んだときには長期ボランティアにも行った。
ただブラブラするのが物足りなくなって手仕事の作り手を訪ねてまわったり、巨樹・巨木を見に行ったりしたよ。どれもおもしろかったなぁ・・・。

ーバックパッカーで全国まわったってことかな?なんだかだいだらぼっちのOB・OGはバックパックでどこかに行く人多い気がする…(笑)。(ナホトカ号が座礁したとき、だいだらぼっちのこどもたちも重油の除去作業、手伝いに行ったんだよ。)
その手仕事の作り手をまわった時に日之影町と出会ったんだね。移住してから20年になるんだもんね。ブラブラすることは大事なのかも。
話は変わって、てっちゃんは結婚されていますが、家庭をもって自分の中で何か変わったことや気づいたことはありますか?

自分の家庭をもって子どもが生まれると、今までは自分がやりたいことを最優先させていたのが、子どものこと、家族のことを先にするようになった。というより、せざるを得なくなった。ただ、仕事においても自分のやりたいことを仕事にしているように、やりたいことと先にやらなくてはいけないことが重なるといいと思う。家族のことを優先させているうちに、その中で得意なことが自分の役割になったり、すごく好きでないことも、「まぁ、やるか。」という気持ちになったりする。

ーなるほど、てっちゃんらしいな。(笑)
てっちゃん一家はどんな一家ですか?PR含めて教えてください!

地元のおばちゃんたちからは「昭和の子たち」と子どもたちが言われています。
パソコンはあるけどスマホ・ケータイ0台。(!)アナログな家です。

ーなんていうか、それも含めててっちゃんらしいわ。ペースをかき乱されることなく、静かに穏やかって感じかな。
ところで、てっちゃんがいたころのだいだらぼっちはどんな感じでしたか?

基本的に自分が好きなこと(主に木工かな)ばっかりしていた記憶しかないけど、つまりはそれができるような感じだったのかな?

ー「自由」ってことかな。きっと「勝手」だったらまかり通らないからね。
当時の出来事で一番印象に残っていることはなんですか?また、面白エピソードがあったら教えてください。

ほとんど思い出すことができないのが残念だけど、話し合いの時にかんや(当時小3)がおこって部屋のふすまを取って投げたこと。あ、でもこれは本当に自分が見たのか、それとも聞いた話なのか、自信ないけどね。(笑)
それから、だいだらぼっち祭りの劇で、なり手がいなくてもめていた「ホタルブクロ姫」(どんなお姫様かわからないけど:笑)の役を、「じゃあ、おれがやる。」と手を挙げたこと。なんでやると言ったのか、今でもわからないけど、引き受けた後、涙が出るほど恥ずかしかった気がする。メイクも過激だったしね。でもやったら割と面白かったよ。

ーだいだらぼっちでの暮らしは今のてっちゃんにどんなふうにつながってますか、あるいはどんなふうに位置づいていますか?

だいだらぼっちでの暮らしと近いことを今もやっているのかも知れない。名古屋に住んで、フリーターをしていた時には、それをずっとするイメージは全くなかったけど、今の日之影での暮らしは、竹細工(モノ作り)を仕事にして、田んぼ、原木椎茸、薪を集めてストーブや風呂を焚いたり、とてもしっくりくるし、だいだらぼっちでチェーンソーやオノを使えるようになっていたことは、とても役に立っている。近所の80歳くらいのおじちゃんに、「あんた、薪割りがうまいね!」と言われた時にはかなり嬉しかった。

ー今てっちゃんが夢中になっていることはありますか?あれば教えてください。その魅力も!

今はまっているのは「田んぼ」!4・5年前に背負い籠の紐に必要な藁を確保するために始めたらあまって、今年は一反作っている。耕耘機(押して使うやつ)をもらって、手で植えて、無農薬なので草を手で取って、手で刈って、もらった足踏み脱穀機と唐箕(とうみ)で米をあやす(米ともみ殻とをより分ける)。自分の手と身体を使って、主食の米ができるのは、自信になった。竹細工は座り仕事なので、体を動かして働くのは気持ちがいいし、自分の中の何かが目覚めたのか、不思議なくらいおもしろい。あと、地元に人とあいさつの後は田んぼの話を交わすというのも楽しい。「今年はどう?」みたいな。

ーさっきてっちゃんが言ってたやらなければならないこととやりたいことが重なるといいって言っていたことそのまんまだね。
そんなてっちゃんの夢を教えてください。

今の調子で暮らしていって、竹細工や、昔からのあたりまえの山の中の暮らしをしたいという人が周りに増えてきたら、更に楽しいと思うし、増えそうな気配もあるし、そういう人たちとのつながりを増やしたい。

ーぜひたくさんのそういう人たちとつながって、ひとつ一つ丁寧に紡ぐ暮らしが広がっていくといいね。
最後に今のだいだらぼっちのこどもたちにメッセージをお願いします!

とりあえず、いろいろやってみて。やってみないと分からないことって多いから、とりあえずって大事かもしれない。やってみてそして楽しいと思ったことはとことんやってみて。

ーてっちゃんをよく表している言葉のような気がします。一歩を踏み出したいけど踏み出せずにいる人にとっては背中を押してくれる言葉だと思います。とことんやってみたら見える景色もあるもんね。ありがとうございました!

てっちゃんは、だいだらぼっちにいる期間はみけとかぶっていませんが、みけがよく遊びに来ていたころにだいだらぼっちにいて、いつも何か作ってるか作業してるかっていう印象です。当時から本当に手仕事が丁寧で、みけはてっちゃんが作った木のスプーンをもらったことがあるのですが、なんていうかもうプロの仕事みたいな仕上がりだったんです。てっちゃんに言わせると、まだ直したいところはあるようでしたが、みけにしてみたら文句なしでした。漆が塗ってあったのだけど、それも丁寧に塗ってあって…。だいだらぼっちを卒業してからも、同期のおやかた(キャンプネーム)と一緒に、だいだらぼっちにある木材の整理をしに来てくれたこともありました。インタビューをしていて、朴訥とした口調や誠実さは本当に変わらないなぁ、と思いました。これからも堅実で丁寧な手仕事を続けて、ぜひ継承していってくださいね!忙しいと思いますが、時間ができたら家族で遊びに来てください。いつでも待ってます!!