NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の12月のプロジェクト研修報告です。
ー1月を振り返ってー
自分たちの暮らしを見つめ直す出来事があった12月を経て、だいだらぼっちはひとつの「家族」であることを意識しはじめ、私はこどもたちが安心していられる場所をこどもたちと一緒に作っていきたいと思いました。
1月の目標を考えるにあたって、こどもたちが安心していられる場所とはどのようなものか考える時に私が思い浮かべたのは家族でした。私のダメなところをよく知っていて、間違ったことをした時には私のことを想い伝えてくれます。存在をまるまる肯定してくれ、どんな時にも味方でいてくれます。だいだらぼっちでも、こどもたちが仲間との衝突や全く異なる価値観との出会いを通して日々変化しながらも「自分は自分のままでいいんだ」と安心して仲間の輪にいてほしいと思いました。
目標は具体的で継続できるものにして、それをしっかりとやり切ることを積み重ねていくと見えてくるものがあるとアドバイスをいただきました。そこで1月は具体的な行動として、毎日学校から帰って来るこどもたちにひとりひとりの顔を見て「おかえり」と言うことを目標としました。
こどもたちが学校から帰ってくるタイミングは毎日訪れるので、その度に目標に立ち返り、ひとりひとりへ意識を向けることができました。毎日学校から帰って来るこどもの顔を見ていると、「いってきました!」と元気よく返ってくる子もいれば、むっとした表情の子もいて、反応も表情も日によって違いました。こどもの様子によって、その後の関わりの中でちょっとした言葉のニュアンスを変えたり、話しかけてみたりしました。何気なくいるとこどもたち全員に目が向かないこともありますが、こどもたち18人全員の顔を見ることでひとりひとりの様子に目を向けることができました。いい気分で帰った日も嫌なことがあった日もいつでも変わらずに自分が帰るのを待っている人がいることはこどもにとって心強く、安心して生きることに繋がると思うので今後も変わらず続けていきます。
また、2学期の終わりに日々の関わりの中で伝えたいと思ったことを臆せずに言葉にしていこうと心に決めていたにも関わらず、自分の価値観との違いがある時には伝えることが難しいことがありました。しかし、自分の価値観で確信をもってこどもたちに伝えられるものがあることにも気づきました。それは「人を傷つけることをしてはいけない」ということです。そこで、1月はこどもが人を傷つける言葉を言っている時に見逃さずに間違っていることを伝えることを意識しました。
3学期になり、以前に比べて人を傷つける言葉は減りましたが、相手が嫌がる言葉を発している場面に出会いました。その時にまず私は言ってはいけないことだとこどもに伝えました。それに続けて「どうしてそんなことを言うのか」と聞くと、ある子は「自分も相手にされて嫌だったことがあるんだ」と話し始めました。ある子には言ってほしくない理由を伝えると「どうして自分が嫌な言葉を言ってしまうのか」を話し始めました。
今までのように私が一方的に伝えるだけで終わらず、そこからこどもが思っていることを知ることができました。こどもたちにとっても「人を傷つける言葉はいけない」と注意されたことだけを理解して終わるのではなく、自分の言葉を周りで聞いている仲間の気持ちに目を向けたり、自分がなぜ相手に嫌な言葉を言いたくなるのかを考えたり、少し立ち止まって自分を省みる時間が必要だったのだと思いました。
また、あるこどもが私に対して馬鹿にするような言葉をかける場面がありました。その言葉を目の前で聞いていたこどもが「そういうこと言わないで。聞いている方もすごい嫌だ。」とはっきりと伝えてくれました。この言葉は、私にとってこどもたちと一緒にこの場所をつくっているということを実感する言葉でした。
こどもが間違ったことをした時に間違っていると伝えるのは私が大人だからではなく、私はこどもたちと一緒にこの場をつくっている仲間だから伝えなくてはいけないんだということに気づかされました。残りの時間も仲間が気持ちよく、安心していられる場所をこどもたちと一緒につくっていこうと今改めて思っています。
担当者より
暮らしを見つめ直す出来事や話し合いがあった12月を経て「みんなが安心していられる場所とは?」ということを考え、そこから「一人ひとりを見つめること」や「伝えたいと思ったことを臆せずに言葉にしていくこと」を目標として1月に臨んだなるこ。
自分の価値観との相手の価値観に違いがある時には伝えることが難しいこともあったようですが、それでも伝え続けようとすることやお互いをきちんと知ろうとすることを日々の暮らしの中で行動として積み重ねたからこそ得られたものは大きかったのではないでしょうか。
だいだらぼっちでの暮らしは大人としてのなるこではなく日々共に暮す仲間の一人としての存在や行動がどれほど大事であるか考えさせてくれます。残り1ヶ月半でこの仲間との暮らしは終わっていきます。めいいっぱい悩み、ぶつかり、そして何より楽しんで過ごしていってほしいと思います。
財務・会計・ホームページ・総務全般・キャンプ事務などを担当。
泰阜村に暮らして早二十数年。3人の子どもたちも社会人や大学生になり家を巣立ち、自家製酵母を育てたり、旦那が畑で作る数々の野菜を漬物にしたり、大峰山に登ったり…子どもに使っていた時間を少し自分に使いながら、のんびりと泰阜で暮らしてます。