焼き物を焼く”登り窯”。
だいだらぼっちには30年前、当時のこどもたちと大人たちがつくった登り窯があります。
今年度も1月末に登り窯を焚き上げました。
アカマツの薪を三日三晩くべ続けて1200℃以上に達します。
だいだらぼっちの登り窯はこどもたちが主役です。
主役が意味するのは大人に言われるままに「目立つ役割をする」ことではなく、こどもたち自身が考えて、判断して焚くことです。
(こどもが焚く登り窯なんて世界中探してもきっとここだけではないでしょうか?)
そして、こどもたちが関わるのは窯たきだけでなく、準備の段階の地道な作業からです。
スタッフが伐倒したアカマツを山から引き出す、薪割りをする、薪を積んで乾かすという薪の管理からこどもたちが担っています。
火を扱う、薪を使う、窯を観察する、仲間と話し合う、意見をすり合わせて決断する・・・登り窯では今までこどもたちが暮らしの中でトライ&エラーしながら積み重ねてきたものがないと乗り越えられないのです。
窯たきまでの過程には想像を超えた綿密な段どりと作業があります。
こどもたちの「本物の仕事」を紹介します。
だいだらぼっちの登り窯はこれまでずっとこどもたちからこどもたちへ技術や想いを伝授しながら続いてきました。
こどもたちに窯の構造、窯たきのコツ、窯づめの肝・・・あらゆることを継続メンバーから1年目のこどもたちにレクチャーをします。
「登り窯を経験したことのない人にどう伝えるか?」を考える過程で、理解が曖昧だったことが見えてきます。「何でこうするんだっけ?」と分かる人に聞いて自分なりに理解して・・・という過程を踏むことで登り窯への理解を深めていきます。
レクチャーの内容は登り窯を焚くために必要なことなので、表面的な話ではありません。窯の仕組みを理解していないと話せないこと。本当に奥深い。
レクチャーでは自分の中に蓄積してきたことを自分の言葉にしてアウトプットします。
あるレクチャーでは2年目の子が理解が曖昧な部分がうまく言葉にできない・・・そんな場面がありました。
すると登り窯4年目のベテランの子はすかさずフォローして分かりやすく説明してくれました。さすがの理解度です!
(なるこもわからないことがまだまだあるのでベテランのこどもに聞きます。)
同時進行で、薪の準備も始めます。
登り窯には4つ作品を焼く部屋があります。一番下の胴木間から、1の間・2の間・3の間と順番に上に上がって薪をくべていきます。
薪は3年前のこどもたちが用意してくれたよく乾いているものを使います。(なので今年のこどもたちは未来のこどもたちが登り窯を焚けるように薪を用意するのです)
胴木間の薪を準備。
窯たきの時に取りやすい位置に移動させます・・
くべるのに大きすぎる薪はもうひと割り!
続いて、1の間から3の間に使う”小割”をつくる。
薪をさらに細く割ったものでこの作業がすごいのです。
普段作業に飽きて遊びだす子も恐るべし集中力で割り続けます。
そして、窯づめ。
こどもも大人も総出で作品をつめていきます。まるまる4日間かかりました。
どの位置にどんな作品を置くかで、窯の中の炎の流れが決まります。作品がきれいに焼きあがえるためには窯づめが命なのです!
こうした作業のひとつひとつが窯たきへ気持ちを高める階段です。それぞれの気持ちや蓄積がその人の言葉や行動となり全体で集中した空気をつくって窯たきを迎えました。
ひとりでは絶対に焚けない登り窯。
無事に登り窯を焚き上げられるようみんなでお祈りをして、窯たきが始まります。
窯たき中は「作品を焼き上げること」=釉薬がきれいに溶けることを目指します。
窯の中で温度差が出ないようにゆっくりと窯全体を温めていきます。
窯たき中はこどもたち同士でのチームワークが超重要。
「火吹き穴から火が消えた!」「窯の中を見てみようよ!」と窯の中を覗いて薪をくべるタイミングをうかがったり・・・
窯の中をみんなで覗いて「熾火の量が前回見た時よりすごく減っている!」「温度は上がっていないけど窯全体が温まって燃やす力が上がっているんじゃない?」と窯の状況を話し合ったり・・・
次の当番のこどもたちに引き継ぐために、「今の目標は?」「何を考えて焚いていた?」と話し合ったり・・・
毎秒ごとに変容していく窯と対峙します。
「今の窯の状況は?」「この時間帯で何度を目指す?」「温度を上げるために熾火をどのくらいためようか?」…それぞれのチームごとに目標を定めて取り組みます。
どのチームもひとりひとりが役割を持ち、それぞれの目標を着実に達成して見事に焚き切りました。
登り窯でそれぞれの持てる力を合わせたこどもたち。
共に成し遂げた仲間と共に、こどもたちは残りの期間も楽しい毎日をつくります!