2021教師指導者育成プロジェクト~なるこ 7、8月の研修報告~

 NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の7、8月のプロジェクト研修報告です。

 

―山賊キャンプでの学びー

 だいだらぼっちで4か月過ごしてきて、大人が暮らしを楽しむ背中を見せることが、子どもたちの暮らしへの心持ちが変化するきっかけになることを感じていました。そこで山賊キャンプでも「まず自分自身が楽しむ」ということを特に心掛けて臨みました。低学年から高学年まで参加者のバランスが取られている組では、自分がごはんの歌や集合ポーズ、片付けといったひとつひとつを楽しむことで、子どもたちとの間に前向きな空気が伝播していくことを感じました。しかし、その姿勢が通用しなかったのが、参加者のほとんどが小学1、2年生というちびっ子たちの組でした。
 この組は、自由に動き回る1、2年生を相手に、思うようにいかないことが多い分、学びが大きいキャンプでした。学びのひとつは、目の前の子供に対して、何を大切にしたいかを考えて接することの大切さです。族の中に、ご飯づくりや片付けなど、みんなでひとつのことをする時に、いつも寝ていたり、虫に夢中になったりと、声をかけても中々族の活動に加わろうとしない子がいました。私は仲間と協力し合うことも大事だけれど、やっていることをやめるのを極端に嫌がる彼にとって、興味のあることを伸ばしていくことやありのままを認めてもらえるんだと子どもが感じることも大切にしたいという気持ちがありました。そういった考えが定まっていないまま、彼を活動に促そうと言葉をかけていたため、私の言葉は彼に伝わらなかったと感じます。もっと彼と一緒に遊んだり、彼が好きなことについて話を聞いたりという時間を作れていたら、少しでも彼にとって心を許せる存在になれ、同じ言葉でも伝わることがあったのではないかと思います。

 また、大切にしたいことを相談員同士で共有しあう重要性を感じました。2日目の夜、族の相談員で最終日に向けて目標を考える時間がありました。目標として「族のみんなでやりきる」というものがあがりましたが、2日間、相談員も精一杯声をかけ続けたりと頑張っていたこともあり、私は片付けやご飯づくりを協力してやり遂げることも大事だけれど、そこばかりにとらわれず、子どもも相談員も何よりまず「楽しむこと」を大切にしたいという気持ちがありました。しかし、その想いを族の相談員に丁寧に伝えることができずに、最終日を迎えました。

 実際に「みんなでやりきる」という目標は今の子どもたちにとって、かなりハードルが高く、目標との差に相談員が苦しくなってしまったと感じます。ひとりひとりが「違う」ことの面白さや「楽しむこと」の大切さを共有できていたら、相談員の心の余裕が、少しずつ全体の前向きな雰囲気に繋がっていったのではないかと思います。今回の経験で、互いが大切にしたいことを相談員同士で知っておくことの大切さを実感しました。

 

―2学期に向けてー
 2学期はまず自分がだいだらぼっちの暮らし、泰阜村での暮らしを存分に楽しみたいと思います。私がチャレンジをしたり、暮らしを楽しんだりする姿が、子どもたちのやってみたい気持ちを後押しすることに繋がっていけばと思います。具体的には日々の隙間時間にものづくりをすることや村の人のところへ子どもと会いに行き、藁の編み方など村の人の手の中ににあるものを教わりたいと考えています。 
 また、だいだらぼっちでも、子どもが相手を傷つける言葉を発した時やみんなで決めたことを守れない時など、子どもに大事なことを伝えなければならない場面があります。1学期を経て、関係性が積み重なってきている子どもたちには、大事なことを相手に伝わるように言葉かけすることを意識していきたいと思います。しかし、自ら関わろうとしないと一日の中で関わることが少なく、関係性が築けていない子どもたちに対しては、言いづらいことを、言葉を選んで相手に届くように伝えるのはまだ難しいと感じています。だから、大事な時に自分の言葉が少しでも彼らに届くように、まず私は彼らの話を聞いたり、ひとつのことに一緒に取り組んだりする時間を日々重ねて、彼らとの信頼関係を築いていきたいと思います。

 

〈7、8月研修担当ぱるのふりかえり〉

 だいだらぼっちのお姉ちゃん的存在のなるこ。だいだらっ子たちの悩みにいつも耳を傾けてくれていて、まさにこれぞ“相談員”さんだなと思ってみています。そんななるこにとって、こどもとも相談員同士もじっくり時間をかけつつ関係性を築いてきただいだらぼっちのあり方から、初めてのこどもたち、相談員と数日間みっちりかかわりあうというキャンプは、また新たな試練と学びの機会となったようです。
 初めて出会う相談員と、いかにチームとなってこどもたちとかかわりあうか。そこには自分なりの価値観と考えを持って他の人と共有し、共に目指す方向や在り方を探る必要があります。そしてこういった場面は、キャンプに限らずこれからもたくさんあるでしょう。その重要性を身をもって体感できたことは、大きな収穫だったのではないでしょうか。
 なるこのすごいところは、これまでのやり方が通用せず、うまくいかなかった!という今回の経験を、自分なりに丁寧に振り返って分析し、次にどうしたらよいのかを考えて言葉にできているということ。失敗をバネにできる人は確実に成長する!なるこのさらなる成長に期待しています!