岐阜聖徳学園大学実習|「学ぶとは何か?」を考える合宿

 2月末に岐阜聖徳学園大学の2泊3日の合宿を行いました。泰阜村の暮らしや森での作業を体験し、自分や仲間との対話を通して「学ぶとは何か」を考える合宿です。
 担当教員の中島先生とは約10年前からご縁があり、岐阜聖徳学園大学は毎年受け入れをしています。今回は過去最大人数の申込みがあり、12名の学生さんが参加。学年は大学2年生~院1年生で、専門は数学・理科・社会・音楽…と多様ですが、多くの学生さんが将来は教員を目指しています。

 作業をするフィールドは”あんじゃねの森”です。今回は伐倒の跡地に、新しくこどもの遊び場を創ることが目標です。
 外部の方と森で作業をする際は、森やグリーンウッドにとって必要な作業をプログラムに組み込んでいます。今回の伐倒跡地は、こどもたちが集いやすい貴重な広場だけど、手入れが行き届かず活用できていないのが課題でした。

(作業前の森の様子。下草が生えていたり、丸太が転がっていたりするので中々入りにくい。)

 初日はお昼すぎに到着し、導入の話をしたら早速、森へ移動します。昨年度に引き続き参加の学生もいましたが、森で作業をすることが初めての学生ばかりです。まずは作業や場に慣れること、下見やアイスブレイクの目的も含めて身体を動かします。

 ノコギリを一人一本持って、広場の下草刈りからスタート。慣れない刃物を使った作業も、だんだんとコツを掴んで、黙々と進めていました。
 2日目がメインの作業日になるので、次の日に向けて作業のイメージをそれぞれが持ち帰ります。

(生い茂っていた草を刈り、地面が見えてきました)

 施設に戻り、夕食を食べた後は作業の作戦会議です。今回の作業の目的は「森でこどもたちが集える場をつくること」。目標設定やどんな段取りで進めるのかは自分たちで話し合って決めてもらいます。

 話し合いの前に私たちからは話し合いの軸やグラウンドルールだけを伝えます。学生たちがどれだけ主体的に、自分事として考えているかが大切なので、私たちから伝えすぎると受け身になってしまったり、反対に、肝が伝わっていないと話し合いの本質がズレたり作業の目的が変わってしまったりします。言葉選びや塩梅が試されます。

 人数も多かったのではじめは小グループで話し合い、その後全員で話し合うことにしました。
 大学2年生は先輩たちを前に意見を出しにくいかな?とか、4年生や院1年生は後輩に遠慮するかな?など心配もありましたが、(声や手を出すこともグッと堪えて)見守っているとだんだんと対話が活発になり、関係性もほぐれてきました。
 そして次の日の作業の段取りを決めることができました。

 また、合宿中は食事作りやお風呂焚きなど暮らしの基本は自分たちでつくります。食材は3日分の食材をカードにして、組み合わせながらメニューを考えてもらいました。ちなみにスマートフォンなどの使用は禁止の合宿なので、それぞれの経験や知恵を持ち寄りながら料理をします。

 最初の朝ごはんは男子学生だけで作ってくれました!本人たちは「大丈夫かな…」と心配していました。
 しかしある学生は「大人数の食事を自分が中心で作ったのは初めてだった。卵焼きは焦げてしまったけど、みんなから「おいしい!」と感想を言ってもらえて、失敗したことも含めて良かった」とのこと。チャレンジしたからこその発見です。

 朝ごはんを食べたら、森へ移動して朝から夕方まで作業です。まずは前日に話し合って決めた段取りを確認して作業スタート。丸太を動かす役割、下草を刈る役割、整地をする役割…、役割分担で作業を進めていきます。

 ・・・午前中の作業が終了しました。お昼ごはんも当番の学生が焚き火で作ってくれました。
 ここまでの進捗状況を確認しましたが、思い通りに進んでいない状況。少し後ろ向きな空気もありましたが、ある学生が「円陣を組もう!」と提案してくれて、作業の前にみんなで気合入れ。声に出すと場の空気がガラリと変わり、不思議と元気が出て、午後の作業がスタートです。

 階段づくりもやってみます。去年も参加した4年生が「ハンマーの使い方、身体が覚えてる!」と言いながら、3年生と協力して進めてくれました。円陣のおかげもあり、どんどん進んでいきます。

 作業が終了しました!はじめは、うっそうとしていた森も入りやすい広場になりました。入り口から歩いて作業の成果を確認します。

 こどもたちが安心して集えるように、ベンチも完成。丸太を割ってゼロから創りました。ベンチの先には切り株の舞台もあります。作業の成果を分かち合い、達成感を味わいながら森を出発しました。

 そして最終日。ふりかえりとテーマである「学ぶとは何か?」を言語化する時間です。自分や人と対話しながら、自分の中にあるものを言葉する、を繰り返します。
 暮らしの些細な出来事から発見したこと、他の人が感じていることから発見すること、学びがどんどん溢れてきます。

 最後は全体で3日間の学びをシェアします。(学生たちの学びを抜粋して紹介。)

 「印象的なのは遊び場が完成して、みんなですごいね、頑張ったよね、と言えたこと。作っている時には自分たちの所を見るので必死だったけど、同じ目標に向かって頑張ってんだと思い感動した。」

 「自分の思ったことを言ってみる。何でもチャレンジしてみることがとても大切で、自分の学びの引き出しを増やすことができるし成長できると気づいた。話し合いが好きになった」

 「人との繋がりの素敵さや積極的に動くことの大切さを学んだ。主体的な活動を支える人の大切さや、主体的に学ぶことの面白さを学べた3日間だった。人生観が大きく変わった。」

 「教員になるべきか迷っていたけど、ひとまず頑張ろうという気になった。他のメンバーの気持ちを聞いたり、学びに対する考え方や活動の学びについて考えることを行ったりする中で、自分も負けてられないなという気持ちになりました。」

 「参加する前は、人からの指示待ちか自分の考えを伝えて終わりだったけど、人の話や考えを受け止めることの大切さを感じた。何かに挑戦することが大切で、そこから感じることが学びだと思った。新しいことをやってみるのが苦手だったけど、考え方が大きく変わった。」

 学生たちの言葉で印象的だったのが「素直に感じたことを表現したらいいんだなと思った」ということです。型にはまることが全て正しいのではなく、多様なことは当たり前であること。やってみたいことはやってみたら良い、難しいことは人に頼ったら良い。それぞれが自分の新しい一面を発見し、「学ぶ」への捉え方も変化した様子でした。

 今回、参加者の年齢差はありましたが、互いにフラットな関係で実習に参加できるように中島先生が移動中から場づくりをしてくださったこともとても大きかったです。学び合いに年の差は関係ない。連携することでより学びが深まると感じました。
 そして今回は3日間とも雨予報。「雨の中の作業は学生たちの気持ちが持たないかも。」と(どちらかと言えば後ろ向きに)直前までプログラム変更を検討していました。
 しかし下見と雨対策をして安全面を確保して、最後は学生たちを信じて森での作業にチャレンジすることに決めました。結果は大成功!私自身も挑戦すること、信じることの大切さを教えてもらった合宿でした。
 将来、教育者を目指す学生たち。どこかで共に社会づくりができることが楽しみです。

(後日、広場で泰阜村の保育園生が遊んでくれました♪)

 グリーンウッドでは大学生向けに1泊~3泊の合宿受け入れを行っています。ゼミ合宿、実習、集中講義等で活用していただいています。
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