「暮らしの学び」の火は絶対に消さない ~代表:辻だいちから炎のメッセージ~

「僕自身は経験のない額の借金に連帯保証人の判を押しました。手が震えましたが押したら腹が据わりました。これは新しい方向に踏み出せという天の声なんだと」

BE-PALというアウトドア雑誌(4月号)に大きく掲載された。
小学館発行の老舗雑誌で、10万部以上発行されている。
冒頭の言葉は、その記事の中で、私が語っている言葉だ。

コロナ禍は、私たちの息の根を止める勢いだ。
1986年からこの泰阜村に根差し、「村の教育力」を自然体験活動(山村留学やキャンプ)に反映し続けてきたグリーンウッド。
昨年度、35年間で初めて夏・冬キャンプ事業「信州こども山賊キャンプ」の全面中止を余儀なくされた。
毎年1200人以上の子どもたちと400人の青年ボランティアが参加する全国屈指のキャンプ。
その中止の影響は想像以上に深刻だ。

財政規模が20億程度の小さな泰阜村において、「教育」を産業とするNPOが毎年1億を稼ぎ出してきた。
小さな山村において、総収入の8割超が自主財源で経営する、全国でも模範的なNPOとしても注目されている所以だ。

しかし2020年度、グリーンウッドの年間収入の約5割弱を生み出すキャンプ事業が失われた。
当然のことながらNPO経営は破壊的な状況が続いている。
とりわけ、泰阜村に定住した若い職員たちの雇用を守ることが筆頭課題だ。
それはそのまま、この村の持続性を守ることに直結する。
彼らの解雇はすなわち、彼らがこの村を離れることを意味するからだ。
NPO経営と地域の持続性は、表裏一体でもある。

若いスタッフの雇用を守る。
コロナ収束後に必ずや良質な教育活動を提供できる戦力を確保しておく。
そのために、人件費の極限までの削減、公的支援金の活用、徹底的な支出抑制、緊急寄付のお願い、そして多額の借入金など、様々な経営対策を打ってきた。
しかしながら、視界が晴れぬままも2021年度を迎えているというのが実情だ。

そして、私たち以上に、息の根を止められそうなのは「こどもの学び」だ。
また緊急事態宣言が出た。
目を覆いたくなるような日本政治の失態。
国民に「あきらめ」と「無関心」を学習させてしまった政治の罪は重い。
それでもこの現実から目をそらしてはいけない。
なんとしてでも「こどもの学び」を止めない。
そのためには、私たちが止まってはいけない。
この気概だけは持ち続けなければ。

今夏、信州こども山賊キャンプを再開する。
こどもの学びを止めてはいけないからだ。
感染症対策を講じると、規模が5分の1となる。
当然のことながら、経営は待ったなしで悪化の一度をたどる。
しかも三度目の緊急事態宣言が追い打ちをかける。
いったいどうしろというのか。
途方にくれる自分がいるのもまた現実だ。

「貧すれど貪せず」
いくどとなく紹介している泰阜村の“魂の言葉”だ。

昭和初期の世界恐慌。泰阜村でも村民の生活は窮乏していた。村では教員に給料を支払えず、給料を村に返上して欲しいと要望が出る。しかし当時の校長は、「お金を出すのはやぶさかではないが、目先の急場をしのぐために使うのではなく、むしろそのお金をもって将来の教育振興に役立てるべきだ」と、将来を担う子どもの情操教育のための美術品購入を村に提言した。「どんなに物がなく生活が苦しくても、心だけは清らかで温かく、豊かでありたい」という考えは、村民のほとんどから賛同を得られたという。最も厳しい時にこそ、子どもの未来にお金も気持ちも注ぐべき、という気風が、「貧すれど貪せず」という魂の言葉に載って、泰阜村に暮らす人々に今なお脈々と受け継がれている。

「貧すれど貪せず」というこの言葉は、コロナ禍の今こそ発揮される行動指針だろう。
「最も厳しい時にこそ、子どもの未来にお金も気持ちも注ぐ」
これが泰阜村の訓(おし)えだ。
苦しい現実を受け止め、学びを止めず、次の行動指針を自ら創り出す。
したたかに未来を産み出す気概が、今、求められている、試されている。

昨年度、多くの支援金・寄付金をいただいた。
泰阜村やグリーンウッドに関わる人々、暮らしの学校「だいだらぼっち」や山賊キャンプの参加者たち、そして東北や熊本など被災地のひとびとからも。
感動に打ち震えている。
多くの人に「暮らしの学び」を支えてもらっている。
本当に感謝している。
しかし、それだけではいけない。
いかに多くの人に学んでもらえるか、を追い求めなければ。
このピンチ・逆境を、これまでアクセスできなかった多くのひとびとに、「暮らしの学び」を届けるまたとないチャンスととらえよう。
まさに「自律のひとづくり」というNPOグリーンウッドのミッションに沿うものだろう。

改めて心からお願いをします。
グリーンウッドは2021年度も、緊急寄付を募っています
35年の実績・ノウハウを社会に還元すべく全国的な講演活動の挑戦も開始しました。
どうか“未来への熱意”をお寄せいただきたくお願い申し上げます。
35年の営みを、私たちが積み重ねてきた学びを、世のため人のために役立たせていただきたいと心からお願いします。

BE-PALの続きです。

「ではなにができるのか。思い当たったのがスタッフのスキルです。これまで講演や大学の講義、指導者養成などの声がかかると、比較的動きやすい立場の僕が出かけていたんですが、受けきれないお話も多かった。でも、考えてみればうちのベテランスタッフはともにノウハウを磨いてきた専門家。教育技術、イベント計画、リスクマネジメント、NPO会計、地域づくりとさまざまなプロがいます。
GW全体のスキルを可視化したうえで、スタッフをアドバイザーとして派遣する事業を始めたところです。まさに貧すれど貪せずの精神。体験教育の火は絶対に消しません」

ぜひご検討ください。
ご連絡をお待ちしています。

代表 辻だいち

※BE-PALという雑誌は、私の人生の岐路に登場する。その話はまたいずれ。