シビレル話が続く ~青森大学地域産業論その3~

シビレル話が続く。

限界集落でアマゴ(川魚)養殖に命を懸けた50年。
若い女猟師が営むジビエ加工。
「天職だよ」と断言する村のスーパー社長。
自然に対する研ぎ澄まされた感覚を持つ陶芸家。

以前紹介した「青森大学地域産業論」の続きだ。
15回の授業のうち、前半7回の授業を「参加型授業の導入」と「地域産業の見方・視点を備える」ことに位置づけた。
第8回目を、一度だけ青森本学のキャンパスに行き、対面で授業をした。
ここまではすでにこのブログで紹介した通りだ。

後半の回は、ゲストスピークを多用する。
冒頭にあげた4人は、すべて泰阜村に生きるひとびと。
青森まではなかなか呼べないが、オンラインならあっという間というか、リアルタイムでゲスト登壇となるからすごい時代だ。
みなさん大勢の人前で話すことに慣れてはいないが、オンラインなら私と二人で話をしているようなものなので、それはそれでやりやすいのかもしれない。

私の師匠:木下ご夫妻

限界集落でアマゴ(川魚)養殖を営む木下藤恒さん。
毎年、立教大学の「自然と人間の共生」という授業にゲスト登壇してもらってきた。
昨年までは東京まで行っていたが今年度はオンラインで登壇。
青森大学のオンラインも一発快諾だった。
今回は、木下さん自らが起業した養殖漁業組合の話。
鳥も通わぬと揶揄された陸の孤島。
その環境を逆手にとり、自然を資本に産業を興していく。
周囲から「絶対無理」と言われ続けても、集落の維持のために命を懸けた木下さん。
私たちグリーンウッドの奇跡と重なる。
地域産業の大先輩でもあり、私の師匠でもある。
詳しくは以下の記事へ
https://www.greenwood.or.jp/tane/7055/

女猟師:井野春香さん

女猟師登場。
これだけで訴求力がある。
彼女は若くして女猟師となり、現在はジビエ加工所を運営する。
通常なら山に捨てられる“革”にも着目し、製品に仕立て上げてもいる。
獣害という課題を、生業によって解決するといういわゆるソーシャルビジネスでもあり、学生の興味関心も高い。
とりわけ東北の学生たちは「祖父が猟師です」なんていうカミングアウトもあって、そのコメントが授業中に全学生に見える化されるものだから、ゲストと学生との双方向性というものをはるかに超えた学びが産まれている。
彼女には、同じ青森大学のフィールドワーク科目でも協力していただいた。
その話はまたいずれ紹介したい。
●もみじやサイト
https://yasuokaoniku.wixsite.com/home

シビレル話だった。高島社長

「俺が生放送で話すと、何を言い出すか危険だよ」
という、まさかの理由で録画になったスーパー社長。
村では有名な社会貢献型の建設会社。
ひとつひとつの言葉に含蓄があり、責任というか覚悟がある。
すぐ言い訳や言い逃れをする最近の政治家に聞かせたいくらいだ。
学生もそれを感じ取ったに違いない。
現在は古民家旅館も経営していて「これは天職だな」と笑顔を見せた。
●左京の宿サイト

南信州山あいの田舎 ただ聞こえるは清流のせせらぎ大正時代の民家を移築した当館で心からの安らぎを 左京の宿 ご案内 ...
録画のために質疑応答ができなかったので、グリーンウッドの女性スタッフの即興パネルディスカッション。
彼女たちのコメントを通して、スーパー社長の話を際立たせてらもらった。
感謝。

陶芸家も登壇。
泰阜村の風土に立脚した作風の大越さん。
彼は自然の恵みや地域の人びとの営みから真摯に学び続けている。
その恵みと営みを陶芸・焼き物に生かし、生業としている話をしてくれた。
大越さんは実は暮らしの学校:だいだらぼっちの創始者の一人でもある。
ひらたくいえば私の大先輩だ。
そして、今も暮らしや地域の学びを共に模索する仲間でもある。
彼は東北出身(福島会津)。
丁寧でやさしい語り口も相まって、青森大学の学生は心を揺さぶられた。
素敵すぎる生きた授業となった。
●工房草來舎サイト
https://soraisha.netlify.app/

陶芸家の大越さん

一人だけ泰阜村に住んでいないゲストを迎えた。
秋田県横手市で福祉施設を経営する金沢直樹君。
急なゲストのお願いにもかかわらず快諾いただいた。
そのキップの良さもまた、彼の授業内容をおもしろくした。
株式会社として福祉事業を経営し、地域産業に仕立てあげているその手腕に、学生たちはひきつけられた。
青森から近い秋田ということもあり、今後、学生が行動を起こすことを期待したい。
ちなみに金沢君は、NPOグリーンウッドの元職員。
●清川の里サイト
https://kiyokawanosato.com/

秋田県横手市の金沢君

14回で授業を終え、最終回は本学にかけあって公開授業にしていただき、特別講義とした。
以前のブログ記事で紹介した「19歳の環境活動家」だ。
暮らしの学校:だいだらぼっちの卒業生:露木志奈さん。
学生の反応がものすごいことになったのは言うまでもない。
●詳しくはこちらのブログ記事をご笑覧いただきたい。
https://www.greenwood.or.jp/tane/7384/

改めてこの科目「地域産業論」について。
主に本学の社会学部の2年生と、東京キャンパスの総合経営学部2年生が履修する。
本学の2年生はやはり東北出身が多い。
東京の2年生は全員留学生だ(中国、ベトナム、ウズベキスタンなど)。
首都圏出身の学生が多い大学と違って、出身地が廃れ切っている学生も多い。
「地域」や「産業」という言葉が彼らに重くのしかかるが、逆にいえばそれらの言葉が実態を伴って学生に届く。
将来を「大企業」や「大都市」とイメージしがちな彼らに、もう一度足元の価値に目を向けてもらうねらいもあった。

素敵なレポートも届いている。
以下、授業最後のリアクションペーパーに記された学生のコメントをランダムに掲載する。
お時間のあるときにでも以下、ご覧いただきたい。
音が小さい、ツールがめんどくさい、テキストが高い、という批判的なコメントももちろんある。
が、おおむねは良い評価のコメントだった。
ねらいは達成されたか!?

この授業を通して様々なことを学べた。1つ目は、人はやる気になればなんでも出来るということ。2つ目は、自然を活かして生活するということの素晴らしさ。3つ目は、自主性がとても大事だということがわかった。今まで青森大学で受けてきた授業の中で、1番タメになった授業だと思う。この貴重な経験を今後の人生に活かして行ければいいと思った。

他の講義と異なり自分の意見(匿名性であれど)を示す機会が多く、そしてそれを講師が確認し、リアクションをしてくれることで更に自分の学びにすることができてとても良い講義だったと思いました。また、私は卒論にて自分の故郷がどのようにすれば更に賑わうのか、ということをテーマに考えようと計画しているのでこの講義は非常に活用できるものでした。

今まで私の地域は田舎でなにもないと思っていたが、半年間地域産業論の講義で辻先生やゲストスピーカーの方々の様々な話を聞いていくことで、なにもないのではなくて私自身がこの地域の魅力に全く気づいていない、もしくは、自分にとっての当たり前が他の地域にとっては当たり前ではなく、その当たり前が観光資源になりうることだということに気づけたと思う。
私は将来、地元の活性化に貢献できるような職につきたいと考えているため、地域産業論の講義はとても学ぶことの多い講義だったと感じた。
半年間ありがとうございました。

この授業は毎回、身体を寄せてしまうぐらい聞き入ってしまいます。経営だから経営の勉強ではなく、このような外の世界を見ることができる授業、とても大事だなと思っています!

この授業を通して、田舎で何もないじゃ無くて自然やその地域の強みや特徴が産業につながるんだなと分かりました。また、いかにその強みや特徴を活かせるかによって市町村の存続できるかの鍵を担っていると思いました。
今日の公演も然り社長や陶芸家、ジビエの方など色々な方の貴重なお話を聞く機会を頂けたり、自分な考え方や生き方を考え直すきっかけになったのでこの授業を受けてよかったなと感じました。

辻先生との毎週の授業がとても楽しみでした。実際にお会いしたのは一度だけでしたが、毎週授業で普段なかなか関わることのできない人たちの話を聞かせてくださりとても良い機会でした。また来年授業があったら是非履修したいです。
昨年、今年度は大変お世話になりました!

スプレッドシートを使うことで他の人の意見を見ることが出来るのが良かったです。他の授業ではあまり話し合いをすることも無いため、人の意見を聞くことがありませんでしたが、この授業では他の人の意見をたくさん聞くことが出来て楽しかったです。また自分とは違う意見に触れることで視野が広がったと思います。
私の地元青森市では、雪を使って何か対策を練ったりできるが、泰阜村には自然が溢れている。地域の特性を生かし活性化することで地域住民全体に愛される村に生まれ変わる事ができることを学んだ。

ゲストを呼んだり、先生が住んでいる地域の子供たちの様子などを見ることにより、いつも同じような進め方をしないため授業に対する飽きが自分は感じなく、毎回今日はどんな内容なのか気になるので毎回楽しみでした。
この授業を受け、地元や青森市、その中でも自分の住んでいる地域に対する優しさを持てるようになれました。産業団体にはなれませんが、自分たちができることをしたいなと思いました。ありがとうございました。

最初に学生の調子を手のジェスチャーで聞いたり、スプレッドシートにコメントしたりなど他の授業ではないような進め方でとてもいいなと思いました。こうすることによって学生が参加することができるので授業の内容を楽しみながら理解していくことができたと思います。半年間村のことを多く学べてとても良かったです。この授業で学んだことをしっかり将来に活かし、学生生活や就活に取り組んでいきたいと思います。

おかげさまで先生の授業が大好きになりました。←留学生

先生の一方的な話ではなく自分達生徒にも話しかけてくれるのでとてもやりやすい環境でした。地域で産業を興すための資源は身近に存在しており、身近に存在している資源でも、最大限活用できれば地域にとって大きな産業になり、その地域の強みになることがわかった。

地域の特色を理解することや、ただなんもないからここの地域はだめだとか決めつけるのは良くないことだと思いました。自分で考えてアイディアをたくさん出すことを学びました。また他の人との意見交換などもして、他の人のアイディアを聞いて学ぶこともできたので良かったです。

この授業では、とても自分の地域に置き換えて考える機会が多かったように感じます。普段の生活ではなかった視点での見方がこの授業を通じてできるようになりました。この授業で学んだことを活かして、社会人になって、その先も充実した生活ができるように心がけていきます。本当にありがとうございました。

常にリモートであったり、LINEでのやり取りをしたりするのは地域産業論だけでありましたが、この地域産業論のスタイルは自分にとっても新鮮だったし、純粋に講義を楽しめるなと感じていました。辻先生の講義も、良い意味で堅くなく、とてもリラックスして学べ、毎回楽しく参加することができました。

一番最初に履修する時に地域産業論とは何か分からなかったが、様々な地域で生活してる人たちのお話や、体験談、どのような活動をしているのか、また、それについてお話を聞くだけでなく、私たちもそれについて、どのようにしたら良くなるのか、どのような活動が最適か、改善策など画面上でのお話で、実際に対面ではなしているわけではなかったが、常に考えさせられ、よりよい地域にするための術などを考えれるようになったり、学んでいて楽しく感じられる授業でした。辻先生も優しいお方であり、無理に考えなくてラフに考えてみよう的な意見の人であり、親近感が少し湧いていて、私も、楽しく考え、学ぶことができました。今まで学んだこと、初めて知ったこと、様々な意見を聞いたことなどを生かして、自分たちの地域も、もっとより良くできるように地域などに貢献したいと思いました。1年間、楽しく学べる授業をしてくださり、ありがとうございました。

代表 辻だいち