2月にスタッフの外部研修として、長野県軽井沢町にある「森のようちえん ぴっぴ」https://moripippi.jp/へお邪魔してきました。
ぴっぴは、園舎のない森のようちえんとして創設してから今年で20周年を迎えます。(森のようちえんについて詳しくはこちら→https://morinoyouchien.org/)
創設者であるまゆさんを始めとして、私たちグリーンウッドとは長年の仲間でもありますが、いつお目にかかってもパワフルで輝いているスタッフやこどもたちは憧れの存在です。特別にいただいたチャンス!そんなみなさんの神髄に迫っていきましょう。

冒頭で紹介しましたが、ぴっぴには園舎がありません。代わりにあるのは「ぴっぴの森」。この地面と空の間すべてがこどもの居場所です。雨が降ったらカッパを着て、極寒の中ではスキーウェアを着て、遊んで体を温めて過ごします。緊急避難用の小さな小屋が1つありがますが、あくまでバックアップです。
この日は3名お休みで、園児46名の登園でした。
通われている41家庭のうちの6家庭が4人兄弟という家族構成だそうです。少子化、核家族化の今どきに4人兄弟自体が珍しいのにその割合の高さにも驚きます。ぴっぴは保護者同士の関わりが濃く、助け合って子育てしているそうで、「子育ては、大変だけど楽しい」と思える環境をお互いに作り上げているのです。
朝の送りで顔を合わせるみなさん、確かに送ってくる大人も送られるこども達もわくわく楽しそうです。2歳児から5歳児までが緩やかに登園してきて、思い思いに遊び始めます。

朝一番、ランチ用のお湯を沸かすための火をおこしています。
焚いていた火は直火ではなく、ドラム缶の焚火台で。燃やす薪は野のものではなくよその土地のもので、地面に落ちた枝などを拾って燃やすことは誰もしていませんでした。深刻な放射能の汚染問題が続いており、こどもたちもそれをよく理解しているのだそうです。
自然に包まれたダイナミックな暮らしを感じながら、その恩恵を受け取れない苦しい現実を突きつけられています。それでも工夫して暮らすぴっぴの在り方には、今を受け止め次につなげる強さがあります。
「朝のお集まりで~す♪」と呼びかけながら2人の子が鈴をシャンシャン鳴らして回ると、自然とみんなが1カ所へ集まっていきます。

朝のお集まりです。
ぴっぴの大人スタッフは大声で指示をしたり、先回りして誘導したりすることはしません。大人は空気みたいに在ることが大切と言います。
こどもたちは毎日の中で培った役割を楽しみながら、自分たちで1日を回しているのです。毎日をくり返すことで見通す力が育っていること、その力を思う存分発揮できるような環境が作られていることが感じ取れる場面でした。
ゆったり心地よいみんなでの時間。
こどももスタッフも外来の私たちも、全員の名前を呼びながら顔を見合わせて「今日はこのメンバーで過ごすんだな」と確認した後は、ランチスタッフから金曜日恒例のぴっぴランチメニューの発表や今日の予定の確認をしました。
絵本を読んだり歌ったり、心と体をほぐした後は自由にあそぶ時間となり、それぞれが散り散りになっていきました。

ぴっぴの森は所どころにギャップがあり、明るく拓けたところがあそび場、ロープで柵をした内側の生い茂ったところが保護エリアとなっています。
間伐してギャップをつくったというよりは、こどもたちがたくさん遊んで踏みならした所が必然的に拓けた土地になったといった具合いです。敢えて立ち入らないエリアを作らないと、荒れ地になってしまうのです。自分たちの活動場所でありながら、生き物たちがともに暮らしている場所であるという感覚が育つ大切なエリア分けです。
そして必然といえるでしょう、「あれはヤマガラ。あ、シジュウカラも鳴いてるよ。」なんていう鳥博士や、キノコ博士なんかも育っていました。
さて、そんな中でこども達のあそびはどんどん展開されていきます。

木登りやロープネットで体をうまく使って遊んだ5歳児さん、それを見ていて遊び始めた2歳児さん。真似して丸太の坂を登り始めました。だけど全然足が上がりません。結局登れず悔し涙を流して、「また今度」と違うあそびに切り替えていきましたが、その後ほかの子がチャレンジしているのをみて「ぼくはここまでは行けたんだ」と説明していました。ともだちに憧れを抱く心やチャレンジ精神、自分を客観的にとらえる力、ごちゃまぜの毎日が育てる力には厚みがあります。
とあるかくれんぼの場面では、かくれている場所をほかの子が教えたことで大喧嘩になり、その場で話し合いをするということがありました。大人が仲介することもなく、自分たちで解決する姿がありました。自分たちでできるという自信を感じます。

はたまた別の場面。
あでりーが1人でみんなの様子を眺めていると、2歳児さん達が近寄って来てひと言。「大丈夫?一緒に遊ぶ?」
なるほど、1人ぼっちで困っていないか気遣ってくれているのですね。辛くて大変なことも多い野外での毎日が、支え合う心を育んでいるのだと伺えます。大人だってこどもだって分け隔てなく、「今日の新入り」は助けてあげなきゃならない相手なのです。2歳児に労わられる23歳。
まわりの様子を感じ取るだけでなく、助けるところまで行動に移すことは大人でもなかなかできることではありません。感動します。

それぞれが遊びに夢中になっているその最中に突然鳴ったホイッスル!
「火事だ~!!海賊船(場所の呼び名)へ~!!」という声でみんな一斉に走り出しました。抜き打ちの避難訓練です。発信場所から遠くて聞こえていなかったメンバーは出遅れたりしましたが、そこも伝言しながら素早くフォローして3分で全員が避難完了したのでした。仲間の命を仲間で守り合う、こども達のプライドを見ました。頼もしい。


引き続き遊んだ後は、楽しいおいしいぴっぴランチタイム。
2人のランチスタッフが、外にあるキッチンと薪のかまどを駆使してごはんとスープ、おかず、デザートを作り上げていました。かまどの火の番は、こども達が顔を真っ赤にして頑張っていました。慣れた手つきです。

とっても寒いので、湯通しして温めた器におかずをのせたごはんとスープ。順番に並んで受け取っていきます。
ここでまたぴっぴならではのシステムを見ました。「ごはんはどのくらい?おかずはいらないのね?じゃあふりかけかけますか?はいどうぞ。」こんなやりとりを、46名のこどもたち+私たち研修メンバー分していたランチスタッフ。
「食べたいものを食べたいだけ食べる。ごはんはおいしい方が楽しいでしょう。」と教えてくれました。なるほど。好き嫌いしないで食べられることは素晴らしいことですが、今の小さなうちにすべてを食べられることを目指す必要はなく、食べることを好きになることの方が必要なことなのですね。
目の前でスタッフが一生懸命作ってくれていたランチ、こども達はきれいに食べきって感謝の気持ちを伝えます。
食べ終わったらそれぞれご挨拶して、片づけてまた森へ。ずっと遊び続ける体力は底なし。近隣を含めた幼児の体幹調査で、ぴっぴのこども達の数値は群を抜いていたと聞きました。納得です。自然と体幹が鍛えられる毎日が、体力と精神力の土台にもなっています。


金曜日の午後はお掃除の時間があります。また鈴の合図で集まって来て、持ち場のお掃除を協力して行っていました。
お互いに声かけ合いながら分担して動いている大きなメンバー、濡らしたスポンジで机を拭くという単純作業をともだちと一緒にやる小さなメンバー、それぞれの発達に合わせた仕事分担も絶妙です。

最後は、クラスごとの小さな輪で1日のふりかえりをして解散です。この落ち着いて対話する時間もこどもたちの楽しみな時間になっている様子でした。丁寧に積み重ねられている日々を感じました。

20周年を迎えるぴっぴの始まりは「何もない」ところからだったそうですが、現在はキッチン小屋があったり、荷物置き場用の屋根があったり、遊具があったりと整備されていました。これらは寄付によって建てられたものや、保護者の手作業によって成されてきたものだそうです。
「ないことの豊かさを忘れないように意識している」と、まゆさんはおっしゃいます。「ない」から面白いのです。 よく整備された現状は、ぴっぴの活動が多くの人に共感され、社会に必要とされている証なのですが、そこに対するジレンマもよくわかります。敢えて「ない」を保ち続けることの難しさも感じました。
20年間紡がれてきたぴっぴらしさを全身で体感できた1日。原点をブレずに貫くぴっぴの活動は学び多く、志をともにする仲間としてもわくわくした時間でした。スタッフのみなさま、こども達には大変お世話になりました。ありがとうございました。
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普段はグリーンウッドの施設管理や経理を担当。時々小さな人と遊んだり、歳の大きな人とお茶をするのが楽しみ。人から人へ受け継がれてきた「暮らし」に育ててもらう毎日です。
