トイレもガスもスマホもない暮らしから、大学生が感じた“豊かさ”とは?|関東学院大学

長野県・泰阜村。
かつて、こんにゃく畑だった土地が40年の時を経てキャンプができるフィールドとして息を吹き返しました。
そこは村でトマト農家を営んでいる秦さんの土地。

使う前は人の手が入っていなかったため、草木が生い茂っていた

この場所を舞台に過ごしたのは関東学院大学人間共生学部の学生10名。
担当教員の二宮先生とは2014年にも大学生の合宿を共催しており、その縁で今回の開催に至りました。

森の中でトイレもガスもスマホもないキャンプを体験し、自分や仲間との対話を通して「豊かさとは何か」を考える合宿です。


寝床やトイレ、火起こしまで、すべて“自分たちの手”でつくった日々。
そこで彼らが感じた“豊かさ”とは一体何だったのでしょうか?

話し合いからすべてがはじまる

大学受け入れプログラムでは、「暮らし」を学生が主体的につくることを大切にしています。
食事づくり、片付け、時間の使い方。
この合宿では暮らしの段取りを自分たちで話し合いながら決めます。

一人一人の主体性と「伝える・きく」の意識がとても重要になることを全員で共通認識を落とし込み、はじまりました。

大学生、慣れない話し合い
1日目の夜、まず話し合ったのは「明日からのキャンプに何を持っていくか」
フィールドにはガスもトイレも屋根もありません。

鉄板、鍋、ボウル、木べら、おたま、バケツ、スコップ、ナタ…部屋一面に並ぶ道具たち。


学生たちは道具を前に自分なりに色々と考えが浮かぶものの、思っていることを伝えていいのか…周りを伺う学生たち。

「ブルーシートって何に使える…?」
「寝る時はいるよね…雨降ったら屋根も必要かな?」


食材もいつ、何を食べるかを決めます。

普段料理をしていない学生も多いのでかなり不安げです。

「明日の朝ごはんは豚汁とか?豚肉、にんじん、玉ねぎあるし」「豚汁って結構難しいよね…できるかな…」

慣れない話し合いで中々時間はかかりましたが、それぞれ周りの様子を伺いながらコミュニケーションをとって何とか終えました。

 

自分たちでゼロからつくるキャンプ

2日目朝フィールドに到着。


目を閉じて、耳を澄ますと、鳥の声、川の流れる音、風が草木を揺らす音、虫が落ち葉を動かす音…
自然の中にお邪魔させてもらっていることを感じます。

そして、何もないところに自分たちの手で「暮らす場所」をつくります。

火をたく場所をつくるために、火がつきやすい落ち葉やつるをかき集めたり、

石を集めてかまどをつくったり、

階段をつくるためにノコギリで杭にする木を切ったり、

夢中でつくってすてきな階段ができた。とっても愛着が湧く。

トイレの穴を深く深く掘ったり、

昼食づくりのために火起こしもはじめます。

マッチは使わず、もみ切り式で。

ひとりが板をしっかりおさえて、ひとりは火きり棒をまわす。
休まずに摩擦させるため、疲れてきたら声をかけあって交代。
ついに火種から炎がついた!

”消えないで…!″

けれど、かまどの薪に移したら火が消えてしまいました。

薪の組み方を反省。さて、また一からやり直し…
それでも「もう一回やろう!」と前向きな学生たち。
大変だけど楽しい。顔つきも真剣です。
何度もやるうちに手応えも出てきます。手つきも初めよりいい力加減。

ついに…炎がつきました!

かまどの薪に移して小さな炎をだいじに育てたら…やっと昼食づくりもはじまります。

ほうれん草とお肉を炒めます。

ほうれん草6束分。炒めても炒めても炒め終わりません。
ここで小さめのフライパンを1つしか持ってこなかったことがどういうことかを実感。
これもやってみて分かること。みんなで一緒に「あちゃー」と後悔します。
でもあるもので何とかするしかない。

ごはんづくりに時間がかかりそうなので、夜のために薪拾いへ…

長い夜を超えるために、今のうちにたくさん拾う。

火おこしや炒めるのにかなり時間がかかり、何と昼ごはんを食べたのは…夕方4時!
(ボリュームたっぷりにして夜ごはんも合同になりました(笑))

でも苦労した分とっても美味しく感じて、そのうれしさを分かち合いました。

そして、食器を洗うための水を川に汲みに行きます。

草の根っこで洗えると聞いた学生がさっそく生えている草の根っこでチャレンジ。
すると鍋のすすがみるみる落ちていく…
「え!スポンジも洗剤もなくても全然いけるじゃん!」と学生も感動。

夜は焚き火を囲みながら、今日1日森で暮らしてみて、感じたことをシェア。
そして野宿。心地よい疲れを感じながら眠りにつきました。

夜が明けて、朝になると早速朝ごはんづくり。

ごはんづくり中のチームワークが驚くほどにレベルアップしていました。
終盤には「今日はあったかいうちに食べられるようにしよう!」との声が。
そのために、調理している人もお皿の準備する人も細かいコミュニケーションをとりあって、昨日夕方に昼ごはんを食べたのが噓のようにスムーズです。

朝ごはんのあとは特に予定を決めていない自由な時間。
フィールドの外にお散歩に出かけました。

しばらく歩いて着いたのは今回のフィールドを貸してくださった秦さんのお宅。
お父さんとお母さんが迎えてくれ、
「天然のさくらんぼがなってるから採っていきなんよ」とのこと。

学生たちのために黙々と枝を切ってさくらんぼを取ってくださったお父さん。
「来年もさくらんぼがなるから、それを目当てにおいなんよ」ととびきりの笑顔でお話するお母さん。

最後に今回キャンプをしたフィールドのことも話してくれました。

「昔はあそこで田んぼもやったし、こんにゃくもつくっとったよ。こんにゃくをやっとったのは40代の頃だな。家から少し遠いから40年くらい使ってなかったよ」

フィールドを借していただいているとは聞いていたけど、そこには秦さんのこれまでの人生が重なっていることを実感する学生たち。
美味しいさくらんぼと秦さんご夫婦の優しさに心が沁みる時間でした。

そしてお散歩から帰ると2日間過ごしたフィールドともお別れです。工夫してつくったトイレもかまどもきれいに片づけました。
自分たちの手でつくったからこそ、愛着が湧いて後を去るのが少し寂しく感じる学生たちでした。

私(なるこ)自身、大学生の受け入れを担当するのは初めてのことでした。
この4日間、学生たちの姿を目の当たりにして、
「泰阜村の自然や人の暮らしに出会って、こんなにも学生たちの価値観を揺り動かすのか」と心から感激しました。
そして、グリーンウッドがやってきた泰阜村の「暮らしから学ぶ」ことの可能性を実感して、胸が熱くなりました。この確かな手応えをこれからグリーンウッドでつくる学びの場に繋げていきます。

 

写真提供:関東学院大学共生デザイン学科(※一部はグリーンウッド)


 グリーンウッドでは大学生向けに1泊~3泊の合宿受け入れを行っています。ゼミ合宿、実習、集中講義等で活用していただいています。
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