日常的に、山村留学や学童の現場を持ち、こどもと年間通じて関わる私たち。夏キャンプが目前ということもあり、キャンプ前に隔年でスタッフの内部研修として救急救命法=メディックファースト・エイド(R)(以下、MFA)の講習を行っています。今回は小児救命救急法のインストラクターのスタッフみけ(村上)が講師として、講習を行ってくれました。資格を持つスタッフは、例年保育園や学校のPTAに呼ばれ講習に赴いたり、夏キャンプ前に希望するボランティアに向けて講習を行っています。一時はコロナ禍で活動の性質上下火になりましたが、それでも必要性を感じてくださっている方々は少なくないと感じます。今回は全年齢を対象とした心肺蘇生法とAEDの使用に特化したプログラムの講習だったため、従来の大人だけでなく、小児・乳児も含めた内容の救急救命法を行いました。主に小中学生を活動の対象とする私たちには欠かせない内容となります。
最初に基礎的な内容の確認です。ゴム手袋(バリアの1つ)は他者との接触時に自分を守る有効的な道具の1つです。私たちの最も身近な道具で、血液の付着以外にも、感染症を持つ病人との接触時や嘔吐物や排泄物などの処理時に利用します。また、自分が気付いていない自分からの感染を防ぐことの両方の意味合いがあります。こどもを相手にしていると嘔吐物や排泄物処理などは割と頻度として高いのですが、こうした時に適切な処理を行わないと、あっという間に集団感染を引き起こします。そうしたことが起こらないよう、感染源になりうるゴム手袋を適切に処理するために、感染を広げないゴム手袋の着脱方法は必須技能です。
次に「回復体位」を確認します。意識はないけど呼吸がある対象者に有効な方法で、舌や嘔吐物などで気道を圧迫することなく経過観察ができます。何度も講習を受けている私ですが、呼吸や心肺が停止した状態に遭遇したことがないので、緊急行動計画を実行するまでの判断ができるか不安な部分がありました。だからこそ、こうして健常者の呼吸や心肺の状態確認をする練習が重要です。
そして、いよいよ心肺停止し、呼吸が止まっている時を想定して、緊急行動計画が開始されます。ここではマネキンを練習台に、電話連絡に至る手順や胸部圧迫の方法、レスキュー呼吸の方法を練習します。また、AEDの使用方法なども確認します。実際、大人のマネキンに行うと圧迫するのに力が必要で、だいぶ疲れます。実際の現場で行うとなったら、救急車が到着するまで行うこととなります。だからこそ、交代でできるように多くのスタッフが技能を身につけておくことが必要なのです。
一方で、乳児などは小さいからこその難しさもあります。小児や乳児に特化した救命救急のプログラムはまだ少なく、MFAはいち早く導入した経緯があります。こどもは大人の小さい版ではなく、小児・乳児ならではの特性と、その特性に則した圧迫の仕方やレスキュー呼吸の方法などがあるので専用のプログラムが必要なのです。小児や乳児の多くは、外的要因による心肺停止が多いので(物が詰まったり溺れたりする事による窒息など)、いかに予防するかが重要ということでした。実際今3歳児と1歳児を育てている身としては、大きかったご飯の具が喉に詰まって咳き込んでいたり、気がついたらマグネットを舐めていた!なんてことがあったりします。赤ちゃんは500円玉は飲み込める一方で、気道はいくら1粒で詰まることもあるそうです。予防の重要性が身に染みてわかるとともに、小さい子がいる私やバズ(矢加部)は、マネキンに我が子が重なり、つい無意識に力が入ってしまいます。
合わせて、チョーキング(喉詰まり)の解除方法も学びました。心肺停止に陥る前に、まずは環境の予防、次に陥った時しっかり取り除くことに努めることが大切です。
他にもここでは書ききれないほどの内容を、半日かけてみっちり学びました。今は受講したばかりなこともあり、緊急事態に遭遇しても動ける気がします。ただ、そうした状況が起きないように、一番大事なのはこどもの行動特性を理解し予防に努めること、つまりリスクをコントロールすることです。そこには、環境整備やスキルを身に着ける他にも、こどもにリスクを伝えるためのセーフティトークなどを通して、運営側だけでなく参加者と一緒にリスクを下げていく工夫をすることも含まれます。そして、緊急時に陥った際にきちんと行動できるように備えることが次にやるべきことだと思います。私は受講時に毎回配布される、簡易なファーストエイドキットは自家用車に備えています。「誰かわからない」「状況がよくわからない」から関わらない事は簡単です。でも、まずは困っている人がいたら力になれる状況や心構えを日頃から作っておきたいものです。

地域での子育てに関心を持ち、2014年に新卒でグリーンウッドに就職。大学時代、間伐ボランティアをやっていたことから、現在は泰阜村の森林を生かした活動に関心がある。また妊娠・出産を経て、子育てに奮闘中。2児の母。