2021教師指導者育成プロジェクト~モアイ3月の研修報告~

NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のモアイ(森 大樹さん)の3月のプロジェクト研修報告です。

一年のふりかえり

 3月に入り、この一年学んだことを整理しようと思った。まず、前半の4月〜9月で私に大きい影響を与えたのは次の2つだ。1つは、自宅裏の森の間伐作業。春はサクラがきれいなのだが樹勢が落ちるので、枝打ちをした。夏はジメジメしていて、蚊が多いため間伐して地面に光を当てた。間伐材は斜面と並行において土砂が流れにくいようにした。秋は、紅葉がきれいなので、カエデに光が当たるよう周りを間伐した。裏山の四季と、間伐による影響とを考え、手入れを続けた。その過程の中で、自分が持っている知識がただの知識ではなくて実際に使える技術になっていたことを実感した。森林は温度・降水量・地形など、考えれば考えるほど答えのない奥が深いことに面白さを感じた。

 2つ目は、山賊キャンプでの出来事だ。キャンプが始まり2日目までホームシックで孤立している男の子がいた。どう声をかけたらいいのか対応に戸惑ったが、その心配を打ち消す出来事が起きた。何もしようとしなかった男の子を気分転換に川に連れて行くと、笑顔で川遊びをしていたのだ。その時に、言葉では説明できない自然の中で遊ぶことの魅力を感じた。この出来事がきっかけで、普段の放課後児童クラブでも、自然の中で遊べる場所をつくりたいと思った。

後半の10月~2月は、児童クラブ近くにある森の地主に許可をいただき自然の中での遊び場づくりに奮闘した。まず間伐作業。村のこどもたちがどういう場所だったら、

ワクワクして遊ぶことができるのかを想像しながら作業を行った。ある程度間伐して、こどもたちと入ってみると、動物のように楽しそうに斜面を垂直に行き来する、楽しそうな姿を見て、自然の中で遊ぶことの面白さを感じたと思う。一方で、土砂が流れるという課題が生まれた。改善策を考えこどもたちと斜面の道をジグザグにする作業を行ったが、ジグザクにしても斜面と並行になりきれてないところは土砂が流れる。学童チームやギックと相談して階段をつくるとある程度緩和された。作業を始めると、次から次へと課題が出てきてどうすれば解決するのかを考え行動する繰り返しだった。そのため、日常のほとんどの時間を森の中で過ごし、作業に没頭した。その中で、鳥の鳴き声や、木が倒れるときのバキバキという音、野宿したときの朝日の暖かさなど、自然の中だからこそ感じる感覚がスッと自分の中に入ってきたように感じた。その時、自然をさらに面白いと思うようになり、森を大切にしようと思うようになった。

 普段の学童の時間は、こどもたちと間伐作業を行った。こどもたちと、どうやってワクワクして遊ぶかを話し合い、フジヅルのターザンを作ったり、森で獲れたむかご・あけびを食べることにもチャレンジした。こどもたちと一番力を入れたことは、秘密基地づくりだ。自然のツルを使って、田んぼの藁を使い作った。秘密基地を作っている時に「ここでキャンプしたい」という声がこどもから上がり計画を立てて実際に行った。初めは自分だけだったが、どんどんこどもたちを巻き込むことができた。おそらくこどもたちも自然の中で遊ぶ魅力を感じ、森が自分事になっていったのだ。自然を通して得られたこの学びを大切にしようと思った。これが一年を通してだから得られた学びだ。

 来年度、地元に戻って高校で働く。自分自身がこれまで勉強してきた生物学と、泰阜の暮らしでの実体験を織り交ぜてワクワクする授業をつくりたい。また、地元の山の間伐作業をお手伝いして、自分のため、人のためにも自然の中で活動することを継続していきたい。 

担当者より

一年間、ワクワク・ドキドキすることを貪欲に追いかけ続けたモアイ。気づくといつも畑や、山の中で作業をしていました。その受け身ではなく、自分から動く姿勢に感化されてこどもたちも一緒になってチャレンジをしていました。泰阜の自然から得た学びと、自分で動くことで得られた学び。ここで得た学びをどう自分の故郷に戻った時に発揮するのか楽しみです。