2021教師指導者育成プロジェクト~なるこ3月の研修報告~

NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の3月のプロジェクト研修報告です。

一年間を振り返って

私にとって、この1年は自分の人生の向かう方向を変えるために決意して選んだものでした。その背景には、多くのものに支えられている自分の暮らしに違和感を感じ、自分の手で生きていく術を身につけたい、生きる面白さや豊かさを伝えられる人になりたいという想いがありました。そして、1年を終えてその選択は間違っていなかったと確信しています。この1年は、ひとりの人としての自分自身が試される日々でした。その日々の中で3つの学びがありました。

1つ目は、だいだらぼっちの仲間は家族であること。2学期に1人のこどもが自分を見つめ直さなければならない出来事があり、それぞれの相談員がどれだけの想いを懸けてだいだらぼっちにいるのかを知る機会がありました。「自分の子が間違ったことをしたら、親は必死になって謝るよ」、「自分のこどもが泣いていたらただただそばにいたよ」という先輩の相談員の言葉は、今でもよく覚えています。こどもたちにとって親の代わりだということを、常に胸に刻み、関わり続けてきた強い覚悟を見ました。この関わりを目の当たりにした時、私は初めてだいだらぼっちがひとつの「家族」であるということが腑に落ちました。嫌なことがあった日も嬉しい気分の日も、こどもたちにとって帰る場所はだいだらぼっちであるからこそ、安心できる場所をつくろうと思いました。こどもたちが仲間との衝突や全く異なる価値観との出会いを通して、それぞれ変化する部分がありながらも、「自分は自分のままでいいんだ」と安心してここにいてほしいと強く感じるようになりました。

2つ目は誰しもに場をつくる責任があることです。こどもが勇気を出して心の中に秘めていた想いを伝える姿、今の自分から変わろうとする姿、相談員が人生をかけてこどもに大切にしていることを伝えようとする姿。それらを目の当たりにした時、私が自分なりの責任を持ってこの暮らしに関われていなかったことを痛感しました。それまでは、自分のやるべきことをこなして、こどもたちとやりたいことを楽しんで、言いにくいところは見逃して、日々暮らしていました。今振り返ると、無意識にも根底にその場を作る責任から逃れようとする気持ちがあったのだと思います。しかし、だいだらぼっちの場はこどもも大人もここに関わる人全員で作っているものです。場を変えていくためには、自分の関わりが場全体に影響を与えていることを自覚し、ひとりひとりがその人なりの責任感を持って関わることが何よりも大事だと知りました。

 3つ目は「大人だから」ではないことです。日々こどもに自分の考えを伝えることを意識してきました。その中で、自分の価値観で確信をもってこどもたちに伝えられるものがあることにも気づきました。それは「人を傷つけることをしてはいけない」ということです。人を傷つける言葉を口にした時は間違っていることを伝えること、話を聞くことを心に留めて実践してきました。

 そんな中で、あるこどもが私に対して馬鹿にするような言葉をかけたことがありました。すると、その言葉を目の前で聞いていた他のこどもが「それを言うのは間違っている」とはっきりと伝えてくれました。私にとってこの言葉は、こどもたちと一緒にこの場をつくっているということを実感するものでした。間違ったことをした時に間違っていると伝えるのは私が大人だからではなく、こどもたちと一緒にこの場をつくるひとりだからこそ、伝えなくてはいけないということを教えてもらいました。

来年度からはグリーンウッドの職員になります。この一年で学んだことを生かして、自分にできることに取り組んでいきます。多くの学びと出会いに溢れた1年間、本当にありがとうございました。

担当者より

なるこのふりかえりを聞いていると、一年間を過ごす中で「相談員とは何なのか」を必死に考えて、多くの葛藤や苦悩があったと思います。その暮らしでなるこが見つけた3つの学びは、一年をただ身を委ねるわけではなく、自分で考えて掴み取ったからこそ学べた貴重な財産です。2022年度は職員になるなるこ。この一年で得た学びを存分に生かして活躍してください!