NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の2月のプロジェクト研修報告です。
―2月を振り返ってー
2月を過ごす上で「こどもとやりたいことを最初から最後まで一緒にやる」を目標のひとつとしまし
た。これまでだいだらぼっちでの暮らしを通してこどもたちが安心していられる場所を一緒に作っていきたいと考える中で、一から丁寧にやりたいことを実現する過程を共にすることでこどもと共有できる想いや経験を増やしたいと考えたからです。
そのひとつが登り窯の初めの点火をする火入れ隊でした。火入れ隊のメンバーは火おこしをやったこ
とのないこどもと私の3人でした。火入れ式で登り窯に向かうみんなの心をひとつにするために、「自分たちの手でゼロから火をおこしたい!」と話し合い、原始的な方法で火おこしをすることに決めました。決めたのはいいものの、経験のない私には教えられることはなく、こどもたちと「やり方も必要なものも全くわからない!」という状況からスタートしました。本で調べたり、経験者に聞いたりして、教わった通りに火おこしの練習をやってみてもすぐにヘトヘトになり、一向に煙も出ず、火がつくイメージも湧きませんでした。
「自分たちの力だけでは火が付かない!」と身をもって実感した私たちは、みんなの力を借りることにしました。火おこし経験者のこどもに助けを求め、的確なアドバイスで引っ張ってもらいながら火おこしをしていると、だんだんと煙が立ち、ついに火がつきました。初めて自分たちの手で火がついたことに感激した私たちは、抱き合ってその喜びと達成感を分かち合いました。そこから当日までも、火入れ隊だけでなく他のこどもたちも何人か一緒に練習を重ね、当日は全員が参加して無事に火をつけることができました。
今回の火おこしは私もこどもも「分からない!」という同じところからスタートし、一緒に考えて失敗したからこそ得た気づきがあり、遠回りしたからこそ喜びも大きくなりました。最初から最後まで一緒にやったことで、こどもたちと一緒に困ったり、考えたり、喜んだり、ひとつひとつの段階を共有することができました。
今の私はこどもたちがやりたいことを実現させようとする時、自分自身も「分からない」ことばかりです。自分が知っていることはゴールへの近道を簡単に教えてあげることができます。しかし、今回の火入れ隊の経験を通して、自分も「分からない」からこそこどもたちと同じところで一緒に遠回りができ、同じ目線を知ることができるチャンスでもあると気づきました。
ある日こどもと風呂焚きをしている時に「話し合いをしなくて済む」とつぶやいたことがありました。そこから普段の自分たちがやっている話し合いについて少し話をしましたが、中々話を深めることはできず、あとから振り返り、もっとその子が考えるきっかけになるような対話をできたらよかったと考えていました。
今月の振り返りでみけにそのことを話すと、みけは「私の前では怒られるからこどもはそういう言葉をこぼさないよ」と言いました。同じ相談員であってもこどもが見せる顔は全然違うということに気づきました。私だからこそ、こどもが気を張らずに自然に湧く気持ちや言葉を表に出しているなら、私はそのサインをキャッチして、こどもたちの取り繕うことのない「今」を知っていくことができると感じました。
今の私は経験が浅く、知らないことばかりです。でも、今まで弱みに見えていたそれこそ、今の私の強みであるということを知った2月でした。
担当者より
今月なるこが立てた目標は、図らずも今のなるこの強みを教えてくれるものとなりました。経験豊富な人から教えられることも、こどもたちにとっては新しい価値観との出会いとなる素晴らしいことですが、自分たちと一緒に悩みながら進んでくれる人の存在は、それとは違う安心をもたらしてくれます。教えるのではなく、ゼロから一緒に歩むことができる物事は、自分が成長すればするほど減っていきます。今しかないその強みを存分に発揮して、残る一か月の時間を、なるこにしか見せないこどもたちの素直な気持ちに寄り添いながら、たくさんのことに一緒にチャレンジしていってほしいです。

こどもと大人が力と智恵を出し合って暮らしをまわしていることに魅力を感じ、グリーンウッドに参画して35年目。今もだいだらぼっちのこどもたちや地域のこどもたちと日々奮闘中!寄る年波には勝てないので一緒に走り回ることはできないが、こどもたちと一緒にあちこち歩き回ったりキャンプしたりするのはできる。今のお気に入りは野宿して夜空を眺めることと、帰ってきたOB・OGと一緒にお酒を飲むこと!。