2021教師指導者育成プロジェクト~モアイ 12月の研修報告~

NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のモアイ(森 大樹さん)の12月のプロジェクト研修報告です。

 今月の目標は11月の振り返りから「学童のこどもたちと長い時間森に入る必然をつくる」とし、具体的なアクションを「秘密基地づくり」とした。工程は大きく分けて3つ。全工程で意識したことは「こどもたちがドキドキワクワクしているか」と「消費的な遊びになっていないか」の2点。この2点は先月のアクション「とにかく森に入る」を実践し感じた“森の面白さ”と“その森を大切にしたい”という感覚をこどもたちと共有することが、自然豊かな泰阜村の魅力を知ることであり、ものや命の大切さを学ぶことに繋がると思ったため定めた。今回の振り返りは各工程での学びに焦点を当てて行う。    

 

 工程の1つ目は「木を倒して枝を切る」こと。秘密基地の骨組みに当たる柱の材を採取した。こどもたちの前でネムノキを倒しながら、森が持続するために必要なことを理解してもらうため「この木はなんの木か?」「なぜネムノキを選んだのか?」「斜面で木を倒すメリットとデメリットは?」などの問いを投げかけた。ネムノキを選んだ理由は、珍しい木ではないこと。そして、早く大きくなり森に入る光を独占しやすいということ。斜面で木を倒すメリットは地面に当たる光が多くなり、地面の中にいた種子が芽吹き土砂の流出を防ぐこと。デメリットは雨が直接当たるようになり土砂が流れやすくなること。それらを考慮して「倒した木のどこまでを秘密基地に使い、どこまでを土留として使うのか?」をこどもたちと考えた。

 問いの内容が小学生にしては少し難しいことが懸念事項としてあった。しかし、こどもたちは自分の背丈より何倍もある木が倒れる様子、そのときの振動やバキバキという音から「木を倒すということ」を感じ、投げられた問いをしっかり考えていた。またノコギリを使った枝打ちでは手にまめができるまで黙々と作業を行うこどももいた。こどもがハマれる作業を準備できた点は良かったと思う。

 

 工程の2つ目は「ツルを採取し立てかけた木を固定する」こと。柱の材料である採取した木材を固定するために、森の中にあるツルを選んだ。ツルは木を締め弱らせたり光を奪ったりするため積極的に除去するという考えが一般的である。一方、斜面の森は光が満遍なくあたり多様な種のツルが生息することが特徴でもある。この森でのツルに対する考え方は「どのツルを残し・除去するのか」がはっきりしていなかったため、この工程は主に自分で時間をかけ考えながら行った。
 フジヅルなど主要なツルしか判別できない等勉強不足ではあったが、採取した様々な種のツルを使う中で「変幻自在に変化し強度も強いツルは森の宝である」という、ツルに対する自分なりの考え方を持てるようになった。この経験は今後この森の設計を考える上で大切になってくると思う。

 

 工程の3つ目は「ワラを森に運びツルにかける」こと。秘密基地の屋根であり、壁となる部分である。この工程の良かった点は作業が単純なため、より多くのこどもを巻き込むことができたこと。小学1年生から5年生までのこどもたちが手を貸し合い、何が危ないか声をかけながら作業を行った。
 反省点は、今回使用したワラはだいだらぼっちで育てた稲ワラであり、鶏小屋・柚薬・ワラ細工等で利用する生活の一部であることを学童のこどもたちに伝えなかったこと。自分がワラを貰える段取りを取るのではなく、ワラが生活の一部であることを伝えた上で、こどもたちが段取りをとるという流れを踏めたならば、より「消費的な遊びになっていないか」を意識できた工程になったのではないか。 

 学童の時間ほぼ毎日森で遊んでいる中で「秘密基地で寝てみたい」「ここでキャンプをしてみたい」という声が挙がり2月末にここでのキャンプする計画をこどもたちと考えている。この計画を「こどもたち主体」「やりたいを広げる」「キャンプを通して保護者にグリーンウッドの活動を理解してもらう」の3つを意識しながら準備することを1月の目標の1つとする。

担当者より

私がモアイの森の活動で凄いと感じているのは、こどもたち自身が積極的に森へ行こうとしていることと、楽しそうな声がいつも聞こえることです。これは、持続的な活動になるようモアイが大切にしていることを伝えるだけでなく、ドキドキワクワクできるようにと常に考えているからだと思います。

2月末のキャンプの計画は、こどもたちが森をより身近に感じられるチャンスだと思います。こどもたちの「やりたい」を応援しつつ、リスクマネジメントや、モアイの考える消費的な活動に注意しながら、こどもも保護者もモアイ自身もやって良かった、応援してよかったと思えるキャンプにしてほしいと思います。