山賊キャンプの経験を言語化する

山賊キャンプにはこどもたちの安全を守り暮らしをサポートする役割として200名近いボランティアが参加してくれています。そんな彼らも山賊キャンプでの、日の出と共に起き日が暮れたら眠り、時計もスマホもなく、ただただ暮らすことに向き合い、野山で遊ぶ数日間はこども以上に価値観をひっくり返される強烈な体験となっています。

また参加しているこどもたちが日を追うごとにどんどんと積極的になったり、当初は自分勝手な行動をとっていた子がやがて周りのこどもと協力したりする姿を見て、こどもの可能性や成長にも驚かされたりもします。

感動や驚きは学びの種です。しかし強烈であればあるほど、当たり前の日常で活かすことが難しかったり、あるいは日々に押し流されて向き合う時間が取れないこともあります。

そこで山賊キャンプが全て終わった9月に講座を開き、キャンプでの経験を学びに変えるためのワークショップを行っています。

今回は9名の方が参加してくれました。

まずは自己紹介とキャンプで起きたことを聞き合うワークからスタートします。
キャンプでの体験を学びへと変換するためには、漠然とした「想い出」を「事実」として取り出す必要があります。二人一組で片方が聞き役となり「何があったのか?」を問いかけることで、記憶の底にあった出来事を思い出していきます。

次に今回のメインテーマである「こどもの学びと成長を促進する相談員とは何か?」を考えます。
まずはキャンプ中に起きた出来事から、印象的だったこと、悩んだこと、こどもが変化したことなど、フセンに書き出します。数をたくさん出すという行為が大切です。さっと思い出すものよりも、やっと思い出した、記憶の底にへばりついていたものに気づきがあることもしばしばあります。

 

書き出し終わったらいよいよ「相談員の定義」と「目指す相談員になるためのアクション3つ」を考えます。限定した問い(今回で言えば3つのアクションにするなど)は、あいまいになりやすい答えの解像度を上げるために必要なものです。
また「こどもの学びと成長を促進する」という言葉だけから答えを出そうとすると、キャンプ以外の経験や知識から考えてしまい、どこかお仕着せだったり、聞いたことのあるものだったり、正しいけど腑に落ちないものになってしまいます。
大事なのは事実から答えを出し、自分の言葉にすることです。

予定時間を過ぎてもなかなかまとまらない参加者たち。
「正解はないので、今出せる最も自分たちの考えに近い答えを出してください。」と伝え、20分ほど延長していよいよ発表です。

 

もちろん目的とするゴール(「こどもの学びと成長を促進する相談員とは何か?」)は同じなので、3チームとも言いたい事の共通点はあります。大切なのは「言葉」にする過程で、「ああそうか!」とそれぞれが腑に落ちる体験なのです。今回の問いに「正解」はありません。もちろん私や団体としての求めるものはありますが、それを伝えたところで本人たちが理解できなければ、行動につながらないただの言葉でしかありません。

疑問に感じる。感動する。もやもやする。…
心に引っかかる出来事を受け流さずに、手につかんで取り出して直視する。「なぜ私は疑問(あるいは感動、もやもや)に感じたのか?」を考え、答えを出すことが、自分を知り、自分を成長させるものなのです。

今回出した答えをもとに、ぜひ次も山賊キャンプに戻ってきてくれることを願っています。