2021教師指導者育成プロジェクト~なるこ 11月の研修報告~

 NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の11月のプロジェクト研修報告です。

 11月は、自分のだいだらぼっちという場への向き合い方が変わる転機があった月となりました。大きな学びのひとつは、こどもたちと共に前向きな場を作っていくために、いかに仲間同士で話し合うことが大切であるかということです。

 仲間同士が分かり合えない時に大事なことは、全員が集まり、仲間の想い、葛藤、苦しみ、希望を知ることだと感じています。自分がいなくとも話は進んでいくと思っている人がいたり、本音を言わずに上辺だけの話し合いをしていては、状況は変わっていきません。そして、自分を変えていかなければ相手も変わりません。自分の頭で考えて、心で感じようとして、浮かび上がった想いや考えを勇気を出して伝えることで、ひとりのその想いが仲間の誰かに響く。そんな風にして人は変わっていくのだと思います。

 仲間との気持ちのすれ違いがいくつかあり、仲間のあり方や暮らし方について考え直そうと、大人もこどももみんなが輪になってお互いの気持ちを聞き合う時間を持ったことがありました。こどもたちは自分たちなりに考え、ほかの人に対する不満や応援したい気持ち、まわりの人達のために自分の行動を変えたいという決意などを話してくれました。その言葉はどれもスラスラと出てきたわけではなく、本気で伝えようとする分、勇気を出して選んだものでした。その言葉に真剣に耳を傾けるまわりの姿。内心に秘めた想いを伝えるという勇気を相手が受け取る時に、信頼関係は確かに積み上げられていくのだということを身をもって感じる瞬間でした。そして私自身、心から変わろうとしているそのこどもの姿に、今背中を押されています。

 さらに、その話し合いでのギックの言葉を通して、これまでお世話になってきている泰阜村のみなさんをどれだけ大切に思い、感謝しているのかということや、この35年間こどもたちと相談員が一丸となって、命がけで「こどもが生き生きと暮らせる場所」を作ってきたのだということを知りました。これまでの人生の全てを賭けて私たちに想いを伝えてくれたギックの姿は、生き様そのものであるように私には感じられました。

 だいだらぼっちを必死に支え続けてきた相談員たちの強い覚悟や深い想いを目の当たりにした時、私が自分なりの責任を持ってこの暮らしに関われていなかったことを痛感しました。これまで自分のやるべきことをこなして、こどもとやりたいことをやって日々暮らしていました。今振り返ると、いつでも根底に「自分は育プロだから」とその場を作る責任から逃れようとする気持ちがあったように思います。しかし、この場はこどもも大人も立場も関係なく関わる全ての人が作っているものです。自分の関わりが場全体に影響を与えていることを自覚し、ひとりひとりが責任感を持って関わらなければ、この場は変わっていけないのだということを強く思いました。

 そして、ひとりひとりが変わろうとする想いが仲間の関係性や場の在り方を変えていくために大切だということを、こどもたちに伝えていくことが私のこれからのチャレンジです。そのために毎日の連絡(家族会議)や話し合い、また日々の関わりの中で伝えたいと思ったことを、臆せずに言葉にしていこうと心に決めました。自分の想いを伝えることや今までの行動を変えることはすごく勇気がいるけれど、仲間と暮らすこの場を前向きに変えようとしているこどもたちがそばにいると思うと心強いです。

〈11月研修担当なおみちの振り返り〉

 この8ヶ月間挑み続けてきた関わること。些細に見える会話にもグッと勇気が必要だったなるこは、無意識に「気の合う仲良し」を目指していたのかもしれません。だから喧嘩や意見の相違が怖かったのではないでしょうか。しかし、日々葛藤し、話し合いを重ねたことで、仲良しに見える関係と信頼し合う関係が本質的に違うものだと気づきました。関わるということの意味が、一気に腑に落ちたのです。仲間を思い、分かり合うために惜しまず関わるホンモノの思いやり。そんな自分を鼓舞するように行動も変化しています。本当の想いを伝えようとする勇気、相手の声を聞こうとするその姿勢は誰かを励まし、なるこ自身を励ますでしょう。これは、なるこが諦めずに歩き続けてきたからこそもらえた贈り物です。なるこの人生を作る芯となっていくように思います。華奢に見えていた背中が何だか逞しくなってきました。