その瞬間、君は山賊になる ~オキテ6 あいさつをする~

どこまで感染は拡大するのか。
こどもが遊ぶ季節に必ず増える。
子どもの子どもらしさが、世界から失われていくことを危惧する。
こんな状況でも、山賊キャンプの開催を信じたい。

大人気の「信州こども山賊キャンプ」。
その人気のヒミツに迫る連載企画、第6回。
今回は、「オキテその6 あいさつをする」

その六 あいさつをする

山賊の仲間づくりはあいさつから始まる。
初めて出会った仲間に、勇気を出して声をかけよう。
村の人に出会ったら、元気よくあいさつしよう。
その瞬間、君は山賊になる。

「こんにちは」
私が大きな声をあげて、山賊キャンプに参加したこどもに挨拶した。
「・・・」
どうやら、びっくりさせてしまったようだ。
「こんにちは」
私はめげずに子どもたちをサポートする青年ボランティアリーダーに向かって挨拶した。
「・・・」
なるほど。
最近のこどもは、と思っていたのだがどうやら違うようだ。
まわりの大人があいさつできないのだから、こどもたちもあいさつするはずがない。
あいさつはコミュニケーションの基本中の基本だ。
青年ボランティアリーダーは事前に研修会に参加することを義務付けている。
研修会の中では、あいさつの基本を楽しい形で教えている。
今や、他人に向かってあいさつすることがチャレンジとなってしまった青年も多い。

しかし、泰阜村ではあいさつが当たり前だ。
狭く曲がりくねった道路。対向車が来ると、ぎりぎりに車を寄せて一時停止。
対向車はゆっくりとすれ違い、ドライバーが笑顔で会釈する。
進路をゆずった車のドライバーも笑顔で会釈。
隣の町から泰阜村に入るといきなり、すれ違いの車のドライバーが会釈をし出す。
それは感動的で、「ここは日本かしら?」と異国に来たような錯覚を起こすほどだ。
村内を歩いている小中学生もドライバーに向かって会釈する。
村の人たちも、小中学生が歩いていると「お帰り」と声をかけ、小中学生も「行ってきました(ただいまの意味の方言)」とあいさつする。
このようなひとつひとつの当たり前のコミュニケーションが、泰阜村の心地よい雰囲気を支えている。

村の人は実によくこどもたちを見ている。
キャンプ中に、肝試しの下見で集落を歩いたこどもとボランティアリーダーが、村の人に出会った。
「こんにちは。キャンプは楽しいかな」
あろうことか、村の人に先にあいさつを先にされてしまった。
このボランティアリーダーは、突然こどもたちににしっかりとあいさつをするようになった。
あいさつの連鎖はキャンプの参加者に広がっていく。
そして―

「さよなら!」
私に挨拶されて何も言葉を発しなかったこどもが、帰るときに周りがびっくりするくらいの大きな声で挨拶した。
きっと泰阜村の心地よい雰囲気がそうさせたのだろう。
それでいいのだ。

そして皆さん、山賊キャンプが再開できるように、どうか想いを寄せていただきたい。
今年の夏こそはこどもたちに学びの機会を。

代表 辻だいち