2021教師指導者育成プロジェクト~なるこ 4月の研修報告

NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の4月のプロジェクト研修報告です。

―はじめにー

大学時代、日本の豪雪地帯や島国を訪ね、自身と異なる環境で生きる人と出会う中で、今の暮らしと自身の思い描く暮らしとの間にズレを感じました。それと同時に、人の想いや自然の恵、文化が生み出す豊かさが実はこの社会に沢山あるということを知り、そうした生きていく中にある豊かさや面白さを伝えられる大人になりたいという想いが生まれました。そこから、今の私には、まず自然・地域・人との繋がりを大切にした暮らしを丁寧に重ねる経験が必要だと考え、暮らしに向き合い・生きる豊かさを伝え続けてきたグリーンウッドで経験を積みたいという想いから育プロの参加を決めました。1年間の目標として「汚れる方を選ぶ」「毎日こどもたちの想いに触れる」を掲げ、これから過ごしていきます。

―4月を過ごしてー

だいだらぼっちでの暮らしが始まり、まず背景が見える暮らしであることを感じました。例えば、泰阜村は下水道がないからお皿の汚れを落としてから洗うこと、野菜の切れ端は捨てずにニワトリにあげること、たんぽぽやヨモギを取って天ぷらにすること、風呂焚きで出た炭を畑の肥料にすることなどです。暮らしの背景にあるものが見え、大人も子供も当たり前に「あるものを生かす」という意識を持ちながら暮らしていることを体感しました。

私の4月の目標は「毎日ひとつ、暮らしを支える仕事を最後まで子供と責任を持ってやる」です。だいだらぼっちでは毎日ご飯づくりや風呂焚き、片付け、掃除などをこどもたちが分担して暮らしており、育プロである私は関わらなくても、生活できてしまうことを1週間が過ぎた頃に感じました。私は暮らしを経験するために来たのだから、まずは1年間の全ての土台である“暮らしの基本”を身につけることが必要だと感じ、この目標を立てました。しかし、実際のところ「こどもの仕事を奪いたくない」「大人は散らばらなければ」と考えたり、こどもが遊びに誘ってくれたり、こどもと共に最後までひとつの仕事をすることは難しかったです。同時に、自分も暮らしを作る一員だという意識を持って過ごすことで、暮らしを作っていく上でやるべきことが見えてきました。そうした中で、こどもたちが最後まで責任を持ってできるように、時に声をかけたり、時には一緒にやったりということが、みんなで暮らしを作っていくために自分にできることなのではないかという考えに変化しました。

また、こどもたちが喧嘩をしている時に自分が関わるべきか、悩み事を相談してくれた時に何を伝えたらいいかなど、こどもたちへの関わり方に戸惑う場面がありました。しかし、他の相談員の考え方を知ったり、相談員とこどもたちとの関わりをすぐ近くで見たりする中で、「大人としてこうしなければ」と強く考えていたことに気づきました。大切なのは自分がどう思うか、何を伝えたいかです。正しさを求めようとせず、私が等身大の考えや価値観と向き合い選んだ言葉や行動が、こどもたち自身が考えるための1つの材料となることを心にとめてこどもたちと日々関わっていきたいです。

<4月研修担当おらふのふりかえり>

なるこが学生時代に感じたズレを埋めるために、「汚れる方を選ぶ」ことは大きく活きてくると思いました。例えば、田んぼ作業1つを取り上げても、機械ではなくクワやスコップを使うことで、「頑張ろう!」と言い合える人の温かさ「土が硬くて大変」と気づける自然相手の難しさを感じられます。ここでの暮らしは、人も自然も地域も身近です。だからこそ、なるこの思い描く暮らしに近づけるヒントがたくさん見つけられると思います。また、こどもたちとの関わりで「“自分”がどう考えるか・どうしたいか」と思えることは、必ずなるこ自身にプラスの影響を与えます。その想いを大切に、これからの暮らしを積み重ねてほしいです。