1200度の炎に立ち向かう ~仲間と大人からの強烈な信頼を背にして~

登り窯。
こどもたちが、三昼夜焚き続けた。
1200度の強烈な炎に立ち向かう。
仲間や大人からの強烈な信頼を背にして。

登り窯とは、陶芸の器を焼く窯のことだ。
暮らしの学校「だいだらぼっち」の敷地に設置してある窯。
薪だけで1200度まで焚きあげる窯は、店で売られてるものとは一味もふた味も違う器を産み出してくれる。

この窯の特徴は、窯焚きにこどもが参画することだ。
それは薪をくべることだけを意味するのではない。
燃料である薪を里山から間伐すること。
薪を引きずり出して運ぶこと。
薪割りをして、乾燥すること。
器をろくろや手びねりでひたすら作ることを意味する。
もちろん、器を使ってもらう誰かを心の底から想いながら創る。
こどもたちが手塩にかけて作ったお米のワラを燃やして作った灰や、薪ストーブで焚いた灰から釉薬(うわぐすり)を作ること。
これらを意味する。
まさに1年かけた暮らしの集大成。

こどもたちはチームを組んで小さく割った薪を投入する。
投入と簡単に言うが、投入された薪が床に落ちる前に燃え尽きるような温度だ。
熱いというより痛さが伴う熱線が、こどもの身体を襲う。
だから、支え合うのだ。

1000度前後になると、窯の中の写真を撮るのは命がけだ。
まずカメラが高熱に耐えられない。
もちろん手も。
窯の中では器がこの炎と熱と闘っているのだ。

ここからはそう簡単に温度が上がらない。
薪の力とこどもたちの知恵で1200度以上まで挑戦。
じゃないと、器にならないからだ。

投入された薪とこどもの知恵がとてつもない熱量となる。
薪を投入する部屋と炎が次々と上がっていく。
だから「登り窯」。
実はこの窯自体も、30年ほど前に当時のこどもたちと共に創った。
窯にこどもたちの歴史が流れている。

オールナイトでリレーするこどもたちは、抜群のチームワークを発揮した。
仲間と大人の強烈な信頼を背にするから、強烈な炎に立ち向かうことができる。
こうして、1年の暮らしの実感を、こどもたちはその小さな手に握るのだ。

そして3月。
今年度のこどもたちの暮らしが終わりを迎える。

代表 辻だいち