「著作活動は社会課題の解決に役立つか?」~中央大学公開シンポジウムにて

こんにちは、ぱるです!

先日、中央大学の政策文化総合研究所のオンラインによる公開シンポジウムに、グリーンウッドの代表だいちがパネラーとして呼ばれ、私はグリーンウッドの活動報告とzoom運営担当として参加しました!
テーマはずばり、「著作活動は社会課題の解決に役立つか?」

今回は、中央大学の教授で日本政治学者、評論家としても知られる広岡守穂先生からのお声がけにより企画されたもので、広岡先生ご自身もたくさんの著作をされています。

そしてNPO活動について著書のある二人のNPO代表者、グリーンウッドの代表 辻英之 だいちと、NPO法人まちづくり情報センターかながわの理事である川崎あやさん、そして共同通信の論説や編集委員である西出勇志さんをお呼びして、著作活動の持つ力を考えようというものでした。

当日は、まずはそれぞれの自己紹介から。
グリーンウッドよりだいちが自己紹介した後、私の方で暮らしの学校だいだらぼっちの活動について、動画とパワーポイントで説明。

だいだらぼっちのこどもたちは朝から晩まで、一体どんな1日を過ごしているのか?実際の映像で見ていただきました。

続いてはNPO法人まちづくり情報センターかながわという、市民活動を支援するためのNPOを設立された川崎あやさん。川崎さんはNPO法ができるずっと前からこのような活動をなさってきました。また一般社団法人インクルージョンネットかながわという、社会的生活に困難を抱えている人たちのセーフティネットを作る法人の理事もされています。

そして、共同通信社で論説委員や編集委員をされている西出勇志さん。読書欄の編集長を長く担当され、本が世の中に出て、社会の間で様々に動いている様子をご覧になってきた方です。

シンポジウムでは、著者側、編集側のそれぞれの想いや考えをお話いただきながら、お話が展開していきました。

著者側から、なぜ本を書いたのか?本を出すことの意義、また出版する際のエピソードなどについて。

グリーンウッドのだいちは、事業が始まって25年、四半世紀たったところで、自分たちのやってきたことを世に問うことをしなければ、と思ったとのこと。

ただやはり書きたい想いとしては教育の視点だが、出版社が農文協ということもあり、また地域創生が叫ばれていた頃でもあったので、かなり地域づくりの切り口を入れることを強く言われたようです。

▲震災があって、さらに世に問うという想いを新たに強くしたとのこと

ことごとく自分が書いたものがカットされ、編集者と一触即発のこともあったようですが(苦笑)、やはりよく読むと想いが強すぎて同じようなことを書いていたことに気づいたそうです。それからは編集者のいうことをよく聞くようになったとか(笑)

川崎さんは「NPOは何を変えてきたか ~市民社会への道のり」という本を出版されています。川崎さんの場合は、逆に編集者がほとんど入らず、ほぼ自分で編集を進めたので本当に苦しかったそうです。

川崎さんは本を通して、市民の力で社会は変えられる!ということを伝えたかった、とおっしゃっていました。ただ自分はNPOを支援する活動をしていたけれど、介護などNPOに支援してもらった個人的な経験も含めて、自分自身のことも含めて書かれています。

▲NPOということばがなかった頃から、取り組まれてきた活動をまとめられたもの

そこで編集委員の西出さんから、いわゆる“教科書”的に整理されて書かれたものは専門的に学ぶにはよいが、読み手の心は動かされない。個人のことにからめて書かれると、読み手に対して内発的な変化を引き出しやすいものになる。

だからどちらの著書もそういう点でよいと思います!とのコメント。

確かに、個人のエピソードが載っている本の方が、より共感して読みやすく、心に響くなぁと感じます。

また、書評で取り上げられるなど世の中に注目される本となるか否かという意味でいえば、タイトルと装丁が思っている以上に重要とのこと。ただインパクトある表紙がよかったり、シンプルなものがよかったりとどういうものがいいとは一概に言えないそうです。

ちなみにグリーンウッド だいちが書いた本がこちら。
「奇跡のむらの物語 ~1000人の子どもが限界集落を救う!」

また、著書が意図していない読まれ方がされる、意図してないターゲットが読んでいることは大いにあるそう。

広岡先生は「男だって子育て」という本を書かれ、ご自身の子育てを書き綴っただけのつもりだったのに、この一冊の本によって元祖イクメンと呼ばれるようになったとのこと。

▲元祖イクメンの広岡先生。終始笑顔で、一報告者の私にムチャ振り(⁈)されて、ドキドキしてました(笑)

著者が意図していない読まれ方といえば、実はグリーンウッドの本、雑誌「ダ・ヴィンチ」のオヤジに読んでほしい本ランキング1位になったことがあるのです!
え、なんでまたそんな雑誌で?しかもオヤジ?と、おそらく書いた本人だいちが一番びっくりしたのではないかと(笑)
また韓国社会のニーズに合致していたからか、韓国人の目に留まり韓国語版のオファーが来てハングル版が出たことも!

川崎さんも、市民活動の可能性について知ってもらいたい!と思い書いたけれど、友人からは介護の話のところが共感できた…など、自分が思ってもいないところに対する反応が色々あったとか。

▲柔らかな笑顔が印象的な川崎さん。柔らかな中に、長く市民活動を支えて続けてきた(きている)強さをとても感じました。

著者が意図していないターゲットが読んだり、違う読み方をされることもまた、社会に対するインパクトがあったということで、そこにまた本の意義があるのだなと思わされるエピソードでした。

出版に伴う著者側、編集側のお話しから改めてわかったのは、著者はこんな風に伝えたい!と思っていても、その伝え方で社会に届くかどうかはまた別の問題だということ。

著者の想いが強すぎると文章がわかりにくいものとなってしまうことも多いけれど、そこに編集者が入り、(ある意味)”売れる”本、社会で話題になる本にするために、今社会が求めている切り口などでまとめることにより、結果的に世の中に届く、伝わる本となる。

だからこそ、本は著者だけでなく編集者との連携があって初めて、人々に読まれる本が生まれるのだなと、本が本として世の中に存在するまでの長い道のりを知ることができました。

また、今回の「著作活動は社会課題を解決するか?」のテーマから、西出さんよりNPOの著書をいかに世の中に届けていくか、そんなヒントとなるお話がありました。

それは今、活字離れや電子書籍の台頭もあり出版しづらい時代で、出版社も本屋も厳しい状況におかれているが、一方で”一人出版社”なるものが多くあるそうです。それは、志を強く持った出版者が大手の会社に頼らず、一人で世の中に出したい本を出版する、というもの。

例えば地方で、注目に値する活動をされている方に本を書いてもらい出版する、といったスタイルでやっている一人出版社が今少しずつ増えてきているそうです。

また本屋についても、多くの全国の本屋は厳しい状況に陥る中、一方で店長の厳選した本を陳列するなどのセレクトショップ的な本屋さんが今話題となっています。

そんな一人出版社や、セレクトショップ的な本屋さんと連携することで、NPO活動の著書を世の中に発信することができるのではないか?と。

▲にこやかに、そして鋭くわかりやすくお話ししてくださる共同通信社編集委員の西出さん。

西出さんより。

「本は小さくて遅いメディア」なんです、と。でも一方で、必ず今後残ってはいくだろう、とおっしゃってました。

西出さんは古書を集めるのが趣味で、今100年も前の書物を手に取って読んでいらっしゃるとのこと。よいものは、細々とでも必ず残っていく、ということでしょうか。

終わりの一言感想で、だいちがこんなことを話していました。

「ベストセラーよりロングセラー」

「どんなオファーにも対応できる」ようになった

▲本を書いたことにより、言葉がそぎ落とされいき、今はどんな講師・講演依頼にも対応できるようになった、と。目下講演受付中

言葉をがんばって生み出していけば、必ずや次につながっていく。

どんなに小さな活動であっても、編集者の力を借りて世の中に受け入れられるような形で本を出版することにより、NPOが目指している想いや活動について世の中に知られることができる。それが社会課題の解決につながっていくことになりうる!

そんなことを今日の講演を聞いて思いました。

最後に、参加者よりこんな質問がありました。

「動画が主流の時代。こどもたちは動画で全ての情報を得ている。今後どうなっていくのか?」

この問いに対する、論説委員の西出さんからのお話が印象的でした。

今や出版業界は総合デジタルの情報発信産業と呼ばれるほど、本だけを扱う業界ではなくなってきている。世の中で電子書籍や動画が流行っているが、この流れに任せるしかない。一方で、本の大切さは私たちが伝えていく必要がある、とのこと。

私たちも… 社会への想いや、その想いを原動力に活動していることを世の中に発信していくことは、私たちが目指す社会に一歩でも近づくために大切なことだと思っています。

しかし、その想いを確実に社会に届けるためには、伝えるツール(本なのか、SNSなのか…)や伝え方が重要だということ。選ぶツールや、その発信の切り口を間違えると、目に触れてもらうことすら難しくなってしまう。

ただやはり、本の持つ力は絶大。その奥深さを伝えられるのはまた、紙媒体の本の素晴らしさを知っている世代の私たちだということ。

これからもそのことを念頭において、ふさわしいツールを活用して発信し続けたいと思います。

貴重な機会をくださった広岡先生、興味深いお話をしてくださった川崎さん、西出さん、本当にどうもありがとうございました!