「若者の無関心」を誰がつくってきたのか ~緊急事態が延長される~

次男が成人式に参加。
するはずだった。
こんな山村でも式が延期。
緊急事態宣言が出ている地に暮らす次男は、結局帰省もできなかった。

30年前、私も成人式だった。
その頃はまだ成人の日は1月15日で、式もその日に挙行されている。
札幌に住民票を移した私には、故郷(福井)から式の案内は届かなかった。
体育会ハンドボール部に所属していたので年末年始もない。
もともと帰省する予定はなかった。
ところが、クリスマスの日に足首の手術で入院し、年末年始は病院だった。
「15日は福井に帰ってご両親に顔を見せてこい」
当時の鬼主将のまさかの恩情に絶句したものだ(笑)

高校のクラスメートと。91年1月15日!!

ギプスを巻いているのでスーツは着れない。
アウトドアといえば聞こえはいいが、当時の山男の服を身にまとい、まさに“北の国から”の恰好だ。
入院していたから、松葉杖をついて、ヒゲも生やしている。
どう見ても成人式の参加者ではない。
ただ、友人たちからは「お前がどこにいるか、すぐわかった」とありがたがられた。
式典にも出ずに会場の外で大騒ぎ。
松葉杖なのに朝まで飲んだくれてた。
今、想えば、平和な時代だった(1991年)

小学校の地区主催の会にて。いつの時代も20歳は変わらない?

話を戻して2021年。
若者に「危機感のメッセージが届いていない」という。
コロナ禍で政治家たちが口にし続けている。
いや、メディアも含めて多くの大人たちが。
今さらか、と想う。
この10年、大学の授業を数多く受け持ち、様々な階層の学生と向き合ってきて、そう想う。

確かに若者の多くは政治に「無関心」だ。
とりわけ、選挙に無関心なことは間違いない。
とどのつまり、自分たちの未来を自分たちで決めるという「自己決定の権利」に無関心なのだ。
コロナ禍で若者が何らかの動きを見せた要因は、政府からのメッセージではない。
有名人の死亡や芸能人のSNSだ。

でもねみなさん、「若者の無関心」をつくってきたのは誰なの?
逆でしょ。
政治が若者に無関心過ぎたんじゃないの?
無関心であり続けてきたんじゃないの?

投票率を上げる努力をしない国が、若者に政治に参加する努力を怠った政治家が、今さら若者に「関わってくれ」なんてムシが良すぎるでしょ。
「教師は信じない」「政治家は信じない」
若者は言い続けてきた。
それどころか若者は「政治」なんて「ない」と想っている。
いや、「ないもの」と想わされてきた。
無視し続けてきたのは、関わろうとしなかったのは、大事にしなかったのは、「政治」の側だ。

例えば今、受験真っただ中の高校3年生。
英語試験の中止、一斉休校、9月入学、そして緊急事態宣言下の受験。
彼らは政治に翻弄され続けていることは紛れもない事実だ。
この国に大事にされた、と想う高3生はごくわずかではないか。

大学の学費はどうしてこんなに高いんだろう。
学費無料の国もあるのに。
どうして学校だけが教育の中心なんだろう。
オルタナティブな学びの仕組みは次々と世界で実効性を発揮しているのに。

本当に、若者のためにこの国は動いてきたのか。
予算をかけてきたのか。
関心を持ってきたのか。

成人式での若者の振る舞いを批評する前に、若者の危機感の薄さを嘆く前に、やることがあるでしょう政治家の皆さん。
若者に飲食や外出の自粛を求めながら、率先して夜の街に繰り出す前に、嘘がバレてもなお言い逃れや言いつくろう前に、やることがあるでしょう与党の皆さん。
無政府ぶりを棚にあげて、緊急事態のどさくさに紛れて国民への懲罰まで法制化しようとする前に、やることがあったでしょう国会議員の皆さん。
いったいこの1年、何をやっていたのか。
政治家の劣悪さこそ緊急事態だ。

今年度選挙権を手にした高3生たちは今、しっかりと見つめている。
この国の為政者たちが、この1年間どのような立ち居振る舞いを続けてきたかを。
そしてこの危機的な状況に、どのような言葉を発するのか、どのような行動を起こすのかを。

コロナ禍は、政治が、そして国が、本気で若者に関心を持つための、最後の機会かもしれない。

代表 辻だいち