ラジオから聴こえてくる”大越健介氏”の声から日本を読み解く

数か月前のブログで、三宅民夫氏の「声」に触れた。
続いて、もう一人、紹介したい。
大越健介というNHKのキャスターだ。
三宅氏の朝のラジオ番組に、1週間に一度登板する。
ちょうどそれが名古屋の短大に通う日なのだ。
「お、大越キャスターだ」と。
なぜ「お、」と想うのかについてちょっと記したい。

数年前の東京6大学野球で、東大のエースが大活躍したことを覚えているだろうか。
宮台康平という投手だ。
なんと大学日本代表に選抜され、2017年のドラフトで日本ハムに指名されプロの道へ進んだ。
私が毎週授業を持っている立教大学も、不思議なもので9年も続けると母校のように応援したくなる。
「わが立教」も、彼を擁する東大にやられた。
私の授業を履修する野球部の学生に「東大の宮台君、どう?」聞いてみた。
「すごいっす」
「打てないっす」
と、彼らもドラフト候補なのに率直な感想を言うからオドロキだった。

東大のエースが活躍することはたまにある。
その歴史の中でも、大学日本代表に選抜されたのは1983年の投手以来だという。
それが、大越健介キャスターなのだ。
しかもアンダースローで活躍していた、というからまたオドロキである。

私はこの大越氏(写真左)が好きだ。
2012年、福島県飯舘村の帰還困難区域のレポートを大越キャスターがしていた。
本当にその通りだと、うなづくばかりの内容だった。
その時に取材されていた飯舘村の区長(写真右)さんが、私の立教大の授業にゲストに来てくれているのだから、縁とは不思議なものである。

大越氏は、ニュースウォッチ9で5年間、キャスターを務めた。
冷静に、そして論理的に事象を裁断する語り口は、時に政権には批判的に映った。
そのためだろうか2015年春、突然の降板だった。
この時期から、他局の気鋭のジャーナリストもまた、次々と降板される事態が続くようになった。
今年度の報道の自由度、日本は67位。
20010年には11位(前後2年は10~20位台)だったが、2013年つまり今の政権になってから突然50位台に急降下。
そのまま60位台~70位台に低迷している。
ちなみに2008年以前も20位台~40位台だったが、2006年だけは51位。
2006年も今の首相が第一次政権を担っていた。
真実が報道されているのか、甚だ疑問になる数字だ。

その疑問は、今この時も続いている。
今年度、政治や企業、行政で次々と、唖然とするような、いや怒りを覚える不祥事が明るみに出た。
厚労省の統計データ改ざん隠し、老後の年金2000万円、関西電力の金品受け渡し、疑惑まみれの大臣辞任、カジノ汚職!・・・
桜を見る会に至ってはもう、民主主義の国家の体をなしていない。
どうしてこんな国になったのか、ときっと多くの国民が想っているに違いない。
しかしそれら事件や事象の本質を、マスコミが報道しているのだろうか。
権力側や強いひとびとに、マスコミがなびいていないか。
うんざりするような圧力がかかっていないか。

言論弾圧ともいうべき時代錯誤の状況が日本を覆う。
その当事者となった大越氏の落ち着いた口調が、週に一度聴ける。
やっぱり朝のラジオはいい。

代表 辻だいち