昔ながらに泰阜村の年末は過ぎていく ~南信州の伝統行事「お年とり」の意味~

大晦日。
泰阜村は静かな年の暮れを迎えている。
冬の信州こども山賊キャンプのこどもたちがもちつきをしたりおせち料理をつくるそばで、スタッフや娘たちと注連縄をつくった。
今年山村留学のこどもたちと一緒につくたお米。
収穫の際にできた稲ワラが材料である。
村のおじいまの「魔法の手」には足元にも及ばない。
それでも、縄を「なう」一連の作業と、注連縄の際に使う「逆ない」の作業、そして注連縄は3束使うんだってことを彼らに教えた。

帰省中の長男が手伝いにきてくれて、伝統的なワラ細工「おやす」の作り方をスタッフたちに教えている。
「おやす」とは神様に供える食べ物の食器。
ここに白飯を入れて神様を迎える。
それにしても長男がてきぱきと教えている姿に驚く。
小さいころから身体に刻み込まれている技。
この山村に生まれ育ったからこそだ。

母屋の玄関を飾る注連縄をはじめ、正月を迎えるにあたり必要なものは自分たちで創る。
泰阜村は昔ながらに大晦日が過ぎていく。

夕方からは、みんなで伝統行事の「お年とり」。
この地域には、新年を迎えるにあたり伝統文化がまだまだ息づいている。
「年越し」とは言わずに「年とり」という。
したがって「年越しそば」も「年とりそば」。
そしてこの「年とり」こそが伝統文化を色濃く残す行事なのだ。
「年とり」って何?ということだが、その昔とっても貧しかったこの山村で、大晦日の夜だけはなかなか手に入らない尾頭付きの魚を食べて、家族全員でひとつ”年をとった”。

いわゆる数え年の考え方だが、おもしろいのは元旦ではなく大晦日におせち料理を食べてしまって「年をとる」ということ。
今でもこの風習が息づいていて、今日の夕方は村中の家で、一家の大黒柱が「さあ、みんなでひとつ、年をとるぞ」と、尾頭付きの魚を食べることになっているのである。
私もたった今、冬の信州こども山賊冬キャンプのこどもたちとスタッフ家族みんなで、ひとつ年をとった。
こどもたちにかかれば、伝統的な「お年とり」もパーティーになってしまう。
それでいいのだ。

来る年が素敵で幸せな1年となりますように。
皆さん、良い新年をお迎えください。
私は「お年とり」二次会(つまり事実上の新年会)に突入して、新年を迎えます。

代表 辻だいち