小さな集落の忘年会 ~私にとって26回目の冬~

師走。
毎年めぐってくるこの季節。
今日は忘年会だ。
集落自治会のみんなで。
これがまた楽しい。
幼児から老人まで、一家総出で参加してくる。
おばあま(おばあ様の意味)なんかは目いっぱいのオシャレをする。
それがいい。
なんといっても年に一度なんだから。

今回は泰阜村からほど近い温泉宿。
信州ワインうまい宿だ。
しかし、全際には蜂の子入りのチーズが出てくる。
食虫文化が色濃く残る南信州ならではだ。

「今年も穏やかに1年を終えることをうれしく思います」
班長の乾杯の発声。
その後、じきに仁義なきお酒の注ぎ合いが始まる。
「そんなんじゃ入らんなあ」
長老はなかなかお酒を注いでくれない。
要は「もっと飲め」ということだ。
そのすさまじさは、大学時代に体育会(運動部)で鍛えれた身にもこたえる。
勘弁してほしいな、と想うが、でも私はこれはこれで心地がよい。
うれしいわけではけっしてないのだが。

長老は若者をこてんぱにする。
若者はまた、長老人の健在を痛感する。
こうやってお互いの息づかいを間近に感じるのだ。
そういうもんだと想う。

この心地よさに今日は酔った。
しこたま飲まされた夕方、この村に強い風が吹いた。
この1年が終わる足音が急速に聞こえてきた。

私にとって、この村での26回目の年末、冬。

代表 辻だいち