やまほいく実地研修事業「長野市豊野東保育園」

長野県で推進している信州型自然保育認定制度「やまほいくの郷」。長野県にある公立、私立の保育園で自然保育を広めていこうという活動があります。

その保育士の先生方向けの研修を請け負っており、今回は長野市の豊野東保育園で行ってきました。

今回は研修の内容をもう少し詳しくお伝えします。

①グリーンウッドスタッフのなおみちが、豊野東保育園のこどもと野外活動を実施

②研修に参加している保育士さんが見学

③保育士の方のワークショップを用いた研修

という流れで行いました。

まずは研修を受ける先生方にお話し。目的とどのように関わってもらうかをお伝えすることと、初対面の方も多くいたので簡単なゲームで緊張を解きます。緊張した状態では学びは入ってこないことと、グループワークをする上でも意見が言いやすい雰囲気を創ることが重要なのです。

その後、年長さんのこどもたちが集合します。こちらも大勢の大人に囲まれて緊張してしまうと普段の様子が見られませんので、まずは手遊びとゲームをします。


少し笑顔が出てきたところで、「みんながいつも行く散歩に一緒に連れて行ってもらいます。おもしろいものがあったらぜひ教えてください。」と伝えます。

「おもしろいものがあったら教えて」。こどもたちの発見を促すための言葉であり、ただ目的地に行くため歩くのではなく、歩くことが楽しくなる魔法の言葉です。

また「なおみちはここに来るのが初めてなんだけど、散歩の時に注意しなければいけないこと教えてくれる?」と問いかけます。そうするとこどもたちは「車が通る!」「ハチがいるかも」と教えてくれます。

これもこども自身が自分の身を守る主体者であるために大切な工程です。危ないことを大人が教えるだけでは、それ以外の危険に気が付きません。安全管理を自分自身でできるようになれば、こどもは「自由」になります。そのために「自分で考える」というステップが必要なのです。

普段は10分かからず到着する神社も遠回りして30分かけて歩きます。ゴールに着くことを目的としないので時間は気にしません。そうするとこどもの発見が存分に行われ、思いもかけない遊びに発展することもたくさんあります。

おもしろいものを発見しては、他のこどもたちも同じものを探しはじめるということが繰り返されたり。ちょっと落ち着いて話しをするために、外で絵本を読むことも。

戻ってきてからは大人の研修です。

まずは自己紹介。それぞれが何者なのか?を知るだけで場に安心感が出てきます。人は共感することで親近感が出てきます。保育士何年目、出身が同じ、そんな当たり前の情報も知ることでも変わるのです。

Q:「今日のこどもたちの様子を見て、あなたが外でやってみたいことは何?」

まずはこの問いに対して思いつく限り、やってみたいことをポストイットに書き出します。

Q:ポストイットを分布図に張り出す。

横軸は「難易度」です。
「今すぐにできるもの」(左)→「難しいもの(技術の習得、時間場所が限られるなど)」(右)

縦軸は「協力者の数」です。
「自分1人でもできるもの」(下)→「理解者、協力者がたくさんいる」(上)

この図に落とし込んでいきます。
そうすると以外にも「今すぐできる」「自分一人でもできる」ゾーンにたくさんのポストイットが貼られます。「やまほいくで何をしたらいいかわからない」と話していた方とは思えないくらいに様々なアイデアが出ていることがわかります。

ココが研修のポイント!
自分ができるものでも「やまほいく」に取り入れられることが意外にもたくさんあることを実感できます。しかも他の保育士の方とアイデアを共有しながら行うので、自分だけでは思いつかないこともワクワクしながら考えられるのです。

Q:「難しいもの」「理解者、協力者がたくさんいる」ゾーンから、最もやってみたいものを1つ選び、①なぜ実現できないのか理由を書き出す ②その理由を解決する方法を考える

「やってみたい!」というモチベーションが行動につながります。そしてできない理由も「言葉に書き出し」「仲間と相談」すると意外にも乗り越えられることが出てきます。そうすると、「考えたことは難しいけれど、ちょっとハードルを低くすればできそう」というものがでてくるのです。

もうひとつの研修のポイント。
ハードルを低くすれば実現できるのであれば、そこからスタートすることを強く勧める!例えば「キャンプがしたい!」と言ってもすぐにはできません。なぜなら、「野外調理」「宿泊」「場所や道具といったハード」「周りの方の応援」といったたくさんのハードルがあります。そこでキャンプのハードルを低くする、あるいは数を減らすところからスタートします。例えば「外でお昼ご飯を食べる」からスタートする。スープでもお茶でも焚火台で温めるということだけでも得られるものは変わります。ものすごく大変なことではなく、ちょっと大変なものに少しずつチャレンジしていくと、そのうちにそれは「当たり前」になります。当たり前の土台が高くなっていくことでゴールに近づくのです。

また頭で考えるだけでは解決しません。やれることをやっていくうちに、別の方法、アイデア、新たな出会いがあることもよくあること。それが課題解決になることもあるのです。なので、ひとつめのポイントの「できること」をやり続け、「難しいもの」もできることからはじめていくことで、保育士の方もこどもも変化する。そうすることで「やまほいく」の幅も自分たちの力で広げていけるのです。

最後にこどもの安全管理について。

野外で活動できるのも、指導者の確かな安全管理の技術があってこそです。一朝一夕では獲得できませんが、大人の成長がこどもの自由を拡げるのは確かなことです。そんなきっかけになる研修をこれからも続けていきます。