とうとう二学期が終わり、残りは3ヶ月となりました。一学期よりも長かったはずの二学期は、毎日の暮らしに少し余裕ができていろんなチャレンジに出会えたものの、一瞬のうちに過ぎ去ったように感じます。それでも少しずつ変化してきたもの、挑戦してきた糧が自分の中に落とし込まれた期間でした。残りの3ヶ月に向けて、今学期を振り返っていきたいと思います。

1.こどもたちはパートナー
一学期は、こどもたちとたくさん笑ってたくさん遊んで楽しいばかりの毎日でしたが、互いに思うことがあっても、相手のために傷つけないようにと少し距離をおきながら関わってきました。仲間だからこそそれが優しさだと思っていた部分が私の中にもあって、喧嘩しないように、嫌われないようにと自分を守る壁を作っていたのだと思います。
しかし、二学期に入り、半年以上も暮らしを共にしているとそうも言っていられなくなりました。二学期はイベントが盛りだくさんで、だいだらぼっち祭りに説明会、稲刈りに山出しなど、準備や段取りに忙しい毎日。だからこそ暮らしの中でも、不満が貯まる人やいざこざなんかも少なくはありませんでした。互いの距離が近づいたこともあって、言えなかったこと、溜まっていた思いが一気に吐き出て、暮らしの話し合いを続けながら何度もわかり合おうと苦しい時期を過ごしました。それでも、私はいらだちや不満をたった一言でも口にするのが怖くて、笑ってごまかすことばかりだったように思えます。

もやもやばかりが溜まっていたそんな時期、私の考え方を大きく変えてくれた出来事がありました。
振替休日を使って川遊びに行こうと、小学生と準備をしていた朝でした。準備も終え、いざ出発となった時、私が履いた川靴の中に大きなムカデがいて、指を噛まれてしまったのです。痛みにたまらず、私は声も出なくてゴロゴロと転がっていました。すると、みんなが一斉に走り出し、他の相談員を呼びに行ったり、水やポイズンリムーバーを持ってきてくれたり、「大丈夫?」と背中を擦ってくれたのです。そんな真剣なみんなの姿を見て、驚きながらも「ちゃんと本気で心配できる関係になっていたんだ。そんな関係性を今まで作ってきていたんだ。」と、ようやく実感できた気がしてなんだかとても安心しました。ちっぽけな出来事でしたが、印象的で、忘れられない私の転換期です。私自身がみんなのことを信頼できていなかったからこそ、思いを伝えることに怖さを感じていたのだと気づくきっかけになりました。

それから私は、自分の思いをしっかりとこどもたちにぶつけられるようになりました。今までは信じられなかったケンカも時にはするようになりました。でも、ただぶつかり合うのではなく、思いを理解し合って共に暮らしていくためのすり合わせだったり、大切な仲間だからこそ伝えたいことだったりを話すため、以前とは異なり、しっかりと受け止めて話し合える仲になりました。暮らしの問題も自分だけで悩まず、まずはこどもたちに提案して一緒に悩むと、意外な解決策が見つかったりもしました。遠慮はないけれど、互いに受け止めてくれるという安心感があります。もともと、こどもたちを見守ったり、育てたりという言葉や姿勢がしっくりこなくて、一緒に学ぶことが好きだった私は、この関係性に居心地のよさを感じました。4月にギックが話してくれた「こどもたちはパートナーなんだよ」という言葉を、11月にもう一度ギックから聞いた時、その意味がようやくわかった気がしました。

そんな自分の思いを伝える際に心がけていることが2つあります。それは、「言葉の真意がこどもたちに直接伝わるということ」「言葉一つ一つが自分を作っていくということ」。こちらの言葉がちゃんと伝わるときは、その思いや真意がしっかりと自分の中に落とし込まれている時であり、その場しのぎの言葉では伝わらないことばかりでした。なぜそれを伝えたいのか、どの言葉が一番目の前の相手に伝わるかなどと、自分の考えの軸を持って話すことの必要性を感じました。また、反対に、話していく中で自分の言葉が考え方を磨いていく感覚も最近感じるようになってきました。口にすることで、自分の価値観や考えの本質に気づかされたり、洗練されていくのを感じるため、どんどん口にして、「自分の言葉」を見つけていきたいです。
2.とりあえず臆せずやってみる
全てのことに驚いていた一学期と比べて、驚きが当たり前になった二学期では、暮らしがわかってきたからこそ時間と楽しみを見いだして様々なことに挑戦することができたように感じます。初めの頃はよく耳にした「絶対無理」という言葉もだんだんと聞かなくなって、「とりあえずやってみようよ」がみんなの口癖にもなってきました。私もいろんな挑戦へのハードルが下がって、やってみるおもしろさにはまっています。

例えば、染め物実験です。染め物にはまっていた私は、こどもたちと一緒に一日で13種類の植物を使って草木染めを行いました。身の回りにいろんな色が隠れていることがおもしろくて、だいだらぼっちの敷地内にある「染まりそうなもの」を見つけてきては、煮出して染めて煮出して染めての繰り返しです。ススキからきれいなピンク色が出たときは、どこから色が出ているのかと根っこから葉までこどもたちと切り刻みました。そんな実験ができたのも、二学期に、ごはん作りで出たナスの皮や、ビーツ、山で採ってきたソヨゴにハギ、学校でもらってきたマリーゴールドなどを日々染めてきたので、染め物の段取りと準備が癖になっているからだと感じます。

薪作業中に顔を出したヘビを焼いて試食してみたりもしました。動いているヘビを見て「食べたい!」という言葉が出たことには衝撃を受けましたが、ワクワクした顔でじっとヘビを見つめているこどもたちの顔を見てると、私も食べてみたくなってしまい、自分だけでは想像もつかないチャレンジができました。
朝作り・片付けが回らなくなった時には、みんなで話し合いをしました。問題を洗い出して、とりあえずみんなが納得した手段を使ってやってみる。また難しければ考えるの繰り返しです。

思うがままに全力でやってみる時間は、めんどくささも大変さも凌駕して楽しみに変わっていくように感じました。探究して答えを見つけ出したときは、ただ教わった時よりも、何百倍もの喜びと自分で発見したという確かな感触を感じます。この感覚がきっと、生きる楽しさ、自分たちで暮らすおもしろさなんだろうなと実感出来ました。
それでもいつも楽しい方向に行くとは限らず、私ばかりが先走ってこどもたちのやる気を無くしてしまったり、やりたいことばかりで段取りや片付けが中途半端な時もありました。それぞれの願望ばかりで内容が盛り沢山になり、全く決まらないこともありました。

でも、やってみる楽しさにも大変さにもに気づけたのは、こどもたちと同じ土壌に立って、全てやってみたからこそわかったことでは無いかと感じます。完璧であろうとして無理に関わるのではなく、一緒にやってみて失敗して、また一緒に考えるその時間にこそ価値があると思えるようになりました。

パートナーとして、仲間として、楽しさも苦しさも共有しながら、共に悩んで、やりたいことをとことんやり尽くす最後の3ヶ月にしていきたいです。
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