やまほいく実地研修 IN 雷鳥保育園&すずらん保育園

 長野県で推進している信州型自然保育認定制度「やまほいくの郷」。長野県にある公立、私立の保育園で自然保育を広めていこうという活動があります。
 その保育士の先生方向けの研修を請け負っており、今回は長野市の雷鳥保育園、すずらん保育園約50名での合同研修に行ってきました。既にやまほいくの認定園として実績を重ねている園ですが、今回はたき火の活動の幅を広げたいということと、危機管理について知りたいとのことでしたので、次のような流れで研修を行いました。

①導入:主体的な参加を促す

②体験:外へ出て「たき火でやってみよう」

③考える:グループで1つやりたい企画を立ててみる

④安全管理のポイント

① 導入は初対面同士もいたのでレクリエーションゲームで交流しながら気持ちをほぐします。どんな顔ぶれで研修するのかを知ることやリラックスした雰囲気作りは、主体的な参加を促すポイントとなります。それから今日の研修の目的と内容を共有して、活動スタートです。目的は「体験し考える」こと。答えは自分の中から見つけ出そうということです。

② 外の広場へ移動しました。たき火でできそうなことを思いつくだけやってみようということで(コロナ対策として食べ物以外で)、拾ってきた松ぼっくりや小枝を蓋つきのスチール缶に入れて炭を作ったり、焼き板、焼き泥団子なんていうものもやってみました。教え合いながら火おこしに挑戦したり、ノコギリで丸太を切ったり、木の実や竹を探しに森の中へ入って行ったり…一瞬にして蜘蛛の子が散ったようになり、夢中で遊ぶ先生たち。好奇心が溢れ出しています。

「火おこしって初めてやったけど意外と怖くないですね」

「炭って10分くらいでできるのね。焼きすぎちゃって悔しい!」

「泥団子が焼き物みたいになったね」

短い時間でしたが、それぞれ発見があります。

③ 第2部は室内に戻ってワークショップです。グループで集まったら、自己紹介を兼ねて今日の発見や感想、こどもの頃楽しかったこと、保育での悩みなどを聞き合いました。お互いがどんな人か少しわかったところで本題に入ります。

 各々で「やまほいくでやってみたいこと」を思いつくだけ書き出してみた後、グループ内で共有しました。木の実拾い、土手で草すべり、生きものを育てる、川遊び、バーベキュー、おさんぽ…など様々出た意見を場所や内容などイメージをより具体的にしながら、「すぐにできる容易なもの、すぐにはできない難しいもの、保育士が1人でもできるもの、協力者が必要なもの(少→多)」という分布図を作ってみました。
 この分類の「すぐにはできない難しいもの&協力者が必要なもの」の中から一番やってみたいものを選び、「なぜ難しいのか」を洗い出して「どうやったらできるか」を話し合ってもらいました。
 できない理由を突き詰めていくことでできるやり方を発見したり、活動のステップを考えられたりします。「泥あそびで感触を楽しんでもらいたいけど、汚くなるのが嫌な子にはすぐに汚れが落ちる素材を使ったり、手だけで触れてみるなどしてまずは感触を知ってもらおう」なんていう意見が出たりもしていました。

 裏の山に秘密基地を作りたい、段ボールで○○の斜面を滑りたい、夜の自然を探検したい、本格的泥あそび!、キャンプファイアー、木材で机や椅子を作りたい、山でお泊りしたい…などのテーマが出て、グループごとに話が進みました。

 経験年数や保育環境が違うこともあってか、グループごと悩むポイントは結構違いました。これは現場での日常を表していると言えます。その現場を支える顔ぶれが違うのですから悩みや課題は当然違うものです。ここで大切なのは、現場を支える職員がチームとして自分達で答えを出していくことだと考えます。そうすると自ずとチームがお互いのスキルを理解して安心して活動ができますし、それぞれの考えを持ち寄ることで「自分たちでつくる現場」という感覚が育まれれば、いずれ大きな夢を自由に自分達の力で描いていくことができるからです。今回のグループワークが、その疑似体験になってくれたらと願って見守ります。

 さて、短時間でしっかり答えを出した参加者のみなさんですが、保育士だけでなく、調理員や事務員の先生も一緒に研修に参加されていて、普段からこども達を支えるチームになっているという意識の高さを感じました。

 グループで話したことを全体へ発表してもらいました。どのグループも漠然とした不安を掘り下げて具体的に分析されており、共感を呼ぶアイディアがたくさんありました。そして、毎日の保育の質の向上のために保育士が自らチャレンジを楽しむ大切さが語られました。また、そこに必要な人材やお金、理解者などあらゆる人の力を借りることも1つのスキルとして重要であるということも挙げられました。

④ 最後は駆け足でしたが、野外での活動における安全管理のポイントや考え方について私の方からお話ししました。

 ここまでの所で、いつもの保育がまさに「やまほいく」と言えるのだということや、「安全管理」のポイントについても普段から当たり前にしてきたことと同じだということに気づかれたと思います。それを敢えて言葉で整理することで、腑に落ちたことは多かったのではないでしょうか。

 たっぷりあるように見えてギリギリの3時間でした。いや、実は20分過ぎてしまいました。時間が足りなくなるほど保育を語るみなさんの熱意を感じて、話すことの効果の大きさを改めて学ばせてもらった貴重な時間となりました。

 今回は活動の土台を作る研修として、HOW TOではなく考え方や取り組み方の研修となりましたが、次は川あそびや森あそびなどに特化した研修をしてみても面白そうです。こどもたちの活動がのびのびと自由にあれるよう、お呼びとあらばどこへでも伺い、出し惜しみのない研修を提供していきたいと思います。