2021教師指導者育成プロジェクト~なるこ 10月の研修報告~

 

10月のだいだらぼっちの日々を振り返ると、こどもたち同士がぶつかり合うことが多くありました。私にとってもこどもたちの心の内にある葛藤や想いに触れる場面が多くあった1か月でした。

 だいだらぼっちの中でいくつかのトラブル、喧嘩などが重なったとき、今の暮らしで困っていることを伝え合おうと話し合いをしました。その日はみんなが今この話し合いが自分たちに必要だと感じたからか、消灯時間を過ぎてもそれぞれが困っていること、おかしいと感じていることを面と向かって伝え合いました。その話し合いの余韻が残る中、もーりぃと数人のこどもが話し続けていました。そこにいたこどもたちは普段は関わりの少ない顔ぶれでしたが、その空間では心の内にある悩み、想いをポツリ、ポツリと素直に言葉にして、周りが受けとめていました。いつもは強そうに見える子が悩みを吐露して、隣にいる子に「はあ、助けて~」と言葉にしていました。

 この空間に居合わせた私は、こどもたちが関係性を築いていくためにこの時間はすごく大事だと感じました。自分の弱さを見せることは、少し勇気がいることです。しかし仲間の弱さが見えた時、周りにいる子は自分に弱いところを見せてくれたことに嬉しく思う、悩んでいるのは自分だけではないんだと安心する、お互いに助け合えるかもと新しい選択肢が増える。この時間をきっかけにこどもたちの関係性が変化したり、悩みを言葉にしたことで状況が好転したり、こどもたちにとてお繰り返しの日々が少しずつ変わっているようでした。消灯時間を過ぎていても、もーりぃがこの場を大切にしたように、選択の連続の日々の中で私も大切にしたいことを柔軟に選び取っていきたいと思いました。

 9月は関わりが少ないこどもとの関係性を築いていくことに向き合いました。10月はこどもたちとさらに一歩深い関係性を築いていくために、言いにくいこどもに「”今”を見逃さず、伝える」ということを意識しました。実際に普段の暮らしの中では、こどもたちの言動に対して自分が「違うな」と感じたときには、できるだけその時に思っていることを伝えるようにしました。だからこそ、こどもとぶつかることもありました。

 ある日、仲間が嫌そうな顔をしているのに傷つける言葉を投げかけているのを見た私はカチンときて、その時に感じたことを伝えると思っていることの言い合いになりました。あるこどもが「大人は一部分だけしか見ていないのに、いつもこっちが悪いと決めつけて言ってくる」と言いました。その言葉に気付かされたことがあります。弱音を吐ける子に対しては話を聞いたり、励ましたり、その子のいいところを認める機会があるけれど、強そうに見えて自分から助けを求めない子の想いや悩みは全然知らなかったなということです。日々を振り返ると強そうに見えるこどももストレートな表現でなくとも、つらい時、悩める時、言葉や行動、表情の端々にサインを出しているように思います。見ようとしなければ見えない想いにも、これから目を向けて行きたいです。さらに、こどもの言動に「これは違うな」と思った時やカチンときた時に、こどもがやったことを叱るだけのではこどもが話し合う気持ちを閉ざしてしまうことも感じました。こどもの事情を聞くこと、言動の背景にあるものを想像することを日々大切にしながら、自分の関わり方を模索していきたいと思います。

 この18人のこどもたちとの暮らしもあと5か月になりました。こどもたちとの関わりに困ることもありますが、ひとりの人として、こどもの考え方に感動したり、尊敬したり、素敵な人だなあと素直に思う瞬間があります。私が感じたことをもっと大切に、それを言葉にしてこどもたちに伝えていきたいです。

〈10月研修担当サンの振り返り〉

 年度初めに、「手が汚れる方を選ぶ」という決意を示すなるこのことを鮮明に覚えています。自分にとってはごく普通のことですが、初めての田舎暮らしをするなるこにとってはきっと大きい決断だったのだろうと思いました。

 10月の振り返りを聞いて、関わりにくい子に苦手意識を感じながらも、勇気をもって積極的に関わっているなるこがかっこよくて感心しました。いつも日々の暮らしにワクワクしながらチャレンジし、こどもたちと楽しそうに過ごしている姿が輝いて見えていましたが、葛藤や苦悩を持っているんだなと知り、新たな一面を見ることができました。残りの時間もいっしょに悩み、いっしょに楽しんでいきましょう。