2021教師指導者育成プロジェクト~なるこ 5月の研修報告

NPOグリーンウッドでは、次世代を担う教師を育てる「教師・指導者育成プロジェクト」を実施しています。育成プロジェクトでは山村留学だいだらぼっちや信州こども山賊キャンプなどグリーンウッドの様々な事業に関わり、こどもたちと生活を共にし、実体験を積む中で人間としての土台を拡げることを目的にしています。今年度参加者のなるこ(寺井 朱里さん)の5月のプロジェクト研修報告です。

―5月を過ごしてー
今月は毎日の暮らしに対する自分の向き合い方に大きな変化がありました。
5月上旬までは日々の暮らしをこなしていくことが目的になっていたため、平日の会議や研修以外の自分が自由に使える時間は事務作業を探したり、新聞を読んだりして過ごし、こどもたちがいる時間にはこどもに誘われるがまま一緒に遊んだり、おしゃべりをしたりして過ごしていました。

しかし、自分の日々の過ごし方を振り返った時に、今の自分には学校へ通うこどもたちよりも自由に使える時間があることにハッとし、今の過ごし方ではもったいないと強く感じました。
この1年間、育成プロジェクトに参加すると決めたのは、自然・地域・人との繋がりを大切にした暮らしを丁寧に重ねる経験を積みたいという想いがあったからです。
その想いに立ち返った時、「だいだらぼっちだからこそ出来る経験」を日々積み重ねていこうと思いました。

このように意識を切り替えてから、空き時間に箸づくりや草木染めなどをするようになりました。
ある天気がいい日に外でお箸づくりをしはじめると、自然とこどもたちが集まってきて木工に取り組みはじめました。綺麗に削れるようにお互い助言しあったり、どうしたら使いやすいか試行錯誤をしたり、それぞれがものづくりを楽しむ心を感じる場でした。
そしてまずは自分がこの暮らしを純粋に楽しむことが、子供たちの暮らしの中の学びに繋がっていくということを感じました。

暮らしの中には私がこどもたちから影響を受けることも多くあります。ある日の空き時間にこどもと一緒に草木染めの素材集めをはじめ、私は草木染めの本で何の草が何色になるかを見ながら素材を探していました。
私は初めての草木染めを失敗しないように本の中から草を選ぼうかと考えていましたが、一緒に探していたこどもの「何色になるか分からないけど、やってみよう」という言葉をきっかけに、本に載っていない木の葉を袋いっぱいに摘みました。
こどもと一緒だからこそ失敗を恐れず「やってみたい」「どうなるのだろう?」という純粋な気持ちで挑戦できることがあります。
このような日々の暮らしの中にある経験から、だいだらぼっちの仲間ひとりひとりの物事への向き合い方が、お互いに影響を与え合っていることを感じました。

さらに、ものを生み出す喜びを知りました。特に強く心に残っているのはものづくり教室で粘土から作ったお茶碗を釜から出す時のことです。
りんご、アカマツ、鉄といった数種類の中から選んでつけた藁の釉薬がどんな色、質感になっているのか、どのくらいの大きさになっているのか、まだ見ぬお茶碗の姿を想像して、ドキドキしながら受け取った時の気持ちは今まで感じたことのない喜びでした。

今ではだいだらぼっちで、こだわりながら思いを込めて作った自分のお皿はもちろん、作る過程を見ている仲間のお皿も大切にする心を、身をもって知りました。
今までは欲しいものがあったら「買う」のが当たり前でしたが、だいだらぼっちで暮らしていると、「こんなものは作れるかな」と考えます。これからは、当たり前すぎて見過ごしてきた身の回りにあるものに目を向け、何からできているのか、どこから来たのか、目に見えるものの背景まで想像し、考えてみたいです。

〈5月研修担当くみのふりかえり〉
5月のなるこの様子を見ていると隙間時間に草木染めをしていたり木工をしていたりと過ごし方が変わったなぁと感じていました。そして、なるこは振り返りの時間に「だいだらぼっちだからこそ出来る経験」をしたいと気持ちを入れ替えたことを話してくれました。
ここでの暮らしも1か月過ぎれば慣れも出てくるもので、それはこどもも大人も同じです。しかし、誰か一人でも暮らしの意識が変わると周囲にも伝わっていきます。1年間も四季の移り変わりもあっという間。これからも4月当初の決意や目標に立ち返りながら、過ごしてほしいと思います。