山賊の学びを止めない ~オキテその3「食事は自分たちで作る」~

こどもの日だ。
コロナ禍に加え、戦禍が続く。
命が途絶え続ける”世紀の暴力”を、映像を通して見続けるこどもたち。
こどもたちの「学び」はいったい、どこに行ってしまうのだろう。
こどもたちに「学び」の息を取り戻すことをしぶとく信じて、「オキテ」紹介を続けたい。

大人気の「信州こども山賊キャンプ」。
その人気のヒミツに迫る連載企画、第3回。
今回は、「オキテその3 食事は自分で作る」

 

その3 食事は自分で作る
マキで火をおこす仲間がたくさんいるから大丈夫
ちょっとくらいコゲたって自分たちの力で作ったごはんはおいしいに決まっている

 

「ここは、でごはんを作れるからいい」
山賊キャンプに何度も参加する子どもはこう笑う。
一方私は「自分でごはんを作らないキャンプなんてあるのかなあ」と、むしろ不思議に思う。
「厨房でスタッフがすべて作ってくれてまるで給食のようなキャンプも多い」
子どもの声には「それではつまらない」という響きが込められている。
明らかに「自分たちでごはんを作ったほうがおもしろい」と感じているのだ。

こどもを食事作りに参加させず、大人が食事を作る。
刃物や火をこどもから遠ざければ、確かにリスクが低くなるだろう。
しかし、そこにあった「学び」はどこに行ってしまうのか?と心配になる。

山賊キャンプでは食事はすべて子どもがつくる。
各グループに配給される食材と調味料は共通だ。
たとえば次のような食材が配られる。
ごはん、鶏もも肉、玉ねぎ、かぼちゃ、ほうれんそう、トマト、ピーマン。
その食材を使って何をつくるかは、グループごとの創意工夫に任されている。
同じ食材なのに、全く違う五つのメニューができあがる。

 

こどもたちの意思決定や選択についての自由度が高いのがここでもわかるだろう。
チームワークが悪ければ、時には朝ごはんを食べるのは昼前になるときもある。
途中で雨が降ってきたときなどは大騒ぎだ。
腹が減っているこどもたちは、できあがりそうな食事をみすみす見捨てるわけにはいかない。
手分けしてあちこちから道具を集めてきて、なんとか雨が火にあたるのを防ぎながら食事作りを続けている。
まさに山賊だ。

旅館やホテルが提供するような立派な料理ができるはずもない。
必ずどこかが焦げていて、何かの分量を間違えたりしている。
でも、子どもたちにとっては“おいしい”のだ。
火おこしで真っ黒になった顔で、仲間と一緒に作ったごはんを、これまた仲間と一緒に食べる。
子どもたちにとってはおいしくないわけがない。

自分たちのごはんは自分たちでつくる。
こんなあたりまえのなかにある学びが子どもを惹きつける。
だから、山賊キャンプは人気がある。

次回は、オキテその4「チャレンジが基本だ」。
お楽しみに。

そして皆さん、山賊キャンプが再開できるように、どうか想いを寄せていただきたい。
今年こそはこどもたちに学びの機会を。

代表 辻だいち