私たちには山賊キャンプがある ~社会に横たわる無力感、閉塞感に立ち向かう~

私たちNPOグリーンウッドのビジョンは、「あんじゃね」な社会だ。
「あんじゃね」とは、「案ずることはない」すなわち「大丈夫だ」「心配するな」「安心せよ」という意味を持つ、南信州の方言。
人と自然の関係性、人と社会の関係性、人と人との関係性、それらが安心な関係性でいられるような社会を目指している。

ところが、この数年、こどもや青年をとりまく社会環境はどうだろうか。
震災を始め、猛烈な迷走台風、豪雨に酷暑など、人と自然の関係は今や最も危ういステージを迎えている。
世界中でまたぞろ繰り広げられる戦争や内紛は、とどまることを知らず、むしろ時間が逆戻りするかのようだ。
カジノ、公文書偽造、権力集中の弊害の数々…、国民の声に耳を傾けないまま突き進む私たち日本は、いったいどこに向かうのだろうか。
そして、毎日ニュースを賑わす殺人事件やイジメ、虐待は後を絶たず、平然とウソをついて開き直る権力者や上層部など、「人々の良心ってどこにあるのか」と疑ってしまうほどだ。

この夏。
被爆者の目の前で、この国の首相は核兵器禁止条約に批准することを明確に拒否した。
権力の理不尽さに抗い続けた沖縄の魂は、癌の病魔に屈した。
社会に横たわるこの無力感。閉塞感。
人々が「どうせ」と思ってしまうのも無理はないのではないか、と私まで思ってしまいそうだ。

でも、私は想う。
「私たちには山賊キャンプがある」と。
思い通りにならない状況を、力ずくで解決しようとすること、数に任せて相手に言うことを聞かそうとすることは、私たちが目指す「あんじゃね」な社会につながるものではない。
お互いを認め合うこと、尊重すること、支え合うこと、力と知恵を合わせること、そして未来を創ること。
キャンプでは、それができる。
そういうことを大切にできる心を培うことができるのが、キャンプだと、強く想うのだ。

そう、私たちには山賊キャンプがある。
今年は確かに残念な夏だ。
でも、同じこの夏には、8月6日があるではないか。
8月9日があるではないか。
8月15日があるではないか。
熊本からこどもたちが来るではないか。
全国からこどもたちが集まってくるではないか。
それを支える青年が世界中から集まってくるではないか。
そして、そのキャンプを、1600人の村民がこんなにも支えてくれるではないか。

世の中に横たわる無力感、閉塞感に、私たちはキャンプで立ち向かいたい。
この夏に、キャンプを開催できることに幸せを感じたい。
8月15日、夏の日に。

代表 辻だいち