岐阜聖徳学園大学実習|学びが腑に落ちる3日間

 スタッフのくみです。先日、岐阜聖徳学園大学の合宿を開催しました。将来、教師を目指す学生たちと「学ぶとは何か?」について考える3日間です。山村の生み出す暮らしと仲間との対話を通して、この問いを深めます。今回は教育学部の3年生、計7名が参加しました。

 3日間の大まかな流れは、
 (1)導入(アイスブレイク)
 (2)メインプログラム(森での作業)
 (3)まとめのワークショップ といった流れです。
 流れは決まっていますが、暮らしの段取りと森での作業の段取りなどは、全て参加者主体で話し合いながら進めます。なので、一人一人の主体性と「伝える・きく」の意識が非常に重要な合宿です。
 グリーンウッドに到着すると、少しだけ導入の話を。合宿開催前に大学でもガイダンスを行いましたが、実際に場に到着し、改めて全員で共通認識を落とし込み、スタートします。

 そして早速、森へ出発しました。2日目のメインプログラムである森での作業は、学生たちに段取りを組み立ててもらいます。初日はそのための材料を集める時間です。

 フィールドは「あんじゃねの森」です。こどもたちが遊べる森づくりを目指して、グリーンウッドが手入れをしています。今回のメインの作業は「下草刈り」。数年前、部分的に皆伐を行い、植林をしていましたが、段々と下草も生えてきました。このままだと植林をした木に日の光が当たらず弱ってしまうこと、こどもたちが遊ぶ時に見通しが悪くなり安全管理がしにくい、こどもが森に近づきにくいという課題がありました。

 学生たちは森での作業は全く初めてなので、山の作業の基本と安全についてレクチャーをします。そして、実際に配置に付いて作業開始です!初めは慣れない手つきでしたが、一時間くらいの作業をして、段々とコツをつかんできました。実際に手足を動かしてみると、作業による森の変化も感じられます。

 グリーンウッドに戻り、食事とお風呂の準備です。食事作り、風呂焚き、掃除など暮らしは学生主体でつくります。また、夕食の時間などの時間設定も学生たちに決めてもらいます。
 しかし、初日の夕食は時間通りに食べ始めることができませんでした。時間をみんなで決めたものの、一人一人がなんとなく過ごしてしまったこと、「このままだと時間に間に合わない」と気が付き、呟いた学生もいましたが、みんなに声をかけるまで行動しなかったこと、などいくつか原因がありました。今回の失敗をふりかえり、改めてみんなで暮らしをつくる場であること、段取りや目標のために一人一人が意見や時間を持ち寄る重要性を確認しました。

 そして夕食後は、2日目の作業の段取りを話し合いで決めます。到達目標、進め方、役割分担など、今日の作業で集めた材料を基に考えます。
 話し合いのルールは、多数決ではなく全員の合意で決めること。夕食の失敗を通して「声を出すこと」の大切さが染みたのか、自分の考えを臆さず伝える姿があり、話し合いの輪もグッと近づきました。

 2日目。朝ごはんを食べて、掃除をして、森へ出発です。今回は時間通りに出発できました。みんなで気持ちを寄せたおかげです。森に到着すると、前日に決めた段取りを確認して作業開始。作業範囲の広さを見て「終わるのか…」という雰囲気もありましたが、とりあえずやってみよう、と黙々と進めていきます。

 お昼休憩も挟んで、一日がかりの作業が終了しました。都度、作業の進捗を確認し合い、人手が足りていなところは助けを求め合うことで、人員と時間をフルに活用し、自分たちで設定した目標の作業を終えることができました!
 冬でも葉っぱがついている、常緑樹のソヨゴやアセビなどの下草は全て刈り、ファイヤープレイスに必要だったベンチも作りました。森が随分と明るくなりました。
 私自身、作業の見積りとして終わらない可能性もある、と踏んでいたくらいの作業量でしたが、予想を超える達成度でした。人の力ってすごいです。

 作業の成果を分かち合い、少しだけ遊んで、森を後にしました。施設に戻ると、片付けと夕飯づくりとお風呂焚きが始まります。

 2日目も終了しました。合宿中は手足を動かす暮らしから発見すること、仲間との関わりの中で発見すること、学びや気づきが次々と湧いてきます。今回の合宿では、初日にふりかえりシートを配り、感じたことや思ったことを書き残してもらいました。お風呂は男性と女性が交代で入るので、少し余白の時間もあります。そんな時間があると、黙々とふりかえりを書き、いつの間にかみんなが机に集まって、自然と対話が始まる。とても心地よい空間が醸し出されていました。文字にする、人に伝えるために声に出すことで、自分の発見の解像度も上がっていきます。

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 最終日はふりかえりの時間です。3日間の体験を基に「学ぶとは何か?」を言語化します。まずは個人でふりかえり、仲間とシェアをして、グループごとに「学ぶとは…」に続く言葉をワークショップ形式で生み出してもらいました。

 今回の合宿で生み出した言葉は以下の通りです。
 学ぶとは…
  「自ら挑戦して思ったこと、感じたことを次へつなげていくこと」
  「人との関わりや経験から自分の考え・気づきを得て行動すること」
  「手足を動かし、感じ、考えること。その繰り返し」
  「輪の中で自発的に行動し、まるごと自分の根になること」
  「仲間とともに、やってみて、生み出していくこと」
 学生たちが対話を通して生み出した言葉、先生と私たちスタッフが彼らの様子を見て生み出した言葉たちです。ワークショップでも全員の合意で決めることを大切にしてもらいました。自分の意見を伝える。自分と異なる意見も一旦、保留する。少し違和感がある、気になることは伝える。段々と踏み込んだ対話が行われていました。
 数日間でしたが、一人一人ができることを持ち寄って、ともに暮らしをつくったから、自分や仲間の知らなかった一面も知り、互いを認め合う対話ができる関係になったのかなと思いました。

 最後は3日間の学びと今後のアクションを共有します。
「これからは体験を自分から探したい。風呂焚きや森作業など、ほとんど未知だったことをやってみて、知らない世界はたくさんあると思った。新聞やスマホで見ただけでは分からないことがいっぱいある。とりあえず、自分でやってみることを自分から探したい。」
「自分が思うことを伝えようか悩んだこともあったけど、伝えて良かった。自分はもっと気楽で在って良いと思った。自分一人で抱え込まず、人に相談すると良いことがある。」
「自分で初めて薪でお風呂を焚いて、火を見ながらお風呂に入れたことはうれしかった。みんなの力で温かいお風呂に入れたことがとても印象に残った。」
「誰かのためにやったことは、自分のためにもいいことがある」
「失敗はいいこと、と思った。失敗は恥ずかしいことと思っていたけど失敗も大切な経験、そこからまた考えたらいい、と思うことができるようになった」
 教員志望の学生たちですが、教育者として、人として、とても大事な学びを持ち帰ってくれたなぁと感じています。もしかしたら、ここで残した言葉はいつか忘れてしまうかもしれないけど、手足を動かして、五感を通して、腑に落ちた学びはきっと身体が覚えているはずです。それらが彼らの今後の原動力となったらいいなと願っています。

 今年も熱い3日間でした。空っぽになった施設も、なんだかホカホカしていました。


 グリーンウッドでは大学生向けに1泊~3泊の合宿受け入れを行っています。ゼミ合宿、実習、集中講義等で活用していただいています。
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