模範解答がない中、自分の言葉でこどもと対話した|長期ボランティアのたまちゃん

私は、こどもの頃何度も山賊キャンプに参加してきました。親元を離れ、初めて出会う仲間と大自然の中で過ごすという大きなチャレンジは、自分自身に大きな自信を与え、今も様々なことに挑戦する原動力になっています。今回長期ボランティアには、評価に縛られない主体的な学びの場である山賊キャンプで、こどもたちがどのように新しいチャレンジと向き合っていくのか近くで感じたかったから参加しました。

長期ボランティアとしてキャンプに関わり改めて感じたことは、山賊キャンプはチャレンジを楽しいものにする環境が整っているということです。キャンプが始まると火おこし、調理、工作、川遊びなど、こどもたちのやりたいことを実現するためにいろいろなチャレンジが必要です。みんながみんな新しいことに次々挑戦し誰ひとりそれを否定する人がいない、それが山賊キャンプの良いところだと感じています。

キャンプの中で一番印象的だったのはたくさんのチャレンジを前に、何にもとらわれず自分で考え楽しむこどもたちの姿です。ご飯作りの際、豚こま肉でピーマンの肉詰めに挑戦している族がありました。“ピーマンの肉詰めはひき肉”という既存の概念に捉われない姿を見て、自分自身が知らぬ間にいろんな可能性を消去していることに気付かされました。また、ノコギリを使った工作では、各々のアイデアと想像力を駆使してオリジナルの竹の弓や水鉄砲、剣を作っていました。初挑戦ながら、どうやったら剣の強度を保った状態で鍔をつけられるか試行錯誤している子もいました。やりたいことや作りたいものを自分達の手で実現していく姿は、成績や評価にとらわれず、わくわくをカタチにする素敵な学びだと感じました。

私が合計3組参加したチャレンジコースでは、水道が近くにないためベーシックの本部まで水汲みに行きます。組によって水汲みの反応はそれぞれで、まだ水が残っている状態でも率先してタンクを持っていってくれる組もあれば、水汲みに人が集まらず相談員さんの「誰か水汲み行こう」という声が聞こえてくる組もありました。火おこしでは、マッチをつけるのに熾烈な順番争いを繰り広げる族もあれば、「怖いからやって〜」とすぐに決まる族もあり、その違いを見ることができるのもとても面白かったです。

長期ボランティアは、一般ボランティア(相談員)と比べるとこどもとの距離が多少遠く感じますが、こども達1人ひとりの反応の違い、組や族による雰囲気の違い、相談員さんの声の掛け方など、一歩引いた目線でたくさんのことを発見できるためとても貴重な経験になりました。特に、初対面のこどもたちが族として団結していく瞬間を外から見ることができるのは長期ボランティアならではだと思いました。

そして、今回のキャンプはこどもたちだけでなく当然私自身にとってもチャレンジの連続でした。ホームシックで泣いている子や、怪我や失くしもので落ち込んでいるこどもたちの話を聞いたり、火おこしや調理のサポートに入ったりと、本部スタッフとしてたくさんのこどもの不安な気持ちや新しい挑戦と向き合いました。模範解答がない中、自分の言葉でこどもたちとたくさん対話をしました。時にはケンカの仲裁に入ることもあり、どのように声をかけるべきか迷う場面もありましたが、私自身の言葉を伝えることで、こどもたちもまっすぐ応えてくれることがとても嬉しかったです。キャンプの回数を重ねるにつれ、先生でも保護者でもない等身大の自分でこどもたちと関わる楽しさを感じることができました。川遊びで一緒に滝に打たれたり、なかなか火がつかない釜戸を組み直したり、こどもたちと同じ目線でお互いのチャレンジの瞬間を共有できることがとても嬉しく幸せな時間でした。

事前準備から撤収キャンプまでの約1ヶ月半に及ぶ泰阜での暮らしは、常に時間に追われていた都会の慌ただしさを忘れ、自然と共に生活する穏やかで刺激的かつあたたかい日々でした。仕事や学校に一生懸命になり生活がおろそかになることが多い中、だいだらぼっちの子供達やグリーンウッドで働くみなさんが自分達の“暮らし”に軸を置いている姿がとても新鮮に映り、自分は人生の中で何を軸に置きたいのか深く考えさせられました。あっという間に過ぎていった8組のキャンプ期間が終わり寂しくもありますが、今回の長期ボランティアを通して、自分自身が発見したわくわくをどのように次のチャレンジに繋げていくか楽しみです。子どもたちには山賊キャンプでのたくさんの挑戦を糧に、これからの生活でもいろいろなことに挑戦してほしいと思うと同時に、私自身もこの1ヶ月半の思い出と学びを大切に、これからもたくさんのこどもたちと関わっていきたいと思います。