100年かけて育った木の行く先|泰阜中学校協働事業

こんにちは!スタッフのくるです。6月14日に泰阜中学校で「森の授業」を行いました。今回はその様子をお届けします。

あんじゃねの森のこと

泰阜村には「あんじゃねの森」と呼ばれている森があります。かつては旧泰阜北小学校の学校林としてこどもたちの学びの場として使われていました。現在は村のこどもたちの遊び場として、活用されています。あんじゃねの森について詳しくはこちらをご覧ください。→村の子にとって身近な「あんじゃねの森」とは!?

あんじゃねの森での活動について真剣に聞いています

森の授業のこと

泰阜中学校の技術科制作では、2020年度より泰阜村で育った木を活用しています。森の授業ではその材となった木が誰によって、どのように育てられてきたのか、背景にあるストーリーを伝えてきました。その中で森の環境や、自分たちの暮らしと森との関係についても考えていきます。中学生のみんなのおじいさん、おばあさんがこどもだった頃にわらび採りや薪集めに通ったあんじゃねの森は、活用されなくなっておよそ40~50年がたち暗くなっていました。しかし、そこから村のこどもたちや大人たちと一緒に20年をかけて間伐や整備を行ってきたことで、こどもたちの遊ぶ声が響く明るい森が蘇ってきたのです。

有志で取り組んできたこの活動ですが、関わる人達の生き生きとした姿や学びの深まりを目の当たりにするにつれ、体験からの学びに勝るものはないと感じてきました。せっかくなら、泰阜で学ぶすべてのこどもたちに機会を持ってもらいたいと思い、実現した1つが中学校の授業で泰阜産の間伐材を活用してもらうことでした。

2020年度は、中学1、2年生のみなさんと一緒に、ヒノキを切り倒した跡地に実のなる広葉樹を植樹しました。2023年度は、切り倒したヒノキを山から運び出す作業を、中学2、3年生のみなさんと一緒に行いました。

間伐材で作品をつくるというだけでなく、実際に森の中に身を置き、体を動かし作業することで、木材が他のどれとも違う愛着あるものになるのだと考えるからです。そうすると、遠い世界の、難しい問題にみえる環境問題や社会問題が身近に思えたり、今の自分の暮らし方について具体的に考えられるようになるのだと思うのです。そういった体験をコツコツと重ねることで、自分の暮らしが自然と深くつながって営まれていることを実感していってもらいたいというのが願いです。

授業の様子

ただ、製材板を手渡すだけではもったいないので、泰阜中学校よりお時間をいただき、「森のはなし」をさせてもらってきました。製材板がどこから来たのかという話の中に「自分自身と森や泰阜村との繋がりを感じてほしい」という思いを詰め込みました。座学では、森や木と私たちの暮らしとの繋がりを考えたり、泰阜村と森との関係が紡いできた歴史を伝えたりしました。

ワークショップでは「森と自分のこれから」について考えました。まずは「自然との思い出」について班でふりかえりました。あんじゃねの森や村の自然の中であそんだことのあるこどもたちが多く、その時のことも思い出して話をしていました。たき火でマシュマロを焼いたことやキャンプしたこと、ツリーハウスを作ったこと、天竜川をカヌーで下ったことなど具体的な思い出が鮮明に蘇ります。それ以外でも、米作りや薪割りなど村の暮らしならではの特別な体験もありますが、友達と鬼ごっこや野球など体を使って仲間と遊ぶ空間が自然の中だったという気づきもあったようです。敢えて言葉にしてもらうことで、こどもたちの中に残る経験が沢山あるのだと感じました。次に、そのような豊かな自然や、経験をこれからも残していくために、自分たちが出来ることについて考えました。ごみをゴミ箱に捨てる、森を大切にする、自分たちの体験や知識を伝えていく、道具を正しく使えるようになる、3R(リユース、リサイクル、リデュース)、物や道具を長く使う、などたくさんのアイデアが上がりました。

最後に、木の名前を当てるゲームをしました。様々な木が並べられ、特徴を比較し、名前を当てていきます。特徴を掴むのがとても難しく、なかなか難易度の高いゲームでしたが、答え合わせの時の解説に興味津々で聞き入っている子もいました。

グループで話し合ったことを発表しました

最後に

今回、授業をして、こどもたちの中に、小さい頃に自然の中で遊んだり、活動をしてきた記憶がきちんと残っていることを強く実感しました。また、泰阜で100年かけて育った木が、製材され、中学生の技術科で使う材になるということは他の地域ではあまりないことだと思います。それは当たり前でないこと、これからも自然環境を守っていく為に担い手が必要になっていくこと、その担い手になるのは自分たち自身であることをこの技術の時間、木と触れ合う時間で実感してもらえたら嬉しいです。

なかなか難しかった木の名前当てゲーム