だいだらぼっちの卒業生にインタビュー ちっくん(2003-2005年度参加)

好き嫌いを問わず色々な仲間と共同生活することで、社会に出てから人間関係や物事を進める上で柔軟な対応が出来るようになったと思う

だいだらぼっちの卒業生・保護者にインタビューするこの企画、今回はだいだらぼっち18期生のちっくんです。

ちっくんは、だいだらぼっち十八年目から二十年目(2003~2005年度)に、中学1年生~3年生までの三年間をだいだらぼっちで過ごしました。キャンプにも電車でずっと来ていて無邪気な小学生時代も知っているので、笑ったらかわいい要素はずっとありました。とにかく頭の回転が速くて書道が上手だったことを覚えています。みけの息子とも同級生だったので、そういえば一緒にけんちき(元スタッフ)に勉強教わってたなぁ、なんていうことも思い出しました。それではインタビュースタート!

※今回はご本人の希望により現在の写真掲載はありません。参加当時の写真のみとなりますのでご了承ください。

ー本当にお久しぶりですね。早速ですが、自己紹介をお願いします。

合原地亮(ごうはらちあき)32歳です。ちっくんのキャンプネームで中学3年間だいだらぼっちに参加していました。約20年前です。当時は薪割りが得意で物作りが好きなイケイケの問題児でしたが、今はただのおじさんで結婚してこどもが2人います。 小学4年生の娘と小学2年生の息子です。

ーちっくんは今どんなお仕事をしていますか?それはどんなことを想ってしていますか?

仕事はIT関係+営農型太陽光発電所の設計や開発、コンサルティングをしています。個人的にはリフォームや不動産もしています。昔から物作りが好きなので好きなことを出来るだけ多くできるように無意識に仕事を選んで今に至るのかもしれません。

ー営農型太陽光発電って、みけはよく知らないのですが、どんな発電なのですか?営農型っていうのがよくわからないので教えてください!

農地にハウスのような背の高い架台+太陽光パネルを設置し、下で農作物を作りながら上で発電を行うことです。普通の太陽光発電より太陽光パネルの設置面積を減らし、高い場所に設置することで太陽の光を農作物にも届くようにして、出来る限り生育の妨げにならないようにします。太陽の光を分け合うことからソーラーシェアリングとも呼ばれています。太陽を追いかけて発電量を上げたり逆に地面に光が多く届くように制御できる装置を開発したりしています。

ー太陽の光を分け合うっていう感覚がいいですね。
お仕事で大変だったことや困ったことはありますか?また、それらをどう乗り越えてきましたか?

仕事をしていると常に問題だらけですが、一度失敗を経験していると解決も早くなります。失敗を恐れず挑戦をしていると誰よりも失敗経験がある人になり、解決できる人になるのかなあと思います。あとは好きなこと、求められることを出来るだけ仕事にしていると自ずと勉強もするし大変なことも乗り越え甲斐が出てくると思います。

ーお仕事をしていてよかったと思うことや、一番の思い出などあれば教えてください。

自分がいなければ実現しなかったと思えるプロジェクトが実現できた時や自分のアイディアで新しい製品開発や、問題解決ができた時です。

ー自分がいなければ実現できなかったプロジェクトって、さらっと言ってますが、「自分がいなければ」って思えるってすごいことだと思います。自分(ちっくん)のどんなところ(知識や技術とか何か)が必要不可欠だったのですか?そう言ってのけるにはきっと努力もたくさんしていると思うのだけどその時の大変だったことや逆に面白かったことってどんなことでしょう?

自分で出来そうなことは出来る限りやってみることだと思います。理解や経験がある分野を増やすことでアイディアや解決策が思いつきます。あとは出来る限り数字で物事を置き換えることも仕事では必要です。どんなに良いアイディアも採算が合わなければ実行出来ません。不動産は出来る限り自分でリフォームしてきました。電気、水道、内装、外装と一通りできます。休みの日や仕事終わりにコツコツしてきたので大変でした。怪我や失敗もいっぱいしました。疲れてはいるけど本業も疎かにしてはいけないので忙しい時期は徹夜していました。
自分でやることで、どれくらい時間とお金がかかるか分かるので、人にお願いする時も苦労や原価など大体理解できます。プロジェクトを進めるにはそれぞれの分野に特化したスペシャリストも必要ですが全体像を把握できる人間がいないと実現は難しいと思います。

ーなんだか中学生の頃のちっくんを想うと、別の人と話しているみたいです(笑)。こんないい方したら失礼だけど、大人になったんだなぁ・・・って、しみじみ思ってしまいました。
今のお仕事に就くまでに、ちっくんが体験したことなどきっとたくさんあると思うので教えてください。

学校の勉強はあまりしませんでした。興味があることしか調べないし、やりたいこと以外行動しない人でした。(学生時代は遊んでばかり。みんなはしっかり勉強しよう!)ただ、人間は一人では生きていけないし、身の回りの物(家、車、道具、材料、食料、エネルギー、服など)も自分一人で1から作ることはできないことは理解していたので、欲しい物、必要な物を手に入れるためには自分も自分の得意分野で人に何かを提供しないといけないと思っていました。
たまたま物作りが好きだったので、設計や内装工事の仕事をしているうちに人から求められるようになり、昔ならやらないだろう嫌なことも仕方なくやるようになり、出来ることが増えてさらに求められるようになり、気が付いたらなんでもやらないといけなくなって今に至るといったところでしょうか。

ーなんていうか、さっきの太陽の光を分け合う、っていう感覚に通じる感じを受けるのだけど、それぞれがやれることを持ち寄って、お互いにシェアして社会が成り立っているっていうのでしょうか。「お互いさま」とか「結(ゆい)」といった感覚が呼び起された気がします。
そういえばちっくんってちょっと変わった大学に行ってませんでしたっけ?在宅で授業受けてるみたいな…。
今はコロナでみんなそんな授業(オンライン)を受けた経験がある人ばかりだけど、当時は珍しかったと思います。そこでは何か面白い経験はありましたか?

当時珍しい大学に一期生として入りましたが、実はすぐ飽きて休学してしまいました。(今は退学扱いかも…)必要に迫られないと内容が頭に入らないタイプなので早く仕事を始めた方が良いと思ったからです。オンラインなので友達などと仲良くなる前で早い判断ができて逆に良かったかもと今は思います。

ーなるほど、納得です。
ところで、ちっくんは結婚されて、お子さんもいらっしゃいますが、家庭をもって、こどものころには気づかなかったことや改めて感じたことなど何かありますか?

実は中学生の時、結婚するつもりはありませんでした。幼少期は子供100人欲しいと言っていたようですが・・・。成長する過程で考えが変わっていったのだと思います。
幼少期は大勢家族がいたら楽しいだろうという単純な考えで沢山欲しいと思い、中学生の時は色々な経験をして、知識を身につける中で自分の無力さや限界を知り、自分より弱い存在を邪魔に感じ、大人になるにつれ成長することで余裕ができてきて別に家族がいてもいいかとなったのだと思います。色々な考えがあると思いますが個人的には家族がいて良かったと思います。人生に飽きないので。

ー家族がいると人生飽きないとは、どういう点で飽きないのでしょう?

自分がしたいことは基本的にできるようになったので、次はこどもがどうやって成長するか見守ることができる点です。

ーなるほど、なんていうか、ずっとさっきからちっくんの話を聞いていて、亮一くん(ちっくんのお父さん)と話してるような感覚がどこかにあったのだけど、これですね!きっとちっくんもご両親にその成長を見守られてきていて、しかもその成長がご両親にとっても、ちっくんの言葉を借りれば「飽きない」ということなのでしょう。順繰りに受け継がれているというか、送られてきている感じがします。
話は変わりますが、ちっくんがいたころのだいだらぼっちはどんな感じでしたか?

ちょうど母家が建て替わったタイミングで色々な変化があった時代だったと思います。
登り窯やナイフ作り、小屋作りなど色々なことをしていました。

ー当時の出来事で一番印象に残っていることはなんですか?また、面白エピソードがあったら教えてください。

記憶力が無いので具体的なエピソードはあまり思い出せないのですが何か作っている時の事が一番印象に残っています。
それから、面白いか分かりませんが当時結婚しない宣言をしていたらしく、結婚したら家電をプレゼントする!と紙に書き残していたらしいので、必要なものでリクエストがあれば送ります。

 

ーそんなこと言っちゃって大丈夫ですか?すごいリクエストがいくかもしれませんよ!(笑)
だいだらぼっちでの暮らしは今のちっくんにどんなふうにつながってますか、あるいはどんなふうに位置づいていますか?

好き嫌いを問わず色々な仲間と共同生活することで社会に出てから人間関係や物事を進める上で柔軟な対応が出来るようになったと思います。

ー寛容になったんですねぇ・・・。
ちっくんが今夢中になっていることはありますか?あれば教えてください。その魅力も!

特に無いです。(やらないといけないことは沢山あります)ただ、やると決めたことは真剣に取り組んだ方が上手く行っても行かなくても納得できて成長できると思います。

ー本当にそのとおりだと思います!
そんなちっくんの夢を教えてください。

周りの人と普通に生活していくことです。

ー周りの人と普通に生活していくこと、の「普通」ってどんな感じですか?今は普通じゃないのですか?

今も普通です。普通とはご飯が食べられて社会生活を送り安心して寝られることです。

ー大事なことですね。世界中がそんな社会になったらいいと願います。
それでは最後に今のだいだらぼっちのこどもたちにメッセージをお願いします!

少年よ大志を抱け 知らんけど

ー少年よ大志を抱け 知らんけど  の「知らんけど」が意味するところは?

多様化の時代なので強制感のある言葉を和らげる「知らんけど」ですね。

ーありがとうございました。何気なくつけた流行り言葉にシャイなちっくんらしさが出てますね!
今日はありがとうございました!

 

言葉を選ばずに言えば、良くも悪くも頭がいいというイメージだったちっくん。当時願っていたのは、その頭の良さを世のため人のために使ってほしいということでした。成人式で泰阜村に来てくれた時はまだイケイケで、一体どんな大人になるんだろう?って思っていたのですが(ごめんなさい!)、インタビューをしていたら「普通な暮らし」が「夢」だと言ってのける、しかも「今も普通に暮らしている」と言ってのける、つまりすでに「夢」はかなっているので、その「普通な暮らし」の持続が「夢」だということなのだと思いますが、その暮らしを社会として持続させるために必要なことをお仕事としているとみけは理解しました。なんともカッコいい大人になっているではありませんか!二児の父ちゃんとなったちっくんにとっても会いたくなりました。そうそう、今も宿直室には「結婚したら電化製品を寄付する!」と書いた紙が貼ってあります!ぜひリクエストしたいと思いますのでドキドキしながら待っていてください(笑)。
きっとお子さんたちもちっくんに似て屈託のないとびっきりの笑顔を見せてくれるのでしょうね。ぜひご家族みなさんでだいだらぼっちに顔を出してください!楽しみにお待ちしています!