この連載企画、2020年から毎年やっていたが、最後の「オキテ8」までたどりついたことがない。
たどりつく前に、コロナ感染が拡大し、中止に追い込まれたからだ。
過去最高の感染状況が続くが、それでも「7」まで来た。
山賊キャンプの開催を信じて、連載を続ける。
大人気の「信州こども山賊キャンプ」。
その人気のヒミツに迫る連載企画、第7回。
今回は、「オキテその7 仲間はずれは許さない」
その七 仲間はずれは許さない
山賊はケンカする。でもイジメは許さない。
一人の喜びは人数倍にして、みんなで笑う。
一人の悲しみは人数で割って、ともにわかちあう。
山賊キャンプではそんな仲間を作りたい
「俺がやる」
見るからに身体が大きくて、声も大きいT君。
T君は、常に火熾しをやりたがる。
「手伝うな!」
仲間が手伝おうとするとついついそう言ってしまう。
雰囲気が険悪になる。
T君も火熾しが決して上手いわけではないので、どんどん時間がたってしまう。
でも、みんなT君に何も言えなくてどうしようもない。
そこで私は、ボランティアリーダーも含めてグループのこどもを全員集合させて、自分の協力の度合いを自分でチェックしてもらい、その理由をみんなの前で言ってもらった。
「手伝おうと思ったら、火おこししている人に、手伝うな!と言われてやる気がなくなった」
協力の度合いが低かった子どもが言う。
「自分だけやっても進まないことはわかっている」
T君も、心境を吐露した。
「実は自分でもどうしていいかわからなかった」という。
「がんばればがんばるほど、みんなが自分から離れていくことをわかっていた」という。
このT君の心境を聞いて、皆は積極的にT君に声をかけるようになった。
T君もまた、自分だけがんばらずに、少し我慢してみんなと一緒に火熾しを手がけるようになった。
すると食事作りがうまく進み、みんな協力してよかった、と思うようになった。
イジメや虐待、弱者への攻撃はどうしてこんなにも多くなったのだろう。
今や報道されない日はないというほどだ。
その内容も凄惨さを極め、目を覆うばかりだ。
どうすればイジメはなくなるのだろうか。
私はその一歩は、隣の人の声に耳を傾けることだと思っている。
こどもはおしなべて、自分の悲しみには敏感だけれど、人の悲しみは気づけない。
「死ね、殺す」という言葉を平気で使う。
こどもは自分一人が暮らしていくのに精一杯だ。
とても他の人のことには気が回らない。
だからといって、人を傷つけていいかというのはやはり違う。
となりの人の気持ち、相手の気持ちをわかろうとしないと、とても力を合わせて暮らすことはできない。
T君は周りの人の気持ちに耳を傾けられなかった。
でも周りのこどももT君の気持ちに耳を傾けられてはいなかった。そ
れでは事がうまく進むわけがない。
それが続くと、いつのまにやら仲間はずれができあがってしまうというわけだ。
一人の子の苦しみ悲しみ喜びに、みんなが耳を傾けることが必要となる。
「一人はみんなのために。みんなは一人のために」
言葉が死語に近くなったとしても、それはこどもたちに伝えなくてはならない。
そしてこども同志が理解し、実践することを応援しなくてはならない。
山賊キャンプはそんな仲間作りを目指したい。
代表 辻だいち

NPOグリーンウッド元代表理事(2009-2024)
2017年までのブログ「わが大地のうた♪」はこちらからご覧いただけます!