コロナの渦中。自然学校は何をしている?| バズ編

キャンプ中止のこの夏
左京川キャンプ場で村のこども向け学童にチャレンジ

コロナウイルスが猛威を振るい、当然のように小さな山村にも大きな影響を与えています。グリーンウッドは夏休みの事業「信州こども山賊キャンプ」の中止を4月に決定。これまでの「当たり前」の仕事が崩れ去りました。

全国からこどもを集めてキャンプを実施することが難しくなったコロナの中、私たちグリーンウッドのスタッフは何を想い、何にチャレンジしてきたのかをお伝えします。
今回はバズにインタビューします。

Q1. コロナウイルスで山賊キャンプが中止となりました。その時の気持ちを教えてください。

3月に学校が休校になったころはまだキャンプができると思っていました。むしろ東京オリンピックの影響でキャンプのバスの発着場をどうしようかと考えていた時期だったので、キャンプよりもオリンピックができるのかなと。それがオリンピックだけでなく山賊キャンプも中止となり、スタッフになって8年目、まさか山賊キャンプのない夏があるなんてと戸惑いました。
中止の判断は今でも間違っていなかったと思います。でもキャンプを楽しみにしていたこどもたちの居場所を失くしてしまうということに辛い思いがありました。

Q2. その他にもコロナウイルスの影響があったと思います。周りはどんな様子でしたか?

私が住む集落はお年寄りが多く、しかも六戸しかない小さな集落です。とにかく自分が感染源になってはいけないという緊張感がありました。コロナがニュースになり始めたころは、情報も少なくて、何が正しくて何が間違っているかもわからない状況。いろんな情報に惑わされて、どうすればいいか悩む日々でした。改めて誰かの意見を待つのではなくて、自分の頭で考える必要性を感じました。

仕事では学童の担当だったので、こどもたちがどんなに元気でも、毎日体温を計らなければならないことが苦しかったです。学校でもマスクを着け続けなければならなかったり、学年を超えた関わりができなかったり、給食は前を向いて食べなければならなかったりと、制限されることが多かったようです。学校ではキッチリやる分、溜めたストレスの発散が学童になっている様子もありました。

Q3. 山賊キャンプ中止もあって、夏休み中は村の学童を請け負うことになりましたが、どんな様子でしたか?

山賊キャンプに参加する子は、キャンプに参加したいというモチベーションのあるこどもたちです。でも学童は親御さんがお仕事に行かれている間の預かりという役割もあるので、来たいわけではないこどもたちもいました。とにかく目指したのはこどもたちに「来て良かった」、保護者からは「出してよかった」と感じてもらうことでした。そのために行ったのは「こどもたちがやりたいことをやれる場」にすること。コロナの影響で、学校でも不自由さを感じているこどもが多かったので、押し込めるよりも解放させてあげようと、そのためにどうするか考えました。

学童の初日には山賊キャンプのように「やりたいこと」を出す会議を開いたり、左京川キャンプ場に学童を実施した12日間中5日間訪れ、自由に川遊びをできるようにしました。

今年はとにかく暑く、拠点が学校だったこともあり、日中はエアコンの効いている部屋にいることも多かったのですが、それでも学校の土手でソリ滑りをしたり、サッカーをしたりと身体を使って遊びました。

川遊びは回数が多いこともありますが、月一回行っている「あんじゃね学校」という村の子対象の体験活動でも何度も訪れていたので、「沢登りで犬戻りの滝に行きたい」「飛び込みするならあの場所」「ここら辺にはでかいカエルがいる」など、繰り返しの中で、こどもたちの遊びが深まっているのを感じました。川遊びに飽きた子も、日陰でずっとおしゃべりしていたり、きれいな石を拾ってペンダントを作ったり思い思いに過ごしていたのが印象的です。

ゆくゆくは村の川で遊ぶことが当たり前になって、風土となってくれればと考えています。極論ですが大人がいなくても遊べるくらいに、何が危険でどう遊べばいいかが、高学年のこどもから口伝されるような形になれば。
そんな風に考えていたら、今回学童のスタッフに村の高校生がアルバイトとして参加してくれたのですが、その高校生が川でパニックになったら「※あんじゃね!あんじゃね!あんじゃね!」と言うんだよと話していて。小学生時代にあんじゃね学校に参加していたので、その時教わったことを覚えていたのだそうです。これまでやってきたことが繋がってきているのだなと改めて感じました。

※あんじゃね!あんじゃね!あんじゃね!…山賊キャンプで使う合言葉。川ではパニックになって溺れることもあるため、落ち着かせるために使います。あんじゃねは泰阜村の方言「大丈夫だ。心配するな」の意味です。

また今回はたくさんの方と協働で行いました。先ほど話した高校生アルバイトや村の方たち、学校を拠点に活動したので、学校や教育委員会の方などです。これまでも村主催で学童は行われていて、そこに村の高校生が参加していました。まずこの循環があること自体が素晴らしいことですが、そこにグリーンウッドが普段キャンプのボランティアに行っているような研修を行ったことで、役割も明確になり、安心して参加できたと話していました。こどもたちにとっても良く知っているお兄さん、お姉さんなので、話は通じるし遊んでくれるし、なによりスタッフよりも近い年の存在は大きな影響を与えていたように感じます。

夏休みが終わり保護者の方からは「楽しく行けて本当に良かった」という言葉をいただけました。また普段学校では居づらい子も、異年齢の関わりや、自分のペースでやりたいことを存分にやれることで居場所になったのではないかと感じています。

Q4. これからどんなことに取り組んでいきますか?

このコロナのおかげで自分がここに来た意味の問い直しになったと思っています。ただキャンプをやりたいから就職したのではなくて、キャンプを通して何がやりたかったのか?ということです。それは学童やだいだらぼっち、それこそオンラインでも可能なことはあるんじゃないかと。コロナ前の日常に戻るにはまだまだ時間がかかるように感じています。だからここに来なくても「山賊キャンプが大切にしていること」を提供できるものを発明していきたいと考えています。期待していてください!

Q5. このグリーンウッドの窮状にたくさんの寄付をいただきました。寄付していただいたみなさんに一言。

まずはたくさんのご寄付をいただき、ありがとうございました。
自分自身は働いて8年ですが、ここで仕事をしていると達成感もある一方、自分たちだけでやっていると勘違いしてしまいがちです。グリーンウッドが35年続けて来られたのには、支えてくださった方がたくさんいるからなのだと改めて気づかされました。いろいろな人の想いを現場で返していきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

全国の自然学校と協働して行っているクラウドファンディング
「自然学校エイド」は10/16まで。
ご協力をお願いいたします。