日本財団が全国約250か所で展開している「第3の居場所」事業。
放課後の安心できる居場所として、学習支援や生活リズムを整える支援が日々行われています。各拠点では体験活動にも力を入れており、プログラミングや季節のイベントなど、日常の中で実施しやすい取り組みが多く行われてきました。
一方で、「自然体験にも連れていきたい」という声は以前からありました。
しかし、活動拠点がないこと、道具の準備、指導できるスタッフのスキルなど、いくつものハードルがあり、受け入れ先を探している状況が続いていました。日本財団としても、一過性の楽しみではなく、非認知能力を育てる自然体験への期待を強く持っていたそうです。
そんな中で実現したのが、今回の1泊2日の「森遊び 山賊キャンプ」でした。
今回の取り組みは、NPOグリーウッドとしても初めての試み。
期待が大きい一方で、「本当にうまくいくだろうか」という不安も正直ありました。しかし、これまで40年にわたりこどもたちとキャンプを続けてきたからこそ、我々にできることがあるという確信もありました。
参加したのは、東京から「認定NPO法人キッズドア」、長野県内から一般社団法人フォースマイルの2つの第3の居場所拠点。それぞれに日常や背景の違うこどもたちが集まり、どんな時間になるのかドキドキしながら当日を迎えました。

キャンプ初日は、グリーウッドの施設で「山賊会議」からスタート。
こどもたちが集まって、「何をやりたいか」「どう過ごしたいか」を自由に出し合います。
決まったあとは、みんなで鬼ごっこやだるまさんがころんだ。
大人も一緒になって本気で走り回り、あっという間に距離が縮まっていきました。

夕方からは、ご飯作りチームと風呂焚きチームに分かれて作業開始。
慣れない作業に戸惑いながらも、声をかけ合い、協力する姿が印象的でした。
夜は、こどもたちが自分たちで企画した肝試し。
笑い声と悲鳴が入り混じり、大盛り上がりの時間に。最後は満点の星空を眺めながら、あっという間に1日目が終わりました。

2日目の朝ご飯も、こどもたちが作ります。
自分たちで作ったご飯を食べたあとは、森へ出かけました。
森の中では、本気の鬼ごっこ。
スタッフも全力で走り、「大人げない!」というこどもたちの不満の声が上がるほど(笑)。それも含めて、思い切り体を動かす時間になりました。
お昼は煮込みうどん。
たくさん遊んだあとに、みんなで囲む温かいご飯は格別で、鍋はあっという間に空っぽになりました。
振り返りの時間に聞こえた、こどもたちの声
キャンプの最後には振り返りの時間を持ちました。
「みんなでやった鬼ごっこが楽しかった」
「ご飯がうまく作れてよかった」
「また遊びに来たい」
そんな素直で嬉しい声が、次々に聞こえてきました。
今回の自然体験キャンプであらためて感じたのは、「こどもが安心して挑戦できる環境」が整ったとき、こどもたちは驚くほど主体的に動き出す、ということでした。こどもたちは、日常の中で「失敗しないように」「迷惑をかけないように」と、無意識に自分を抑えて過ごしている場面も少なくありません。自然の中での暮らしや遊びは、正解がひとつではなく、自分で考え、選び、時には失敗することが当たり前の世界です。だからこそ、「やってみたい」「自分で決めたい」という気持ちが自然と引き出されていきます。ご飯づくりや森遊び、仲間との話し合いを通して積み重ねた小さな経験は、「自分にもできた」「仲間と一緒なら大丈夫だった」という確かな実感として、こどもたちの中に残っていきます。それは、教室の中だけでは育ちにくい、非認知能力や生きる力の土台となるものです。第3の居場所事業にとって、自然体験キャンプは単なる特別イベントではなく、日常の支援を支える“もう一つの学びの場”として、こどもたちの可能性を広げる大切な時間だと、今回のキャンプを通して強く感じました。次回は年明けにも、再び自然体験キャンプを予定しています。こどもたち一人ひとりが、自分らしく挑戦し、「ここにいていい」と感じられる時間を、これからも丁寧につくり続けていきたいと思います。

埼玉県上尾市出身。高校までの9年間野球漬けの毎日。2013年に長野県下伊那郡泰阜村へ移住。村内でも山奥とされる集落で住み始め、結婚。家族7人と動物たち(黒柴・猫・山羊・烏骨鶏たくさん)で田舎暮らし実践中!


