先月、こどもたちと泰阜村の旧道を歩く機会がありました。
3学期になり1年の終わりが近づいているなかで「もっと泰阜を楽しみたい」「自分たちの足で出かけられる場所に行ってみたい」という想いのもと、こどもたちが企画したのが旧道探検です。
登山や森遊びなどといったアクティビティも人気ですが、“歩く”というシンプルかつこどもたちの手の届く範囲で楽しむ遊びにもたくさんの魅力があります。
いざ、旧道探検!
この日は『日孫峠(ひまごとうげ)』と『秋葉街道(あきばかいどう)』という道を歩きました。
まずは『日孫峠』へ。泰阜村の「あいパークやすおか」(平島田地区:だいだらぼっちから車で10分程度)から出発しました。
落ち葉をザクザク踏みながら、ゆるやかな山道を歩いていきます。「木と木の隙間から差し込む日差しがきれいだね」と景色に魅了されるこどもたちです。
途中、急な階段とともに小さな鳥居があるのを発見しました。

鳥居をくぐりぬけ階段を上りったところで、写真を1枚

下りは滑りやすいので慎重に・・・
「昔は村内を行き来するのにも一苦労だったんだね。だから神社を立てて安全を祈ったのかも」と来た道を振り返りながらみんなで手を合わせました。
さらに歩き進めると、日陰にはまだ雪が残っているところもありました。
水路の脇を歩いていたら、氷の塊を発見。「仮面みたい!」と男の子たちが大盛り上がり。
歩いているといろいろな発見や出会いがあります。形のきれいな松ぼっくりを見つけては拾い集めながら歩く子もいました。
そして出発から約45分・・・。森の中を抜け、見慣れた道路に出てきました。
「ここに出るんだ!」「思ったよりもあっという間!」と驚くこどもたち。ショートカットルートを見つけたような特別感とともに、先人たちが山を切り開いて近道を作ったという偉大さに気づかされました。
そして、今度は『秋葉街道』へ。
だいだらぼっちの田んぼがあるところ(左京地区:だいだらぼっちから徒歩25分程度)から再び山道に入っていきました。これまでだいだらぼっちから田んぼへ行き来するときは道路沿いを歩いていましたが、実は田んぼからだいだらぼっちのある田本地区へと通じる道があったのです。かつはだいだらぼっちのこどもたちも、この旧道を通って田んぼに行っていたことがあったと聞きます。
米を育てていた時期(4月~7月頃)は毎週のように歩いて田んぼに通っていたため、「こんな道があったんだ~」「日影が多いからこっち(旧道)の方がいいね!」「足場が悪くて登りがきついよ~。道路の方がいいでしょ。」などと様々な意見がありました。
山道が良いか、補整された道路が良いか、感じ方はそれぞれです。
そして、あっという間に山道を抜けて、無事にだいだらぼっちまで帰ってきました。
歩くことで気づく・出会う
今回の旧道探検を通して、歩くという素朴な楽しみ方が、自分たちの暮らす村の豊かさやおもしろさに気づくきっかけになるということを実感しました。
車移動が基本となる泰阜村の暮らしでは、どうしてもこどもたちの行動範囲(村を歩く機会)も限定的になりがちです。
ひと昔前は学校が遠いうえに通学バスがない時代であり、何時間も山道を歩いて学校に通うという暮らしが当たり前でした。しかし、現在は通学バスが走るようにもなり、村を歩くという機会がぐんと減っているのではないかと思います。
だいだらぼっちのこどもたちも通学が歩きとはいっても、約10分程度といった近さです。
自然いっぱいの環境で暮らしていても、意外にこの村のことを知る機会というは少ないのかもしれません。
そんななかでの今回の旧道探検は、こどもたちにたくさんの発見をもたらしました。「動物の足跡がある!」「このクロモジ、すごくいいにおい」と次々に自分の気づきを口にしながら歩くこどもたちの姿を見て、歩くことは普段は見過ごしてしまうような村の魅力に出会うことだと感じました。
そして、こどもたちが歩くことそのものに楽しさを見出していたことも新たな発見でした。
木が生い茂る森の中から出て、視界が広がり自分たちの住む村が見えたとき、一人の男の子が「だいだらに来て一番気分がいい・・・」としみじみつぶやいていたのが印象的です。その子は「ただ歩くだけだと思っていたけど、歩くことが楽しいということが分かった。歩いてみてすごくすっきりした気持ちになったんだよね。」と語っていました。
身近なところで気軽にできる楽しみ方に出会い、歩くことの価値に気づくことができました。
泰阜村には19の地区があります。まだまだ行ったことのない地区がたくさんあるので、ぜひ歩いてそれぞれの地区の魅力をこどもたちとともに発見していきたいです。

大学卒業後、自分自身の視野や価値観を広げるためにデンマークとネパールに留学。海外で共同生活やホームステイを経験するなかで、”暮らし”から得られる学びや、実際に”体験する”ことの価値に気づく。「暮らしから学ぶねっこ教育」を実践するグリーンウッドの事業と考え方に共感し、参画。