暮らしにも心を寄せて|2022教師・指導者育成プロジェクト~ふーみん9月の研修報告

 夏を経て、気持ち新たに始まった2学期。だいだらぼっちの他にも、グリーンウッドの事業について知りたいという想いから、村のこどもたちが対象の「あんじゃね学校」にボランティアとして参加させていただきました。今まで関心のあった他の事業にも参加する機会を自分でつかめたことは、自分の希望を伝えること、普段関りが少ない村のこどもたちや地域幼児教育チームの相談員とつながることへの挑戦となりました。

 あんじゃね学校では、様々なこどもたちの姿が見られました。小学3年生の弓矢づくりの名人が低学年のこどもたちに手取り足取り作り方を教える姿からは、小さな村ならではのこどもどうしの関係性が感じられました。また、ドラム缶風呂を焚き、近くに生えていたミントを使ってミント風呂をしていたことも印象的でした。飽きずにドラム缶風呂の火の番をしたり、ミント風呂を作り続けたりと、一見地味な遊びにも、面白さを見いだし夢中になってやり続けるこどもたちの姿があり、豊かさを感じました。

 普段私は、だいだらぼっちで暮らす一員としてこどもたちと一緒に夢中になって働き、遊び、ものづくりをしています。そのため、実は、こどもたちの姿や変化をじっくりと見られていなかったのかもしれません。だからこそ、あんじゃね学校で見たこどもたちの遊びへの執着心や無邪気さを、普段より一歩引いたところから、じっくりと客観的に感じられたのだと思います。この経験から、遊びを豊かなものにしていくこどもたちの力を学びました。弓矢づくりやドラム缶風呂は相談員が提案した遊びだけれど、こどもたちは、それぞれの遊びをより面白いものに変化させていました。こどもたちが豊かな遊びをしているのを見ると、私も心を動かされ豊かな気持ちになります。今後も、こどもたちの暮らしや遊びに目を向け夢中になる姿にたくさん出会いたいです。

 一方でだいだらぼっちでは、印象的だった出来事が2つあります。
 1つは、ものづくり教室の先生のギックとこどもたちと一緒に木工の材取りをしたことです。ものづくりをするためには、材料が必要です。何を作るか、使う用途によっても適切な材が変わってきます。だいだらぼっちの敷地内と周辺を散歩してギックと相談しながら、材を探しました。散歩の途中で、駐車場に生えている蔓(つる)や道路の脇に生えているハチクを見つけました。敷地内に生えている蔓を使って蔓細工ができるし、道路の脇に生えているハチクだって、弓矢や槍など色んな遊び道具になることを教わりました。

 「足元に宝物がたくさんあるのだから、もっと外に出て遊んでごらん。」というギックの言葉が心に残っています。私はこの言葉を聞いて、私もこどもたちも「遊び方」をまだまだ学び続ける必要があると感じました。なぜなら、「遊び方」の引き出しを増やすことで、日々の暮らしを面白がり、面白がることから学べるからです。身近にある自然に目を向ければ、遊び道具やものづくりの材、おやつになるものだってたくさんあるはずです。しかし振り返ると、自分たちで創る暮らしや自然豊かな泰阜村を楽しみ、ものを生み出せる環境であるはずなのに、屋内でなんとなく時間が過ぎてしまうような日があります。そんな暮らしはもったいないです。このような課題を感じ、「ものを生み出すこと」に意識を向けてみました。

 9月は、1学期から育てていた藍や、泰阜村の学校で育てていたマリーゴールドをおすそ分けしてもらい染物をしました。染物の行程を学びながら、植物から染液を作ってみると、自然の面白さや不思議さをこどもたちと実感します。このように今後も、身近な自然物をこどもたちと一緒に面白がることに挑戦していきたいです。

 もう1つの出来事は、こどもたちが堆肥場を誤って管理している状況に気づき、相談員のなおみちに堆肥場の管理について詳しく教わったことです。だいだらぼっちでは、暮らしで出た生ごみは堆肥にして畑にまきます。そうすることで、畑の野菜が美味しく育つという暮らしのサイクルがあります。ちなみに、生ごみを捨てた後は草や土をかけて上から踏むことが必要です。また、いっぱいになった堆肥場は、新しい生ごみを入れず3~4カ月置くことで、微生物が有機物を食べ分解し、堆肥化が進みます。つまり、ただ生ごみを捨てるだけでは堆肥はできません。しかし、このような堆肥化の仕組みが正しく理解できていなかったからか、こどもたちは誤った管理をしていました。
 
 理解が足りていなかったのは私も同じで、いくら、生ごみを捨てることがこどもたちの仕事でも、暮らしのサイクルとしての理解が曖昧だったことを恥ずかしく思いました。半年もだいだらぼっちで過ごしたのに、暮らしを創る根本的なところを理解できておらず、こどもたちに伝えることもできずにいました。この出来事から、まずは私自身が「日々の仕事が暮らしのサイクルの一部だ」ということへの意識を持つ、そしてこどもたちにも持ってほしい、と想うようになりました。常に暮らしのサイクルを意識するのは難しくとも、何のための仕事なのか理解をして暮らしを一緒に作り続けたいという気持ちが湧いてきました。

 そこでまずは早速、こどもたちと一緒に堆肥場について学んでみようと思っています。だいだらぼっちにある堆肥場は、どのように手作りされているのかを学ぶことと、今ある堆肥場の枠を外し新しい場所に堆肥場を設置することで、継続して健康な畑作りにつなげることに挑戦してみたいです。

 育プロとして泰阜村にやってきて半年が経ちました。そこで、だいだらぼっちで一緒に暮らす相談員のもーりぃと10月の目標について話しました。話の中で、「もう一歩踏み込んだ関わり」がキーワードとして上がりました。私にとっての「もう一歩」は、よりコミュニケーションをとり、深くかかわることです。こどもたちとの関りについては、今までなんとなく感じていた課題でした。月暦(1カ月のスケジュールをこどもたちと一緒に考えるもの)に入ったやりたいことを共に計画するメンバーと一緒にコミュニケーションを取る機会はあるものの、話し合いの場では発信よりも聞き手に回ります。全体との関わり方も、相手との距離感を考えて一歩引いてしまいます。このような現状に対して、もっとみんなとの距離を縮めたいし、私の想いを発信するべきだと考えています。

 そこで今後挑戦したいことは、より自分の想いを伝えようとすること、伝わるまで粘り強く諦めないこと、伝えるチャンスを逃さないことです。具体的には、風呂焚きをしている時やお風呂に入る時など、落ち着いて話せるタイミングで私から関わりに行くこと。相手が、どんなことを楽しんでいるのか、残り半年のだいだらぼっちをどんな風に過ごしたいのかなど、相手に興味をもって関わることを意識して過ごします。

 また9月の振り返りを経て、私は、身近な自然をこどもたちと一緒に面白がったり、暮らしを根底から理解して共に創ったりすることに力を入れたいということに気づきました。こどもたちにとって「ワクワクすることを一緒に考え、生み出せる存在」「どんなことでも一緒に考えられる存在」になりたいです。ふりかえりを通して改めて気づいた、また新たに生まれた意識を胸に、残り半年を過ごしていきます。

9月担当スタッフ ぱるのコメント

 「他の事業について知る機会を作る」「自分自身がものづくりなど暮らしを楽しむ」を目標に掲げていたふーみん。自身で活動の幅を広げることにチャレンジし学びがあった一方で、実は足元にまだまだ知らないことがあることに気づいたようです。
 暮らしに必要なものを自ら生み出していた時代とは異なり、今は身の回りの多くが既製品で整備されたインフラに頼って生活しているため、その大元や先について知る機会はかなり少ないといえます。しかしだいだらぼっちでは、生み出す、あるもので何とかする暮らしの中で、その成り立ちから最後までを体験し考えることができる場。残り半年もふーみん自身の「なぜ?知りたい!」を大切に、こどもたちと一緒に暮らしの必然から学びつつ、面白がって、豊かさや学びを倍増させていってください!

 

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体験一年。価値一生。ここは机の上では学べない1年間の実践の場。