10,000人の観光客より100人のファンづくり ~全国地域リーダー養成塾で夢を語る~

先日、久しぶりに東京に出た。
なにせ夏は「信州こども山賊キャンプ」を1ヶ月以上開催しているので、簡単には泰阜村の外には出れない。
なので、実に1ヶ月半ぶりの東京だった。
大学の授業で毎週東京に通い続けているので、東京の街には慣れてはいるつもりだった。
でも、信州に一か月ほどいるとやっぱり東京は何もかもが違う。
踏みしめる土もあまりなければ、吸い込む空気も淀んでいる気がする。
そこにいるだけで疲れてしまうというと言い過ぎだろうか。

そんな東京で開催された「全国地域リーダー養成塾」に講師として呼ばれた。

塾の概要は以下の通り。
「全国地域リーダー養成塾は、様々な分野で既存の枠にとらわれない斬新かつ大胆な発想のできる地域のリーダーを養成するため、平成元年に旧自治省、関係各位のご協力のもとに誕生し、以来、すでに1,054名の感性豊かな実行力のある地域リーダーを養成してまいりました。その成果は、各界から高く評価されています」

また、主催団体は一般財団法人地域活性化センターで、総務省関係の団体だ。
詳しくは団体のサイトをご覧いただきたい。

塾には、土や酸素だらけの全国の地域から、驚くべき前向きなひとびとが150人ほど集まっていた。
私は法政大の図司直也先生のコーディネートのもと「自然体験教育が生み出す人材還流-農山村の教育力を考える」という分科会で講師をつとめる。
分科会では、学びを通した地域創生について話をしたが、共感されるひとが多かったことに驚きだ。

私はここ10年くらい、全国の中山間地や離島に講演などに呼ばれ、その地域の現状を見続けてきた。
外部のひとびとや都市部の青少年をどうその地域に呼び寄せるかという仕組みは大成功を収めている地域は多い。
しかしそんな地域が、その地に生まれ育つ地元のこどもへの教育などはとても脆弱なように目に映ったことも事実だ。
その地に生きるこどもたちにこそ、質の高い学びや育ちを促さないと、結局は地域の資源は外部から消費的に使われるだけに終わると強く感じる。
最近では、その意がしっかり伝わる地域が増えてきた。
今回の分科会に集う皆さんにもまた、この意が伝わったように想う。
なかなか成果が見えないものに、投資をするのは勇気がいるものだ。
でも、今それをしないと“その日は永遠に訪れない”とも感じる。

長野県泰阜村もまた、人口1,600人と依然厳しい状況ではある。
しかしむしろその状況を楽しむような豊かさを、住民や行政、そしてNPOが一丸となって培う気概をもって、今後とも地道に丁寧に進んでいきたいと想う。

最後に受講者の皆さんに私は夢を語った。
「1000人の観光客より100人のファン創り。ぜひ、われわれ地域同士で情報交換を進め、ゆくゆくは人材の交換や還流(地域間交換留学)を進めていきませんか。都市部だけではなく、地域同士でファンを創る。それこそが、小さな地域、そして自律的な地域の闘い方ではないでしょうか」
皆さん、こんな私の夢に共感してくれた。
同じようなことを考えているひとが、見知らぬ地にたくさんいるのだなと勇気づけられる。
夢を実現できる仲間が、また全国に増えた。
そう想うと、東京もいいものだ。

▼法政大の図司先生のゼミ生も駆けつけてくれた。彼女は昨年夏、1ヶ月ほど山賊キャンプのボランティアで泰阜村に滞在した。再会がうれしい。

代表 辻だいち