自然が教えてくれるもの ~闘う相手はコロナだけではない~

自然が教えてくれるものはかけがえがない。

厳寒のこの時期、泰阜村では信じがたいほどの星空になる。
まるで宇宙のど真ん中にいるみたいだ。
キーンと冷え切った早朝に、大渓谷を埋め尽くす雲海・川霧。
深呼吸すれば、五臓六腑に清冽な空気がしみわたる。

大河:天竜川にそそぐ支流は、これまたとんでもなく澄んだ水が流れている。
この清水は、そのままわが村の水道水になる。
はっきり言って、店で売っているどんな水よりオイシイと想う。

山菜、野菜、燃料の薪、そして獣肉などなど。
山の恵みがこれでもかというほど、私たちの身体に流れていく。

最近は、猛烈な台風や豪雨も多い。
それでも信州は、アルプスなどが屏風となって立ちはだかり、台風の侵入を防ぐ。
自然の猛威から守ってくれるのもまた“自然”なのだ。
災害の恐怖と隣り合わせの豪雨も、やはり豊かな山の恵みにつながっていく。
自然のチカラが、私たちの営みや歴史を創っていく。

コロナウィルスもまた自然。
この自然の猛威に対峙できるものは、やはり自然のチカラなのではないか。
自然と向き合う暮らしを丁寧に営むことが、コロナに対峙するためには必要なことだとつくづく思う。
それはけっして、田舎暮らしをする、ということだけではなく。

再び緊急事態宣言が出た。
この1年、私たちはいったい何と対峙したのだろう。
コロナウィルスと対峙した。
それは間違いない。
でも、それと同じくらい、周囲の目や、自己中心的な態度や、無責任な政府の言動や、心無い(が、実は自分も抱いてしまいそうな)誹謗中傷などと、常に向き合ってきたのではないか。
それは、身体も心も壊れてしまいそうなほどに。
そして、人間関係や信頼、そして倫理観も壊れてしまいそうなほどに。

敵か味方を峻別し、敵を過剰に攻撃する風潮。
前の首相をはじめ、国会議員にも、そして社会にも蔓延した。
アメリカに目を転じれば、信じがたい言動を繰り返す前大統領。
私と違うこと、あなたと違うことが、こんなにも暮らしにくいと感じる世の中になってしまうとは。

反対意見を聞き入れず、折り合いをつけようとしない風潮。
誤りを認めず、隠す・誤魔化す・ねじまげて、それで何が悪い?と開き直る風潮。
今の首相をはじめ、閣僚にも官僚にも、そして悲しいかな国民にも蔓延しつつある。
丁寧に対話することや正直であり続けることが、こんなにも生きづらいと感じる世の中になってしまうとは。

コロナ禍であらわになったのは「分断」だ。
こんなにも“希望のない世の中”を生きなければならないこどもと若者たち。
いったいどう育ってしまうのだろうか。
闘う相手はコロナだけではない。

信州泰阜村を流れる大河:天竜川

ちょっとみんな、外に出よう。
大空に向かって深呼吸しよう。
夜空を見上げて、思いきり感動しよう。
炎にあたって、暖かさを感じよう。
うまい水を、うまそうに飲もう。
当たり前にそこにある自然に、もう一度丁寧に向き合ってみよう。

私のお気に入りの「泰阜村ビュースポット」

自然のチカラが、自分を覆いつくそうとする闇を追い払ってくれると信じたい。
自然に対する謙虚な態度が、今こそ、求められているのかもしれない。
ハラをくくって、自然と向き合おうではないか。

代表 辻だいち