こどもたちの未来へ投資を ~未来への熱意を集めたい~

9月も半ばを迎えます。
毎年この時期は、小さな泰阜村を隅々までめぐり、夏の信州こども山賊キャンプが無事終了した感謝の意を村民の皆さんに伝えます。
「まあ、おあがりて(家に上がってお茶でも飲んでいきなさい)」と声をかけられ長居することもしばしば。
直接御礼に伺えない全国、世界中の人々には、お礼状や報告書の文章に感謝の想いをしたためる日々です。
キャンプが終わったというのに忙しくて倒れそうな毎日ですが、会う人の笑顔や手紙の向こう側にいる人の笑顔(想像するに)に、身体を突き抜ける充実感を覚える時期でもあります。

それが、今年はありません。

今年はことのほか暑い夏でした。
夏の山賊キャンプを実施していたら、熱中症はどうだったのでしょうか。
昨年度までも現場スタッフたちは徹底的な熱中症対策を実施していました。
何度も何度もインフルエンザやノロウィルスの直撃を受け、そのたびに徹底的な対策をバージョンアップしてきました。
O-157などの食中毒も含めて、子どもたちが集団生活を送る上でのリスクに対し、これでもかというほど対策を練ってきた自負があります。
当然のことながら、安全管理やリスクマネジメント研修、自己研鑽など、死に物狂いで取り組んできました。
これらはすべて、こどもの命を守り、学びを支えるためです。

今年は感染症の前に屈しました。

夏は終わりました。
30数年蓄積してきた安全管理のノウハウを、試すことも実施することもなく。
キャンプ場には草が生い茂り、自然界の音だけがただただ奏でられています。
こどもたちが集わない夏が、こんなにも寂しいとは。
こんなにも身も引きちぎれんばかりになるとは。
30数年、毎年こどもたちとキャンプをし続けてきましたが、全面中止は初めてのことです。
コロナウィルスも自然です。
今こそ自然と人間のつながりや関係、自然を舞台にした学びをこどもたちに提供すべき時期でありながら、それができない状況はまさに断腸の想いです。

そう想っているのは、主催者の私たちだけではありません。
子どもたちが食べる野菜を大量に栽培してくれていた農家のおじいま・おばあま(おじい様・おばあ様の意味の方言)が、毎年のルーティンの農作業を失って寂しそうな顔をしています。
野菜を栽培できないだけではなく、子どもたちのために作る、というやりがいを失った寂しさなのだろうと、その胸中を推し量ります。
「夏の風物詩」と村の古老たちが表現した“3~4日に一度、大型バスが連なって村にやってくる”“毎日毎日こどもたちの歓声が山と谷にこだまする”が、今年は全くありません。
村中の夏の行事が次々と中止になることが輪をかけて、泰阜村という地域もまた活力をを失ったかのようです。
小さな村の人々が、村の外からやってくるこどもたちに、いかに元気づけられているかに改めて気づきます。

今夏の信州こども山賊キャンプ。
全面中止を決定したのは5月初旬です。
理由は主に以下の2つです。
①集団移動・集団生活における感染症のリスクから子どもたちたちの安全を守ることができない
②泰阜村の人口に匹敵する青少年(約1500人)が都市部から集うインパクトに、高齢者を始めとする村民の皆さんのご理解を得られない。

とりわけ②は、地域に根差す団体の宿命でもあります。

そして当然のことながら、法人年間収入の約5割弱を生み出す山賊キャンプを失った今、今年度の法人経営は破壊的な状況となっています。
団体設立以来最大の危機ともいえるこの難局に立ち向かうために、
1.全役職員の人件費大幅削減と交替制の休業措置、
2.雇用調整助成金等の公的支援金の活用、
3.新事業開発と実行(委託・助成含む)、
4.金融機関からの長期借入金
などの緊急対策を策定し、低い水準ながら全スタッフの雇用を維持して低空飛行の経営を続けているところです。

しかしながら、正直なところこれらの対策には限界があります。
というか、全く歯が立たない状況です。
山賊キャプと同様の事業形態(人を集めての教育活動)の見通しが不明な中、今年度の損失を補填して経営を再び軌道に乗せるためには、当然のことながら少なくとも5年の時間を要することが想定されます。
泰阜村に定住した若い職員たちを路頭に迷わせるわけにはいきません。
経営者ならだれもがそう想うことでしょう。
彼らの雇用を守ることはそのまま、この村の持続性を守ることに直結します。
法人経営と地域の持続性は、表裏一体でもあるのです。
これもまた、地域に根差す団体の宿命です。

この状況は、グリーンウッドだけではなく、日本全国の同業形態の仲間たち(いわゆる自然学校)もおしなべて同じです。
仲間も今、存続の危機の窮状に息も絶え絶えです。
そんな自然学校の仲間たち72団体と、私が理事も務める中央団体(公益社団法人日本環境教育フォーラム)がクラウドファンディングを立ち上げ、全国からの寄付を募っています。

もちろん、グリーンウッド単独でも寄付制度を設けています。

この状況を、マスコミに何度か取材をいただきました。
朝日新聞(8/18)と読売新聞(8/27)が、異例の大きさで取り上げ、ご覧になった人も多いのではないでしょうか。
また長野県誌である信濃毎日新聞(9/7)は、なんとオドロキの1面トップ記事です。
コロナや台風、与党総裁選や野党代表選などが目白押しの中で、新聞を手にしたときは目が点になりました。
“こどもに必要とされる学びが失われる危機”を、マスコミの皆さんもまた感じているということなのでしょう。
いずれの紙面でも、全国の数ある自然学校の中からグリーンウッドの状況が扱われています(私のコメントもたくさん掲載されています)。
グリーンウッドが持つこどもやユーザーへの影響力、あるいはNPO経営、地域再生への期待が大きかったことが改めてわかります。
それぞれの紙面のリンクを張り付けておくのでご笑覧ください。

●朝日新聞(8/18)

●読売新聞(8/27)
https://drive.google.com/file/d/1BCAIo6XpBzdScgGtlILLW8kBsun8oh50/view?usp=sharing

●信濃毎日新聞(9/7)
https://drive.google.com/file/d/1ey-B1WXWt-nKtHTKc6OGw1XE4RoZ_uT_/view?usp=sharing

以来、激励のメッセージと想いが届く毎日です。
これまでつながりのある人びと、講演で呼んでくれた地域の人びと、キャンプの参加者や保護者の皆さん、山村留学の卒業生たち、夢を一緒に追おうとしている世界中の友人たち、新聞記事を読んだ見知らぬ人びと、なんと保育園や小学校の同級生まで。
支援のカタチは様々です。
口座への振り込みもあれば、情報のシェア・拡散だったり、食料提供だったりもします。
新聞社の異例の記事扱いは、事実上、得意技での支援のカタチでもあるのでしょう。
講演や原稿執筆、フォーラム講師や事業の委託など、仕事としての支援もあります。
多くの人から“質の高い支え合いの気持ち”をいただいていることを強烈に実感します。

自然を教育財として取り組む私たち自然学校は、コロナ収束後こそ出番でしょう。
自然と人間のつながりや関係、自然を舞台にした学びは、次の時代に必ず必要とされる学びです。
私はそう確信しています。
出番が来た時に、私たちが倒れていては、子どもたちの学びを支えることができません。

自然(ウィルス)の猛威におののく子どもたちに、もう一度、自然の素晴らしさを伝えたい。
分断と差別にさらされた子どもたちに、もう一度、ひとびとを尊重し支え合う素晴らしさを伝えたい。
どんな過酷な状況に陥っても、周囲と協調しつつ責任ある自律的な行動を自らとる子どもを育てたい。

これらを子どもたち伝えるためにも、この逆境を逆手にとって必ずや再起し、山賊キャンプを再開します。
そして、次の時代における質の高い学びの仕組みを構築します。
必ずやこどもに希望と未来を語ります。
そのためにもなんとしてでも生き延びます。

高く翔ばなくてもいい、速く翔ばなくてもいい。
落ちそうで落ちなければそれでいい。
低く遅くても、それでも「前向き」に低空飛行を続けます。
希望を失わず、未来を見続けて飛び続け、必ず再起します。

お願いさせていただいていること、呼びかけさせていただていること。
それは決して【現在の窮状に対するSOS】だけでありません。
【子どもたちの未来への先行投資】です。
どうか皆さん、改めまして、”未来への熱意”と”息の長いご支援”を心からお願い申し上げます。

改めて●グリーンウッドの単独支援口座を記します。
https://www.greenwood.or.jp/kifu.htm

全国の自然学校と協働した●クラウドファンディング口座を記します。
https://a-port.asahi.com/projects/nature-school-aid/

代表 辻だいち