昨年度に引き続き、NPO法人サンカクシャに関わる若者とキャンプを実施しました。
サンカクシャは「親や身近な大人を頼れない15〜25歳くらいまでの若者が孤立せず、自立に向かえるよう、若者の社会サンカクを応援する」団体です。様々な背景を持つ若者たちなので、普段と違う対象ということで私たちにとっても挑戦と学びの事業です。
グリーンウッドが行うキャンプは、参加者が食事作りや薪の風呂焚きなど暮らしに関わることを全て行い、何をして過ごすのかも決めます。1泊2日の短い時間ではありますが、「何もないところから創り出す」「自分たち次第で暮らしが変化する」楽しさを感じてもらいました。
今回は参加者7名とスタッフ4名。(当初はもう少し人数がいたのですが、いろいろあって減ってしまったそうです)
初日は、キャンプ場で川遊び、夕飯づくりと五右衛門風呂焚きです。
出発が2時間遅れ、しかも東京から5時間近くかかるため到着すると疲れ切った顔で車から降りてきました。ちょっと心配しましたが、川に入ったことで心も身体も解放されてスイッチが入ったようでした。
施設に移動し、五右衛門風呂焚きと夕食づくりに分かれて準備です。食事も材料のみ渡してメニューは参加者が考えます。昼ご飯は軽いものだけだったようで大分お腹が空いていた様子。すぐにできる簡単なものを作るかとおもいきや、紆余曲折を経てなんとハンバーグを作ることに!2時間以上かけて15人分を作り切っていました。グリーンウッドスタッフも「さわやか(静岡の有名なハンバーグ屋)に匹敵するうまさだった!」と大絶賛。
一方風呂焚きチームも、マッチを擦ったことがない若者が苦戦しながら火おこしにチャレンジしました。6本目でやっと新聞紙に着火させ、試行錯誤しながらお風呂を焚きました。
夜は蛍を探しに散歩に行ったり、焚火を囲んで雑談してゆったりと過ごします。
翌日の予定は「8:30から活動開始」ということだけ伝えて、朝ご飯の段取りも若者たちが考えてもらいます。逆算すると6時起床が必須。普段は「朝食は食べない」「だいたい昼まで寝ている」といった暮らしをしている若者たちなので、「マジか」と引いている様子です。しかし、しっかり朝も起きて朝ごはんを作りました。
その後は薪割。山村留学のこどもたちが用意した薪でお風呂を焚いているので、薪を割ってお返しをしてもらいます。
当初は斧を振るのもままならない様子でしたが、時間と共に身体が理解しはじめ、少しずつ様になってきます。薪に斧を振り続けてなんとか割ったときの爽快な笑顔と、すぐに次の薪を選んでいる様子はこどもたちと変わりません。
昼食は石窯でピザ。石窯の火入れから生地作りまでももちろんこちらも若者たちが全てやります。
3チームに分かれて生地作りとトッピングをしたので、「どのチームが一番おいしくできるか勝負しよう」と盛り上がっていました。しかし出来上がったピザを前にそんなことは忘れ、お互いにできあがったものを「食べてみて」と言っていたのが印象的でした。おいしいものに勝ち負けはありません。
最後の振り返りでは、
「(都会と違って)情報が少なくて、鳥の声が聞こえたり、時間の余裕ができて自然は自分を回復させてくれる気がした」
「お風呂を焚くのに、試行錯誤しながら失敗したり、うまくいったりという体験が楽しかった。机に向かった勉強ではなくて、こういった学び方がしたかった」
「はじめてのことばかりだったけど、やってみたらできるじゃん。やってみたら楽しいじゃん。そんな体験ができて楽しかった。うまくいかないけどやってみるということを日常でも生かしていきたい」
「正直、人と行動するのが好きじゃなくて、どうなっちゃうかなと緊張していた。けど意外と普通…でもないけどみんなと過ごせた。料理とか好きだけど人に食べさせたことなかった。自分が作ったものを美味しいって言ってもらえてすごくうれしかった」
また昨年度も参加した若者からは
「去年は川遊びも足を少しいれるだけ、薪割も遠巻きに見てるだけだったけど、今年は川に飛び込んで、薪割も迷いながら挑戦できて自分でも成長したなと思った」
「去年の思い出がすごく心に残っていて、囲炉裏囲んで話したなとか川で開放的になったとかそういったことが積み重なって、あれがきっかけで成長したんだなと改めて感じた。」
と語っていました。
たった2日間、特別な体験をしたわけではありません。
それでもマッチを擦って風呂を沸かしたり、自分たちでご飯を作っておいしいと言ってもらえたり、自分の力で薪を割るという経験は、若者たちに「手応えのある実感」を与えました。それは小さな自信となり、次の足掛かりになるのだと思います。
「お金を稼ぎ、使う」が暮らしの全てで、手応えを感じることがあまりにも少ない現代社会において、若者たちが求めているのは実は大げさなものではなく、自分が生きていると感じる実体験なのではないでしょうか。
昨年に引き続き参加した若者たちの1年の変化に私たちも驚かされました。キャンプが若者の変化の理由の全てではありませんが、それでも彼ら自身が自分たちの変化を喜び、チャレンジする楽しさをこのキャンプで得たのであれば、これ以上うれしいことはありません。
社会課題山積の現代社会において「これをすれば社会課題を解決する」という魔法のような取り組みはありません。それでも社会が少しずつ良くなるためには、若者やこどもがたくさんのチャレンジと失敗ができる場があることなのではないかとサンカクシャの若者たちを見ながら感じました。
今回のキャンプはサンカクシャとグリーンウッド、そして日本環境教育フォーラムが加わって三者連携で実施しています。様々な団体が「できる」ことを持ち寄り実現した今回の取り組み。その豊かさと共に、こどもに限らず若者にとっても発見と挑戦ができる場を今後も作り続けて参ります。
本事業は、特定非営利活動法人グリーンウッド自然体験教育センター、特定非営利活動法人サンカクシャ、公益社団法人日本環境教育フォーラムの三者が連携し、協働して実施しております。

グリーンウッドの代表理事。2004年よりグリーンウッドスタッフとなり泰阜村に移住。一男二女の父。2024年より代表理事となる。